デュア・リパはファンサの鬼だった。渋谷タワレコでゲリラ開催された200人限定サイン会をレポ

0

2024年11月18日 19:10  CINRA.NET

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

CINRA.NET

写真
Text by 佐伯享介

デュア・リパのサイン会が11月15日にタワーレコード渋谷店地下1階のCUTUP STUDIOで開催された。その様子をレポートする。

1995年にロンドンでコソボ難民2世として生まれたデュア・リパ。シンガーソングライター、モデルとして世界的な活躍をしているデュア・リパは、2015年にデビューし、これまでに『グラミー賞』『ブリット・アワード』といった権威ある賞をものにしてきた。

ありのままの自分を肯定するポジティブさに貫かれた発言や活動が支持されている彼女はLGBTQのアライ(支持者)としても知られ、「ミレニアル世代を代表するポップアイコン」とも称される。Instagramのフォロワー数は8,000万人を超え、現時点で全世界トップ50位以内に数えられるほどのスーパーインフルエンサーでもある。

今回のサイン会は、ワールドツアー『ラディカル・オプティミズム・ツアー』の一環として11月16日と17日に開催されたさいたまスーパーアリーナ公演(即日完売となったという)の前日に急遽実施されたもの。開催当日の朝に告知されるとタワーレコード渋谷店には整理券を求めるファンたちが殺到し、告知・配布から1時間弱で配布終了となったという。

会場には幸運にも参加権を得た約200人のファンたちが集合。デュアのアーティストグッズを身につけている人も多かった。入場する際には金属探知機での持ち物検査やボディチェックなども実施され、セキュリティは厳重だった。

デュアのMVがモニターで流れ、訪日者と思しきファンや海外スタッフたちが話す外国語も飛び交う会場のなか、皆一様にそわそわした様子でステージ上を見つめていた。しかし開始予定時刻が過ぎてもデュア・リパは現れない。到着が遅れていることを告げるアナウンスもあって、ファンたちは列を乱すことなく待ち続ける。

待つこと約30分。MCに呼び込まれて姿をあらわしたデュア・リパは、イエローのトップスに黒のホットパンツ、そして赤のショルダーバッグという出で立ち。タワーレコードを意識したかのような配色のコーディネートだ。

MVから抜け出てきたかのようなデュア・リパがファンたちの至近距離にいた。会場となったCUTUP STUDIOのキャパシティはスタンディングで約300人。これまでにソロアーティストとして数万人の観客の前に幾度となく立ってきたスターを迎えるには、あまりにも狭すぎる、贅沢な空間だった。

この日のデュア・リパのファッション。タワーレコードのイメージカラーに合わせたもの?

ファンたちは思い思いの表現でデュア・リパを迎えた。「I love you!!」と絶叫する人、口を両手で覆って涙ぐむ人、感極まった面持ちで隣の人に語りかける人……そんなファンたちの熱い視線を一身に浴びながら、デュアは満面の笑みを浮かべていた。

マイクを取って開口一番、「遅れてごめんなさい。金曜夜の交通事情は異常だった……」とデュアが申し訳なさそうに苦笑すると会場のファンたちも「まぁそうだよね」といった雰囲気で笑い、会場内はなごやかなムードに。

続けてデュアは、「ここに来ることができてハッピーだし、こうしてみんなに会えたこともとてもハッピー。私はみんなのためにここにいるし、サインしたくてうずうずしています。私に会いに来てくれて本当にありがとう」と語り、マイクを置いた。大きな拍手と歓声が収まったのち、会場スタッフから注意事項が告げられてサイン会がスタートした。

サイン会はファンが順番に1人ずつ呼び出されてステージに上がり、机の前に座ったデュアに対象商品となったCDもしくはアナログ盤を差し出し、サインを書いてもらう、という流れで実施。ちなみに対象商品は、今回のツアーにあわせてリリースされたデュア・リパ『ラジカル・オプティミズム ジャパン・ツアー・エディション』もしくは『ラジカル・オプティミズム ジャパン・ツアー・エディションO-Card付き輸入盤アナログ』である。

デュア・リパ『ラジカル・オプティミズム ジャパン・ツアー・エディション』ジャケット

事前にファンに伝えられた注意事項として「サインを書いてもらうこと以外を求めるのは禁止」といった項目があったが、デュア自らが率先して1人ひとりを笑顔で――奇抜なファッションのファンに対してはあんぐりと口を開けた驚きのリアクションも交えて――迎え入れ、ファンの目を見て語りかけ、ときには肩を組んでの記念撮影に応じ、別れ際にハグをする場面も何度かあった。ほがらかでオープンマインドな人柄が感じられた。

おそらく数万人のオーディエンスの前でも、200人のファンの前でも彼女は変わらない。そのとき集まった1人ひとりとともに目の前にある空間といまこの瞬間をシェアし、楽しむこと。彼女がアーティスト活動を通じて成そうとしていることはそれなのだ――そんなふうに思わせるような、清々しいたたずまいだった。

後日談になるが、翌11月16日の公演ではMCでサイン会のことについて触れ、あるファンがサイン会でデュアに告げた約束――「サメのコスチュームを着てライブに参加するということ」を説明し、ステージ上から客席のファンを探すという一幕もあった。サイン会の経験はデュアにも強い印象を残したのだろう。

なんと腕にサインしてもらう人も

最近、タワーレコード渋谷店でゲリラ的にサイン会を行なうのが海外大物アーティストのトレンドになりつつある。2024年3月のビヨンセを皮切りに、6月のビリー・アイリッシュ、そして11月のデュア・リパと続いた。

ごくごく限られた人数だけ参加することができるゲリラサイン会。参加者にとっては貴重な体験であることは間違いないし、次はどんなアーティストが実施するのかも気になるところだが、参加できない人が毎回大量に発生することも事実だ。これまでのサイン会後にはフリマサービスなどでサインの転売も見られた(今回のデュア・リパでも、「ご購入いただいた商品及びサイン入りCD/アナログLPジャケットの転売は固く禁じさせていただきます」という禁止事項が設けられている)が、参加したくてもできなかった人の心情を思えば、悲しく、慎むべき行為だといち音楽ファンとして思う。

しかし、欧米では過剰に注目されているため自由に外を歩くことができない海外セレブたちが、日本でのびのびと過ごしている様子がSNSやメディアを通じてときどき発信されているが、大きな騒動にならないほどの治安も保たれている日本であれば、然るべきセキュリティ環境を整えたうえでならファンとの気軽な交流もできるという実例がいままさに積み上げられていることも事実。アーティスト側も可能であればそんなふうにファンとの近い距離でのコミュニケーションを望んでいるのかもしれない。

11月16日と17日に開催され、大盛況のうちに終わったデュア・リパの来日公演。CINRAでは11月17日公演の模様をレポートした記事を後日掲載する予定だ。
    ニュース設定