「今年のレースは、昨年よりも寒いので、レースではタイヤの使い方がポイントになると思います」
F1第22戦ラスベガスGPの予選で7番手に入った角田裕毅(RB)は、土曜日のレースの展望をそう語った。
今年のラスベガスGPは昨年よりも気温が低く、タイヤのウォームアップに苦しむドライバーが少なくなかった。角田もそのひとりで、初日のフリー走行1回目では19番手に沈んだ。
そこで角田とチームは元々予定していたもうひとつのセットアップに変更して、フリー走行2回目は10番手まで挽回することに成功した。ここで角田は2日目以降に向けたセットアップの方向性についてエンジニアと話し合った。ひとつ目の方向性はよりタイヤに熱が入りやすいセットアップにすることだ。熱が入りやすければ、予選でタイムを出しやすくなるからだ。
だが、ウォームアップしやすい方向性へセットアップを変更すると、ロングランとなるレースではタイヤに厳しくなることが予想される。そのため、角田はもうひとつの方向性のセットアップを施すことを決断する。
ただし、そのセットアップで通常通りのアタックを行うと、タイヤが十分温まらないままアタックに入ることになる。そのため、角田とチームはアウトラップを行った後、すぐにアタックラップに入らず、もう1周タイヤを温めるためのウォームアップラップを入れることにした。これで角田はロングランに強いレース用のセットアップを維持しつつ、予選でも戦えるマシンに仕上げて、予選7番手を獲得した。
レースではスタート直後の激しいポジション争いを制して、7番手をキープ。その後、1回目のピットストップで4番手のピエール・ガスリー(アルピーヌ)を逆転した。
ところが、9番手からスタートしていたニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)に2回目のピットストップ後に猛追され、44周目にオーバーテイクを許してしまう。
その後、角田はセルジオ・ペレス(レッドブル)ともテール・トゥ・ノーズの戦いを演じるが、粘り強い走りでペレスの猛攻をしのいで9位でフィニッシュした。
しかし、7番手からスタートして9位に終わった角田に笑顔はなかった。
「やれることはすべてやって、ニコ(・ヒュルケンベルグ)を押さえていたんですけど、ペースが違いすぎました。レースではハースはかなり速かった。悔しいです」
しかし、全力を出したレースに後悔はなかった。
「セットアップ変更で全体的にペースが上げられたことはよかった。もし、フリー走行1回目のままだったら、このようなレースはできなかったと思います。レース後、タイヤを見たら、ギリギリの状態だったので、9位が精一杯。持っている力は出し切れたと思います」
ハースとの差は2点広がったが、アルピーヌとの差を2点縮めて3点差とした角田。コンストラクターズ選手権6位の座を賭けた戦いは、残り2戦となった。