2024年F1第22戦サンパウロGP。ドライバーズ選手権の4連覇に王手をかけたマックス・フェルスタッペンは5番手からスタート、ランド・ノリスは6番手からフェルスタッペンを追うことになった。ラスベガスGP前半を無線とともに振り返る。
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ラスベガス・ストリップ・サーキットでの2回目の開催となった今年のラスベガスGPは、セーフティカーも赤旗中断もない、一見平穏な展開だった。しかし実際には、スタート直後から緊迫した戦いが繰り広げられていた。
1周目、12番グリッドのケビン・マグヌッセン(ハース)がスタートで出遅れ、ふたつ順位を落とす。リアム・ローソン(RB)の背後についたマグヌッセンは激しく追い立てるが、抜き切れず。この時のローソンの必死の防戦が、マグヌッセンにはやり過ぎと映ったようだ。
1周目
マグヌッセン:ローソンのやつ! ストレートで僕がスリップについているのに、動きやがった。僕のプッシュに反応したんだ。
2台のバトルは記録はされたものの裁定はなく、そのままレースは進んだ。
4番グリッドから2番手に上がったシャルル・ルクレール(フェラーリ)は、首位のジョージ・ラッセル(メルセデス)に何度もバトルを仕掛ける。これでタイヤを傷めてしまったか、ルクレールは早めのピットインを要請したようだが、チーム側の返事は当初は否定的だった。
9周目
ブライアン・ボッツィ:チャールズ、今ピットインしたら、最後尾に落ちてしまう。なのでしばらく辛抱だ。
ルクレール:わかった。でも後ろの連中は、前ほど速くないだろ? さっきから言ってるけど、今はパンクしたみたい(なペース)なんだ。
ボッツィ:じゃあ、ボックスだ、ボックスしよう。
上位勢では最も早い9周目にピットインしたルクレールは、16番手まで後退。それでもすぐに4番手まで順位を戻した。
6番手を走っていた角田裕毅(RB)は、10周目にハードタイヤに交換。ピットロードではピエール・ガスリー(アルピーヌ)と並走し、なんとか前に出た角田だったが、出口付近の標識を跳ね飛ばしてしまう。
11周目
角田:大丈夫だと思うけど、フロントウイングをチェックしてくれ。
エルネスト・デジデリオ:了解。グッジョブだ。
もう1台のアルピーヌ、エステバン・オコンは11周目にピットに向かったが、ガレージ前をスルーしてそのままコースに復帰した。
12周目
オコン:何が起きたんだ? ボードが見えなかったんだけど。
ジョシュ・ペケット:大丈夫だ。そのままドライブスルーだ。走り続けてくれ。
オコン:XXXXX!
タイヤの準備ができていなかったようで、オコンはその後再度ピットイン。19番手まで後退してしまった。
10番グリッドのルイス・ハミルトン(メルセデス)はみるみる順位を上げ、上位勢のピットインの間に13周目には首位に立った。ここでハミルトンにもピットインの指示が出るが、本人は不満のようだ。
13周目
ピーター・ボニントン:僕らのピットウィンドウに、3台が入ろうとしている。1分38秒のペースだ。なのでここでピットに入ろう。
ハミルトン:確かなのか? 今入らない方が、いい気がするんだけど。
ボニントン:大丈夫だ。ボックスだ。ハードがベストタイヤだから。順位は3つ落とすけどね。ピットアウトの際に白線に気をつけろ。
しかしルクレールやランド・ノリス(マクラーレン)にも先行されたことに、ハミルトンは不満タラタラだ。
14周目
ハミルトン:なんてこった。いくつ順位を落としたんだ?
ドニントン:これ以上引っ張っていたら、5つ順位を落としていたはずだ。
宥めるドニントン。ハミルトンはコース上ですぐにノリスはかわしたものの、ルクレールは抜けず。5番手で周回を重ねた。
予選3番手と大活躍だったガスリー。レースでは序盤に順位を落としはしたが、上位入賞の可能性は十分にあった。しかし突然のトラブルが、ガスリーを襲った。エンジニア側のデータには、異常は出ていないようだったが……。
14周目
ガスリー:パワーが落ちている。パワーがない。エンジントラブルだ。
カレル・ルース:すべて問題ないように見える。単にリミッターに当たってるだけだ。
ガスリー:違う! ノーパワーだって!
そう叫んだ直後、ガスリー車のリヤから白煙が上がった。
ガスリー:ほら、見た通りじゃないか!
惰性でピットに戻ったガスリーは、力無くこう呟いた。
ガスリー:すべては無駄になってしまった。ツイてなかった……。
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F1第22戦無線レビュー(2)に続く