【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。
今回ピックアップするのは『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督の最新作『アングリースクワッド 公務員と七人の詐欺師』(2024年11月22日公開)です。試写で鑑賞しましたが、めちゃくちゃ楽しかった〜!
生真面目な公務員とやり手の詐欺師が手を組むというアイデアが最高に決まっていました。というわけで物語からいってみましょう。
【物語】
真面目な税務署員の熊沢二郎(内野聖陽さん)は、大企業の社長・橘(小澤征悦さん)の脱税疑惑を調査しようとしたけれど、橘の嫌がらせに屈してしまいます。
おまけに、天才詐欺師の氷室マコト(岡田将生さん)が仕掛けた中古車販売詐欺に引っかかり80万円奪われてしまう。しかし、熊沢は親友の刑事に協力してもらい、氷室を突き止めることに成功!
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窮地の氷室は熊沢に80万円を返し「被害届を取り下げることを条件に、橘が脱税した税金を取り戻しましょう」と提案。公務員と詐欺師がタッグを組むことになるのです。
【できるイケメン詐欺師と気弱な税務署員】
天才詐欺師の氷室マコトが出所してくるところから始まる本作。彼の出所を待ち伏せしている怪しいグループをサクッと巻いて逃げてしまう氷室。彼がいかにスマートな男であるのかを冒頭から見せていきます。
いっぽう、熊沢は真面目な税務署員。しかし、部下の望月(川栄李奈さん)から「橘の脱税をこのままにしておいていいんですかっ!」と突っ込まれてもオドオドしっぱなしなんです。
そして、家に帰れば妻の尻にひかれ、「車の調子が悪いから」と中古車購入をいつの間にか決められてしまう……。
つまり熊沢は、強く出てくる相手に逆らえない気弱な男なんです。
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【出会いから詐欺を企むまでの演出にうなる!】
そんなふたりが出会い、タッグを組むわけですが、そこに至るまでの流れがスムーズ、かつ、物語がわかりやすいので、いつの間にか『アングリースクワッド』の世界にスーッと入っていけるのです。詐欺師と税務署員が手を組むという設定も抜群におもしろいですしね。
詐欺のターゲットは橘。彼が脱税した巨額の税金を取り戻すことが目標!とはっきりしたところで、ここから7人の詐欺師チームが動き出すわけです。
【キャラが濃い詐欺師チームが最高】
では詐欺師チームをサクッとご紹介しましょう。
どんな役にも変装してなりきる白石(森川葵さん)、偽造のプロフェッショナル丸(上川周作さん)、当たり屋の村井(後藤剛範さん)、闇金業者のルリ子(真矢ミキさん)、ルリ子のクレイジーな娘・薫(鈴木聖奈さん)というメンバーと氷室、熊沢が詐欺師チーム。
作戦会議の結果、橘が不動産業も行うことから「地面師詐欺」として橘を騙すことになるのです。
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そして彼の信用を得て、土地取引へと持っていくという重要な役を熊沢がやることになるんですよ〜。気弱でオドオドしている熊沢が、橘を罠にハメることはできるのか? 思いがけない状況にアワアワしている熊沢と一緒にこっちもドキドキですよ。
【真面目で情の熱い性格が詐欺師として輝く】
実は熊沢、個人的に橘に恨みを抱いていました。橘の卑怯な行いのせいで親友を失っているのです。この詐欺作戦は親友の仇を討つ意味もあったわけです。
その後展開される詐欺師チームの「地面師大作戦」はぜひ映画を見ていただきたい! 途中、熊沢の家族に作戦がバレそうになるなど、ハラハラの連続!
とはいえ、熊沢の真面目で一生懸命で情に厚い性格が、詐欺師としても発揮されているところがよかったです。詐欺師の片棒を担いだとはいえ、親友の仇を討ち、税金を取り戻すのが目的ですから、熊沢は自分の正義を貫こうとしているんです。
これまで上田監督は、実力はあるけどメジャーな俳優は起用してこなかったと思うのですが、本作はオールスターキャストによる作品。熊沢を演じた内野聖陽さんが脚本作りの段階から参加したり、撮影では他の俳優たちもアイデアを提供していたそうです。
詐欺師チームの作戦会議さながらの光景が撮影現場でも繰り広げられていたのかも。 そう考えると映画から溢れるワンチーム感も納得!
最後の最後まで「え〜!」と思わず声が出てしまうようなことが起こる『アングリースクワッド 公務員と七人の詐欺師』。やっぱりコンフィデンスゲーム映画は楽しい。ぜひ皆さんも映画館で、気持ちよく騙されてください!
執筆:斎藤 香(c)Pouch
『アングリースクワッド 公務員と七人の詐欺師』
2024年11月22日(金)より、全国ロードショー
内野聖陽
岡田将生
川栄李奈 森川葵 後藤剛範 上川周作 鈴木聖奈 / 真矢ミキ
皆川猿時 神野三鈴 吹越満 / 小澤征悦
監督:上田慎一郎 脚本:上田慎一郎 岩下悠子
原作:「Squad38 (38사기동대)」邦題「元カレは天才詐欺師 〜38師機動隊〜」
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監督:上田慎一郎 脚本:上田慎一郎 岩下悠子
原作:「Squad38 (38사기동대)」邦題「元カレは天才詐欺師 〜38師機動隊〜
(c)2024アングリースクワッド製作委員会