2024年F1第22戦ラスベガスGPは、ジョージ・ラッセル(メルセデス)がポール・トゥ・ウィンを飾り、チームメイトのルイス・ハミルトンも10番グリッドから2位まで追い上げ、メルセデスがワン・ツー・フィニッシュを果たした。
昨日の『予選の要点』でも述べたように、初日フリー走行から予選Q1〜3の全セッションで、常にメルセデス勢のどちらかが最速ドライバーだった。予選Q3で失敗したハミルトンも、「2回続けて、ミスをしてしまった。あれがなければ、僕がポールを獲っていてもおかしくなかった」と悔しがる速さを見せた。
一方で事前の予想では、路面温度が10度少々という低温コンディションでは、タイヤの温めに苦労してきたメルセデスは苦戦するはずだった。それがなぜ予選一発でも、レースのロングランでも速かったのか。ラッセルもハミルトンも口を揃えて、「意外だった」、「どうしてかわからない」と言っていた。
それについては、第4戦日本GPのFP1にRBから出走したほか、レッドブルのシミュレーターサポートを担当する岩佐歩夢がかなり詳細な説明をしてくれた。岩佐は今回のラスベガスGP決勝の際、ホンダウエルカムプラザ青山にて開催されたホンダ主催のパブリックビューイングイベントにゲストとして登壇。そこで司会役を務めた僕は、間近で彼の解説を存分に聴かせてもらったのだ。
「ストップ&ゴー、そして路面のグリップの低いサーキットに、メルセデスW15は相性が良くないのではないかと、僕も事前にはそう思ってました。ところがふたりのドライバーは、特にラッセル選手がそうでしたけど、タイヤへの熱の入れ方が非常にうまく行っていた印象です。予選でアウトラップからいきなりアタックに入ったドライバーは、上位勢では確かこのふたりだけだったかと思います」と、岩佐。
つまり、現場でのセッティング作業で、マシンの欠点をかなりの程度克服できたということだろうか。
「可能性はありますね。いずれにしてもタイヤがうまく温まれば、すぐにグリップが上がる。グリップすればタイヤの持ちも良くなって、ロングランも安定したペースで周回を重ねられる。その好循環だったんでしょう」と、岩佐は分析する。
「もちろんライバルチームも低温コンディションは十分わかっていて、対策はしてきたはず。でも相対的に、メルセデスに及ばなかったんでしょう。もちろんマシン特性によって違いも出てくるわけで、たとえばフェラーリは基本的に熱入れがしやすいはずです」
「実際、ハードタイヤに替えてからのペースは悪くなくて、カルロス・サインツ選手(フェラーリ)はマックス(フェルスタッペン/レッドブル)を抜いて表彰台に上がった。でもスタート時のミディアムでは最初からプッシュしすぎて、2台ともすぐにペースが伸び悩んだ。一方のメルセデスは、マシン特性の不利を覆すほどのいい仕事を、ドライバーもスタッフもやってのけた。チームの総合力の勝利だったということです」