現在公開中の池松壮亮主演映画『本心』に出演する水上恒司、仲野太賀、妻夫木聡が、監督・石井裕也への信頼を告白。キャストの魅力を最大限引き出す、石井流演技指導の秘密が明らかになった。
本作は、『ある男』で知られる平野啓一郎による同名長編小説が原作。さらにデジタル化が進み、リアルとリアルではないものの境界が曖昧になった世界を舞台に、亡き母の“本心”を知るため、AIで彼女を蘇らせることを選択する青年・石川朔也と、彼を取り巻く人間の心と本質に迫るヒューマンミステリー。
今回石井組に初参加となった、朔也(池松)の幼なじみ・岸谷役の水上は「最初に脚本を読んだ時はどうやって演じようかというアイディアがなかなか持てなかったのですが、石井さんが僕に寄せて僕バージョンの岸谷を作ってくださったんです。そのお陰で“人間臭くて欠点だらけ、でも必死に生きている青年”という目指すべき演技の方向性を定めることができました」とコメント。脚本に俳優の演技を寄せるのではなく、俳優の魅力を最大限引き出す形に役を仕上げていくのが石井流。
また、事故で昏睡状態になったことで、時代の進歩に置いてかれ、彷徨う朔也、息子には言っていない重大な秘密を抱えたまま、自由死を選んでいた母・秋子(田中裕子)、過去のトラウマから他人に触れることができない三好(三吉彩花)ら、全ての人物にしっかりと背景があることを想像させる描写が散りばめられており、俳優陣の繊細な表現の中で見え隠れする各キャラクターの本心が、物語のカギを握る作りとなっている本作。
映像化にあたり監督は、キャラクターの魅力をより伝えられるよう、キャストに合わせて脚本をアップデートしたり、時には原作者とも相談の上で設定を原作から改変したりということもあったという。
ある出来事を機に朔也に目をかけるアバターデザイナーのイフィーは、原作では10代の天才少年という設定だったが、映画では仲野が好演。少年らしさに加え、“成功者”“あちら側の人間”でありながらも孤独を感じる姿、朔也へ抱くジェラシーのような人間臭い感情を丁寧に演じている。
仲野は「脚本に書かれていること以上に自由度が高い、どんな風に演じてもイフィーが成立するような選択肢の多い役にしていただいたので、僕がどう演じるべきかということにすごく悩みました。でも石井監督の演出を信じて導かれるように演じることができました」と明かす。
これまでも石井監督とタッグを組んできた妻夫木は、「一人一人の思いが監督によって統率されている現場で、役者が役者ごとに分かれていない、ひとつの俳優部として存在している感じがして一体感を感じました」とふり返っており、個人へのアプローチはもちろん、作品全体を通して各キャラクターのバランスをとるように監督が配慮している。
『本心』は公開中。
(シネマカフェ編集部)