11月16日、AUTECH(オーテック)およびNISMO(ニスモ)ブランドを展開する日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)が主催するオーナーイベント『AOG湘南里帰りミーティング2024』が神奈川県大磯町の海岸沿いにある大磯ロングビーチで開催された。
ニッサン車のなかでも一際強い存在感を放つオーテック車とニスモ車だが、このオーナーイベントはそんな両車のオーナーを主役としながら、メーカー関係者と間近でコミュニケーションを取ることができる“公式オフ会”として2004年から始まった。参加者数と参加台数は年々増加し、今年は611人、354台のクルマが大磯に集結した。
このイベント開催地に大磯が選ばれているワケは、オーテックの事業所がある茅ヶ崎がすぐ近くにあるから。いわばオーテック車にとってここ湘南はまさに生まれ故郷であり、そこへふたたび日本全国から車両が集結することから、イベント名に“里帰り”と名付けられている。
ちなみに、今回参加した車両のなかには、北は北海道室蘭市から、西からは佐賀県武雄市からはるばるやってきた猛者の姿も。その移動距離、実に1000kmオーバー! いちばん遠くから来た参加者は『遠来賞』としてイベント主催者から表彰されたが、地名が発表されたとき、取材に行った編集部員も一般参加者とともに「凄い!」と腰を抜かした。
また、今回の里帰りに合わせて、スーパーGT GT500クラスで23号車MOTUL AUTECH Zのステアリングを握る千代勝正とロニー・クインタレッリのふたりがゲストとして登場。一般参加者の愛車を見て回りながら、記念撮影やファンサービスにも気さくに応じていた。面白かったのが、私たちのようなメディア関係者にも気を配ってくれたのか、プレスルームで昼食を摂っていたら突然クインタレッリが卵焼きのパックを持ってきて「食べていいよ」とメディアの人間に渡すという場面も。クインタレッリの卵焼き、食べたかったなぁ……。羨ましい。
そんなふたりは午後のトークショーの時間になると、スタンドに上がるや軽妙なトークで会場にいる全員の笑顔を誘いながら、2024年シーズンを振り返った。
まず千代は「(23号車への移籍など環境が大きく変わったことについて)なにより、23号車MOTULに乗ることができることと、ロニーさんと2011年に会ってから、お互いに仕事を見ていたのと、4〜5年前からカートトレーニングも一緒にやらせてもらっていたので、一緒に組んだら絶対にうまくいく! と思っていましたので、コンビを組めて嬉しかったです。ニスモチームの皆さんは本当に一流なので、支えてもらいながら、毎戦自分の走りに集中させてもらっています」と語る。
一方のクインタレッリは「千代選手はニスモメンテナンスの3号車(Niterra MOTUL Z)に乗ってから速さが注目されていて、僕は23号車のドライバーとして少しライバル視していたところはあったのですが、今年は一緒に乗ることができてすごく嬉しかったです」と述べた。
今季のスーパーGTは台風の影響で延期され、実質シーズン最終戦となった第5戦鈴鹿を12月7〜8日に控えている。鈴鹿戦の目標を聞くと「いちばんで終われるようにしたい!」と、有終の美で締めくくりたい決意をファンの前で明らかにした。
「きっと誰も知らない真冬のGT鈴鹿となりますが、僕は凄くワクワクしています。冬場はエンジンが凄く回りますし、ダウンフォースが出るのでタイヤもグリップして、もの凄いタイムが出ます。今年のZはドライコンディションが本当に強いので、今度こそドライの鈴鹿を全開で攻めて、予選と決勝ともにいちばんで終われるようにしたいですね」と千代。
そしてクインタレッリは「鈴鹿での最終戦はひさしぶりだと思うので、ファンの皆さんもなかなか見ることのない機会だと思います。チャンピオンの権利は残念ながら失っていますが、優勝すればランキング2位、3位に入れる可能性があるので、チームのみんなと力を合わせて、千代選手と初優勝したいです」と抱負を語った。
イベントが14時で閉幕されると、最後はメーカー関係者総出で帰路に着く参加者たちを出口までお見送りした。千代とクインタレッリが挑むスーパーGT最終戦は、12月7〜8日に鈴鹿サーキットで開催される。真冬の鈴鹿という、誰しもが知らない環境下で走るため、そこには予想外の波乱とドラマが待っているかもしれない。誰が表彰台の天辺に立つのか? そんな12月のレースへの期待も大きく膨らんだ、ニッサンファン全員の記憶に残る一日だった。