『絶対完走』の重圧に耐えた勝田。来季シートがかかっていたことを示唆【ラリージャパン後コメント】

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2024年11月24日 18:30  AUTOSPORT web

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パワーステージ後に取材に答えた勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2024年WRC第13戦ラリージャパン
 11月24日、日本の愛知・岐阜県を舞台に開催された2024年WRC世界ラリー選手権の第13戦『フォーラムエイト・ラリージャパン2024』にて、TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチームがマニュファクチャラーズ選手権で逆転し、4連覇を飾った。

 チームのマニュファクチャラー登録ドライバーとして出走し、チームのサポートに徹する走りでマニュファクチャラータイトル獲得を支えた勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)は、パワーステージ終了後に今回のラリージャパンを振り返りつつ、チームから言い渡されていた『絶対完走』の指令についてや、そのうらには来季シートがかかっていたことを言葉にした。

■唯一攻めたパワーステージは不完全燃焼

 パワーステージ前のメディアゾーンでは、自身のアタックしたい気持ちよりも、チームタイトルのための走りに徹すると言葉にしていた勝田。その後のチーム会議でプッシュできるかどうかが決まると話していたが、その指令はしっかりと勝田に言い渡されていた。

「パワーステージはプッシュできる状況になったので、すごく嬉しかったです。できる限りのことをしようと思い、セッティングもかなり攻めていろいろやったのですが、ちょっと外してしまいました」

「なので、序盤の前半7キロぐらいまでは思うように走れず、ちょっとやばいなと思ったのですが、後半はタイヤが温まってきてからだいぶマシになってきました」

「今回は何とかチームタイトルを獲得できたのでよかったですが、ちょっとだけ不完全燃焼ですね。もっといいプッシュができたらなぁとは思いました」

「ですが、今回は本当に『絶対完走』だったので、そういった意味ではここに戻ってこれて良かったと思います」

 この『絶対完走』の指令は、第12戦セントラル・ヨーロピアン・ラリーの後にチームから言い渡されたという。母国戦で、安全な走行に終始しなければならないという状況を、勝田はどう飲み込んだのか。

「僕もドライバーなので、ラリージャパンは一番結果出したいラリーでしたし、複雑な思いはもちろんありました」

「ですが、チームはちゃんとラリーの内容を見てくれていたというか、チームからいろいろ聞いていくと、やっぱり自分のことを思ってくれていて、必要だと感じてくれている部分を理解しました」

「ただ、このラリージャパンはいつも以上に多くの人が見てくれてて、表彰台や良い結果を期待してくれる人も多かったので、そこでやっぱり葛藤に繋がってしまいましたね」

■ファンの声援が支えに「今回のこの完走のおかげで来年がある」

 観に来てくれたたくさんのファンの前で、攻めることが許されないという難しい心境のなかでラリージャパンを完走した勝田は、来年こそは表彰台の頂上を狙いたい気持ちを言葉にする。そして、そのなかで来季のかかった一戦であったことを示唆した。

「今回は、本当に精神的にきつかったので、なかなか笑顔もなくてファンの皆さんには申し訳なかったです。そんなときでも、沿道で本当にすごい数の人が応援してくれて。彼らは自分がどういった状況なのかは関係なく、手や旗を振って応援してくれて、子供たちも笑顔で迎えてくれていました」

「それがすごい励みになり、僕自身も笑顔にもなれたので、本当に感謝したいです」

「今年は表彰台に乗っている姿を見せられなくてすごく悔しいですけど、今回のこの完走のおかげで来年があるので、またラリージャパンに戻ってきたときに、間違いなくポディウムの一番上を争える状態で帰ってきて、その姿を見せれるように頑張ります」

 最後には、「個人的な想いは捨ててきた」と言葉にしていた勝田は、将来に影響するような状況でラリーを戦うということの心労を言葉にする。

「本当に、『何かあったら』というような状況下でした。自分もこんな経験はなかったですし、こんな精神状況で走ったこともなかったので結構タフでした」

「ですが、また来年もこの姿を見せるためにも、今の状況を理解したうえで持ちこたえないといけませんでした」

「今回は本当は、ビリをゆっくり走っていても良かったのですが、やっぱりそういうわけにもいかないですよ」

「自分のなかで『やっぱりそれはできないよな』っていうふうに思ったので、そのなかでこうやって今、総合4番手で帰ってこれて、本当によかったなと思います」

 今回の『絶対完走』の指令は、チームオーナーの豊田章男会長からも「スピードよりも『絶対完走』を意識してね」と念押しされていたという。これまでにない重圧を乗り越え、またひとつ次のステージへと上がった勝田が、一年後のラリージャパンで表彰台の頂点を競う姿が待たれるばかりだ。

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