長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価し、ベスト5のドライバーを選出した。今回はラスベガスGPの週末を振り返る。
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ヘビーブレーキングの箇所と低速コーナーを多く備えるラスベガスのストリートサーキットは、ドライバーにとって大きな挑戦とまではいえないが、ウォールとの距離は近いため、ミスが許される余地は多くはない。
予選での1ラップアタックのためにタイヤを適切な温度に上げ、なおかつオーバーヒートしないようにすることが、週末を通して20人にとっての最大の課題だった。その課題を予選の初めから決勝の終わりまで完璧にこなしてみせたドライバーはただひとりだった。
【2024年F1第22戦ラスベガスGP ベスト5ドライバー】
■評価 10/10:キャリアベストの勝利を挙げたラッセル
ジョージ・ラッセル(メルセデス):予選1番手/決勝1位
ジョージ・ラッセル(メルセデス)は今回、自身のF1キャリアにおいて最も圧倒的な勝利を挙げた。チームメイトが予選でミスを犯したことの恩恵を受けたのは確かだが、ラッセルは重要な場面で一度もミスをしなかった。彼はナイトレース全体を通して、勝利に値する走りを見せた。
彼にとって最も難しい瞬間は、レース序盤に訪れた。序盤に速さを発揮して後ろからプッシュしてくるシャルル・ルクレールを、タイヤを傷めることなく抑え込み、なおかつギャップを広げる必要があったのだ。ラッセルは見事なドライビングでこれを成し遂げ、メルセデスによる予想外のワンツー・フィニッシュをリードした。
■評価 9/10:チームメイトより一貫して速かったサインツ
カルロス・サインツ(フェラーリ):予選2番手/決勝3位
カルロス・サインツ(フェラーリ)も完璧に近かったが、決勝スタート直後に致命的なミスをした。ターン1でのブレーキングにおいてルクレールに先行を許したのだ。しかしその後のサインツは、見事な走りを見せ、最初のスティントではタイヤを良い状態に保ちながら走行した。その後、サインツとルクレールはポジション争いをしたが、それはフェラーリにとってマイナスになった。ふたりが互いに相手に勝つことに集中しすぎたため、ルイス・ハミルトンが楽に2位をつかむことができたのだ。とはいえ今回は、フェラーリ内ではサインツの方がより速く、効率的な走りをした。
■評価 8/10:決勝では最速だったハミルトン
ルイス・ハミルトン(メルセデス):予選10番手/決勝2位
今回のレースは、ルイス・ハミルトン(メルセデス)にとって、優勝の可能性が高かったが、彼はまたもやそのチャンスを自ら台無しにした。予選Q3で2度にわたりミスを犯し、ポールポジションをつかむことができなかったのだ。
しかし、メルセデスにとっては、ハミルトンが最前列ではなく10番グリッドからスタートしなければならなかったことは、幸いだったかもしれない。チームメイト同士がレース中に争うことがなかったからだ。
ハミルトンが見せた目覚ましい追い上げから、レースでは彼が他の誰よりも速かったことが分かる。間違いなく、決勝ではベストドライバーだったと私は思うが、予選のミスにより、評価を下げざるを得なかった。
■評価 8/10:最大の目標であるタイトル確定を成し遂げたフェルスタッペン
マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選5番手/決勝5位
マックス・フェルスタッペン(レッドブル)にとってこの週末に最も重要な使命は、ランド・ノリスの前でフィニッシュし、タイトル4連覇を確定させることだった。その目標を彼は達成した。マシンのトップスピードが不足していたため、予選でのタイム向上はいつもほどは印象的ではなかった。Q1からQ3のタイム短縮は0.5秒。ポールポジションのラッセルの0.85秒に比べると、見劣りするものだった。
レースでは戦略が助けになり、2台のフェラーリの前に出たが、最終スティントで彼らを抑えることはできなかった。フェルスタッペンは今回は5位が最善の結果であると受け入れ、地味な形ではあるが、確実にタイトルを手にした。
■評価 8/10:予選3番手という奇跡を成し遂げたガスリー
ピエール・ガスリー(アルピーヌ):予選3番手/決勝リタイア
ピエール・ガスリー(アルピーヌ)にとってこの週末のハイライトは予選だった。Q3でルクレールやフェルスタッペンに勝って3番手を獲得するという、奇跡ともいえる結果を成し遂げたのだ。アルピーヌが新しいサスペンションを導入したオースティン以来、A524に向上が見られ、マシンにどれほどポテンシャルが潜んでいたのかが明らかになりつつある。マシンが良くなるにつれて、ガスリーは予選で輝きを見せている。エンジントラブルによるリタイアは、彼にとって残酷な出来事だった。それでもガスリーがラスベガスでどれだけ素晴らしい仕事をしたかを、忘れる者はいないだろう。
【ベスト6以下のドライバーとその戦い】
シャルル・ルクレール(フェラーリ):予選4番手/決勝4位
=評価 7/10:今回はサインツにかなわず、レースではミディアムタイヤをわずか4周で使い切ってしまった。後に挽回しようとしていた時に、チームからサインツはポジションを争わないと約束されていたにもかかわらず、サインツが前に出るという出来事もあった。
ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース):予選9番手/決勝8位
=評価 7/10:レースにおいて、“ベスト・オブ・ザ・レスト”の存在で、チームメイトより明らかに速かった。ヒュルケンベルグの入賞で、ハースはコンストラクターズ選手権6位に浮上した
角田裕毅(RB):予選7番手/決勝9位
=評価 7/10:予選で“ベスト・オブ・ザ・レスト”だったのは角田だ。しかしレースではヒュルケンベルグに勝つことができなかった。ピットアウト後にガスリーを後ろに抑えることに集中するあまり、ポリスチレンブロックに衝突するというアクシデントもあったが、幸いマシンに損傷はなかった。
周冠宇(キック・ザウバー):予選13番手/決勝13位
=評価 7/10:彼にとって、今シーズンベストの週末だった。ザウバーが持ち込んだアップグレードを最大限に活用した。
ランド・ノリス(マクラーレン):予選6番手/決勝6位
=評価 6/10:マシンから速さを引き出すことができず、週末初めの時点で、すでに敗北したように見えた。
フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン):予選17番手/決勝11位
=評価 6/10:マシンにはQ1を突破する速さがなかった。それでもアロンソは決勝でポイント争いに加わった。それが彼のすべてを物語っているといえるだろう。
ケビン・マグヌッセン(ハース):予選12番手/決勝12位
=評価 6/10:堅実な仕事をしたが、ヒュルケンベルグほどの素晴らしい走りではなかった。決勝で1ストップ戦略で走ったことも、マイナスに働いた。
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ):予選18番手/決勝リタイア
=評価 6/10:厳しい状況のなかで良い仕事をした。しかし最終的にトラブルでリタイアしなければならなかった。
エステバン・オコン(アルピーヌ):予選11番手/決勝17位
=評価 6/10:週末を通してガスリーにはかなわなかった。ただし、レースでの最初のピットストップでのミスがなければ9位争いをしていただろう。
オスカー・ピアストリ(マクラーレン):予選8番手/決勝7位
=評価 5/10:週末を通してノリスよりさらに苦しんだ。決勝スタートではグリッドボックスからわずかにマシンが出ていたと判断され、ペナルティを受けた。
バルテリ・ボッタス(キック・ザウバー):予選19番手/決勝18位
=評価 5/10:グリップがないコンディションでは競争力を発揮した。しかし今回パワーユニットのエレメント交換による降格ペナルティが確定したため、予選でもレースでも、チームメイトのサポートに専念した。
セルジオ・ペレス(レッドブル):予選16番手/決勝10位
=評価 4/10:予選Q1で敗退。決勝では10位で1ポイントを獲得したものの、チームメイトから46秒遅れてフィニッシュした。
フランコ・コラピント(ウイリアムズ):予選14番手/決勝14位
=評価 4/10:再び大クラッシュを喫し、ウイリアムズに多額の損害を与えた。大きな挑戦に臨むには、時期尚早なのかもしれない。
リアム・ローソン(RB):予選15番手/決勝16位
=評価 4/10:ブラジルに続き、角田よりも苦戦した。ただ、マシン自体の競争力も高くなかった。
ランス・ストロール(アストンマーティン):予選20番手/決勝15位
=評価 4/10:予選ではアロンソとの差はさほど大きいものではなかった。ただ、決勝では、ピットストップでのトラブルはあったものの、アロンソに匹敵する走りはできなかった。