ファンのみなさまはすでにご存知の方も多いかと思うが、公開後約1週間で15万回再生を超えた前代未聞の動画企画が話題となっている。台風の影響で延期になっていた今季のスーパーGT最終戦、第5戦鈴鹿サーキットのプロモーションとして公開された、ホンダのエースドライバー山本尚貴とスバルのエースドライバーの山内英輝が登場しているこちらの動画。何が前代未聞かというと、これまで御法度とされたメーカー間のクルマ試乗を、スーパーGTの開催現場で敢行しているのだ。ホンダのGT500マシン、シビック・タイプR-GTのシートに座る山内英輝、そしてSUBARU BRZのシートに収まる山本尚貴。同級生ドライバーとして仲の良いふたりが息の合ったトークで紹介するGT500とGT300のコクピット企画『SUPER GTマシン乗り換えインプレ』。この企画のちょっとした撮影“裏話”を含めて、この動画を紹介しよう。
◾️全編、実はほぼふたりのアドリブのみでお送りしております 実際の掛け合いはぜひ動画を全編見てもらうとして、ここではちょっとだけ現場での裏話をご紹介。今回の撮影はスーパーGTもてぎ第8戦の搬入日に行われたが、山本と山内の仲のよさが改めてわかるトピックとして、実はふたりには事前に企画の概要をざっくりとお伝えしたのみで、あとはおふたりに任せてカメラを回している。
そんなアドリブで繰り広げられたトークゆえ、どんなツッコミやボケが入るかは全くの予想不可能。なので、山内の予想外なボケには山本もタジタジな様子だった。例えば、山内がホンダ・シビック・タイプR-GTに装備されるウインカーを説明する場面がまさにそう。
山本「(シビック・タイプR-GTのウィンカー説明中に)バイクみたいに(レバーを)倒した方向に3回点滅する感じかな」
山内「”上”にはないんだよね? ”上”と”下”は……」
山本「(一瞬硬直)……それ、どこまで本気(笑)」
山内「(爆笑)」
と、いうふうなトークを30分たっぷりと楽しめるのだ。両名を応援しているファンだけでなく、見る者全員の笑いを誘ってくるのだ。
話を試乗に戻すと、GT500のシビック・タイプR-GTは、視認性を高めるためにステアリングのスイッチはすべてLED仕様となっている。そのほか、エンジンマッピングの変更スイッチなど、BRZにはない機構やレイアウトに山内は興味津々の様子。
山内「(Radio/無線ボタン以外で山本が)よく使うボタンって、やっぱりエンジンマップ?」
山本「そうだね。エンジンマップや、あとスロットルのレスポンスを変えたりとか」
山内「レスポンスっていうのは、アンチラグとかそういうとこ?」
山本「まあそうだけど。企業秘密の部分もあるから、昨日今日でレース始めた人じゃないんだし、そのへん空気読んでもらえると(真顔)」
山内「(爆笑)」
このように、山内の興味にも丁寧に応じていた山本だが、同時にHRC/ホンダのエンジニアさんが触れて欲しくない秘密の部分も熟知していて、”機密”とされる部分は避けながら上手に説明しているのは、ホンダのエースにしてこのシビック・タイプR-GTの開発ドライバーを務めていただけに、『さすが』のひと言に尽きる。
だが、シビック・タイプR-GTを降りても、山内の好奇心はノンストップ。フロントセクションを見てエアインレットの用途を尋ねたりするなど、少しでも相手のクルマを知り、知識を吸収しようとする山内の姿勢と目線もまた、まさにプロドライバーらしい姿だった。
◾️山本、初GT300マシン搭乗に目がキラキラ!
今後は逆に、山本がスバルBRZ GT300に試乗するターンが巡ってきたが、BRZのもとに行くと、山内は山本に対し、右ハンドル車なのに「こっち(左側助手席)」を指差し、わざと左ハンドル車だと誤解させようと誘引。その一瞬、山本は本気でそう思ったようで硬直するも、すぐに嘘だと気がついて「違うよ! 一瞬本当かと思って焦った(苦笑)」と、やはり乗る前からボケとツッコミの応戦が続く。
山本は相手チームのもとに行っても「お邪魔します〜」と、チームだけでなく画面の向こうのスバルファンに向けても礼儀正しい。BRZに乗り込む前も、周りにチーム関係者が誰ひとりいなくても「お邪魔します」と忘れずに言うなど、やはり真面目で礼儀正しい“サムライ”のようなドライバーだとわかるシーンだ。
そんな山本だが、GT300のマシンをこうしてまじまじと見るのはこれが初めてだという。自身のレースキャリアとして、スーパーGTはTEAM KUNIMITSUのホンダHSV-010 GTからデビューしているため、GT3のマシンは経験があるものの、GT300マシンを乗ったことがないのだ。そして右ハンドルのレーシングカーに座ったのも実に10年ぶりだとか。
山本がBRZのドアを開けると、シビックのドアより重たい点が気になったようが、ドアの素材はカーボンだとふたりで実際に叩いて確かめ合う。しかし、一番乗っているはずの山内が突然不安になったらしく……。
山内「(チーム関係者の)井上さん、これ(ドア)ってカーボンだよね?」
井上「カーボンです」
山内「よかった、カーボンだ」
山本「ちょっと待て。自分で使っているクルマが何でできているか知らないの? ドアの内張カーボンじゃねえかよ(笑)」
山内「わからんやん。内側だけ(カーボンを)貼ってあるだけかも」
山本「なんでやねん(笑)」
流石にこのやり取りは筆者も爆笑した。「なんでやねん!」と私も画面に向かってツッコンでいた。
山本がコックピットに座ると、思った以上にステアリングの位置含めて全体的にタイトな作りになっていることや、ペダル周りを踏みながら確かめていくと、ストロークの長さなど好みが両者で違うことがよくわかった。
山本「(アクセルペダルを踏みながら)スロットル、硬くない?」
山内「本当?」
山本「俺、硬いの苦手だからペコペコなの」
山内「気にしたことがないー。細かいんだね」
同級生コンビといえど、走りやクルマの好みは人それぞれ。実際に座ってみるとマシンの作りの違いや発見があり、楽しんでいるようだった。
◾️再生回数次第では、第3弾が実現する……かも
試乗を終えてから、山本は「メーカーが絡むから難しいけど、全レース終了後にオールスター試乗会とかあったら面白そうだね」と話した。2台でこれだけ多くの発見があったのなら、他のマシンに多くのドライバーが触れたらまた違う発見があるかもしれないし、それによってファンへの視点も増えて、もっとスーパーGTに興味を持ってくれるファンが増えるかも、と思えば、非常に魅力的な提案である。
ちなみに、今回の第2弾の再生回数次第では、この山本×山内コンビによる動画企画第3弾が実現する……かもしれないが、今後の進展についてはぜひとも今後のお楽しみとしてとっておきたい。
そして、もしもこの記事を読んで動画のことを知ったよという読者はぜひ、記事の下に第一弾の動画とあわせてリンクを貼ったので見てほしい。2本とも視聴すると尺が約1時間になるが、その1時間が短いと感じること請け合いの内容だ。