グレッグ・マッフェイが今年末にリバティ・メディアのCEOを退任するという発表は、アメリカ人実業家である彼が同社に20年余り在籍していたことを考えると、ひとつの時代の終わりを告げるものだといえる。リバティ・メディアがF1の商業権を取得して以来、初のトップ交代となり、近々これに伴う変化が現れることが予想される。
リバティ・メディアにはF1以外にも懸念事項が多くあるが、長年にわたり素晴らしい仕事を行い、同社が莫大な利益を上げた後にマッフェイが退任するという決定は、下院司法委員会との関係を円滑にするための手段だという見方がF1界にはある。FIAがアメリカのチームであるアンドレッティ・グローバルのF1参入を承認した後、F1が参入を拒否する決定を下したことは、独占禁止法(反トラスト法)の違反に当たる可能性があるとして、徹底的な調査が開始された。
大統領、上院、下院の3つの選挙で共和党が圧勝し、アンドレッティ家が与党の強力な支持者および寄付者であることから、調査は比較的早く終了する可能性が高く、その結果によってF1が非難を受ける可能性がある。
マッフェイは、数人の関係者が出席した会議で、マイケル・アンドレッティに対する個人的な嫌悪感を認めたとされる。しかし彼が退任することにより、リバティ・メディアは、アンドレッティ・グローバルのF1参戦問題を巡る訴追を取り下げてもらい、新たな契約を結ぶための道を切り開こうとしている可能性がある。
マリオとマイケル・アンドレッティの両名が彼らの名前を冠した会社の一線から退いたにもかかわらず、プロジェクトは今も進行中だ。新しいスタッフが定期的にシルバーストンの施設に着任し、初代F1マシンの設計を進めている。このことから、すでに契約は合意に達しており、アンドレッティ家とグレッグ・マッフェイの退場が両者間の平和的な契約への道を開くために必要なステップだったのだとしても、驚きではない。
マッフェイはまた、ステファノ・ドメニカリを個人的に雇ってF1を運営させた人物でもある。パドックの一部の人々はドメニカリがこれから数カ月後、契約満了の際にF1から去る可能性があると予想している。ドメニカリはアンドレッティ参入への反発を象徴する人物であり、彼らのF1参入の試みに常に声高に反対していた。このため彼は責任を問われる可能性があるが、リバティ・メディアを完全に離れるとは考えられていない。
ドメニカリについては、リバティ・メディアがMotoGPの買収を進めるなか、MotoGPへの移籍がうわさされている。記録的な利益をあげた後、今年末にF1を離れ、リバティ・メディアがグランプリレースで成し遂げた成果をMotoGPで再現しようとする可能性は十分にある。