11月21日〜24日にかけて、愛知・岐阜を舞台に開催されている2024年WRC世界ラリー選手権第13戦『フォーラムエイト・ラリージャパン2024』。今季ラストラリーということで、最高峰クラスのトヨタとヒョンデの選手権争いが繰り広げられる一戦だが、そのサポートシリーズであるWRC2クラスに、ひと際注目を集めている一台がエントリーした。
それは、人気漫画『頭文字D』にて主人公・藤原拓海が乗っているAE86とおなじカラーリングが施されたシトロエンC3ラリー2だ。白と黒のツートーンで彩られた“パンダC3”には、リヤドア付近に『藤原とうふ店』の文字が刻まれている。そのマシンを操るのは、ロシア出身で現在はブルガリア国籍でエントリーしているニコライ・グリアジンだ。
彼は昨年のラリージャパンでも『藤原とうふ店』のステッカーを貼っていたことで注目を集めていたが、今年はさらに愛の籠った仕様に仕上げてきた。
ステッカーだけでは足りずにさらなるバージョンアップに踏み切ったあたり、なみなみならぬ熱い思いを持っている様子だが、まずは『頭文字D』にハマったきっかけについて聞く。
「きっかけは、僕が前に組んでいたコドライバー(ヤロスラフ・フェドロフ)なんだ。2015年ごろに一緒にキャリアを始めたころに、頭文字Dの漫画を僕に教えてくれた」
「そこから興味を持って、まずはシーズン1のアニメを観たんだ。それからは2〜3年かけて他のシーズンもすべて見て、今もたまに妻と一緒に見返したりするくらいにハマったね(笑)」
そこからはラリードライバーの性か、描写されているドライビングスキルについて熱中したのだという。
「僕はアニメを観ながら、技術的なことだけを考えていたよ。作品ではかなり正確に、現実に近い技術的なことが描かれているんだ」
「クルマがどのように動くかを的確に感じることができて、プロフェッショナルな作風が大好きだよ」
そこから、ついに拓海と同じのパンダカラーを導入するまでに至った。他にも語りたいことがある雰囲気で話は弾み、一番好きなキャラクターも明かしてくれた。
「タクミは間違いなく主人公だと思うけれど、ぼくは彼の父親の文太が好きなんだ。彼の乗るインプレッサは、何も起こらないかのような静かさでスムーズに走るけれど、つねに煙を吐くような熱い走りも見せてくれるんだ」
「そこには父親像も表現されていて、彼は感情を表に出さないものの息子を愛している、ということが描かれているように感じて面白いんだ。興味深い人物だよね」
相当ツウな推しポイントを明かしてくれたが、実はヨーロッパの仲間たちにはあまり伝わらなかったのだと寂しそうに教えてくれた。だが、日本に来てからは一気にたくさんのファンから、大歓迎されていると感じることができたようだ。
「今回は、多くのファンの反応を見るのが本当に楽しいよ! みんなが私に手を振ってくれたり、皆さんが撮った写真を見せてくれたりするんだ」
「ここにいるヨーロッパのドライバーたちの多くは、僕がなぜこのクルマで走りたいのかを理解していないだろう。でも、日本の人にとっては特別なもので、僕にとっても特別なんだ」
かなり盛り上がってきたグリアジンへ、ここで好きな日本車についても聞いてみる。
「スカイラインGT-Rだね。R33とR34がとくに好きなんだ。あとは、まだあんまり見たことがないけれど、R32も良さそうだね。ただ、R35はちょっと大きすぎるかな(笑)」
最後には、「いつかしげの(秀一)先生にも会ってみたいんだ。妄想だけど、彼のオフィスを見たり、横に乗せてスペシャルステージを走ったりして見たいなと思っているよ」と語った。
他にも、ここでは紹介しきれないほどに『頭文字D』の魅力を語ってくれたグリアジン。ターマック(舗装路)ラリーのスペシャリストである彼は、ライバルらがグリップのなさを語っていたシェイクダウンについても「良い感じだったよ」と余裕の一言。
いよいよ始まるラリージャパン2024では、海の向こうからやってきたフジワラタクミが、ラリー1勢を打ち負かす漫画のような走りを見せてくれるかもしれない。