【動画】瀧内公美の独特な言語空間をのぞき見! 映画『奇麗な、悪』本予告
本作は、芥川賞作家・中村文則の小説「火」を奥山和由監督のメガホンで映画化。『RAMPO』以来約30年ぶりに監督を務めた奥山のもとに、『鎌倉殿の13人』などの撮影監督・戸田義久、美術の名匠・部谷京子、『ミッドナイトスワン』などの録音・伊藤裕規、『PERFECT DAYS』などの音響効果・大塚智子ら、日本映画を代表するスタッフが集結した。それに加え、衣装のミハイル ギニス アオヤマ(ギリシャ)をはじめ、編集・陳詩テイ(台湾)、ヘアメーク・董氷(中国)と国際色豊かなチームとなっている。
この映画には、精神科医と主人公の関係の象徴のごとき大きな絵画が冒頭から最後まで印象的に映り込んでいる。描く画家が絵に収まってしまい、それを逆に見つめる裸婦という逆転の構図。これは「真実」という標題の後藤又兵衛の原画である。後藤は日本では不遇の画家だったが、それに比して海外では圧倒的に高い評価を得ており、彼の絵の熱心なコレクターとしてハリー・ベラフォンテ、エルヴィス・プレスリー、フランク・シナトラなど歴史に名を残すそうそうたるアーティストたちが名を連ねている。
全編を彩るピエロの口笛のメロディーは、芸術文化功労賞受賞者であり国際口笛大会(IWC)での優勝歴を持つ加藤万里奈が担当した。
予告編には、古い洋館に入っていくひとりの女性(瀧内)。彼女は精神科の医者らしき人物に話し始める。「トラウマって何ですか、人はそんなに簡単に出来ているのでしょうか?」。そこから、一気に悲惨な人生を語りだす圧巻のひとり芝居が展開する―。
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原作者の中村文則は「映画は、小説よりもどこか『前』を向いている印象がある。瀧内さんによる、奥に芯の見える主人公像もそうだった。この映画はこのように完成したことで、『火』の主人公を救ったのかもしれない。 あらゆる文化が平均化していく中で、このような作品が日本映画にあることが、嬉しい」とのコメントを寄せた。
映画『奇麗な、悪』は、2025年2月21日より全国順次公開。
原作・中村文則、口笛奏者・加藤万里奈のコメント全文は以下の通り。
<コメント全文>
■原作・中村文則
「前」を向く
この『奇麗な、悪』の原作の「火」は、様々な人から、演じてみたい、という声を聞いていた。
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出来上がったものを観て、さらに驚くことになる。原作の通りではあるけど、これは一人の女性が、話しているだけの映画。なのに、これほどまでに、引き込まれる。
主演の、というか、お一人しか出演していないのだが、瀧内さんは実に見事だった。多方面から大きな注目を浴びている俳優とは知っていたが、従来の映画には見られない、ここでしか味わえない独特の言語空間をつくり出していた。一人の女性が、自分の内面の奥の奥を、誰もいない場所で、独白する。通常の言葉だけが、連なるはずがない。他者に言う自然な言葉もあれば、反対に内面の奥を探るような、社会化されていない観念的な言葉もある。そして構える言葉、吐き出す言葉、攻撃、防御、揺れ――、あらゆる種類の言葉が解き放たれ、映画空間に言葉の「場」がつくり出されていた。その演技力、存在感。すさまじかった。
映画は、小説よりもどこか「前」を向いている印象がある。瀧内さんによる、奥に芯の見える主人公像もそうだった。この映画はこのように完成したことで、「火」の主人公を救ったのかもしれない。
あらゆる文化が平均化していく中で、このような作品が日本映画にあることが、嬉しい。
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混沌と平穏、暴力と愛情、そして嘘と本当。
世界は曖昧なことが多い。
おぼろげな旋律に、口笛でぴゅ〜っと。