『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』上田慎一郎監督が語る、主演・内野聖陽とのアツい舞台裏

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2024年11月28日 20:21  All About

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『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督の最新作『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』がいよいよ公開です。そこで上田監督にインタビュー! 撮影の裏側、上田監督が影響を受けた映画などについてお聞きしました。 ※サムネイル画像:(C)2024アングリースクワッド製作委員会
(C)2024アングリースクワッド製作委員会

映画『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』は、内野聖陽さん、岡田将生さん、川栄李奈さん、森川葵さん、小澤征悦さん、真矢ミキさん、吹越満さんなどスター俳優が出演する上田慎一郎監督の最新作です。

本作は韓国ドラマ『元カレは天才詐欺師 〜38師機動隊〜』をベースにした作品。生真面目な公務員と天才詐欺師が手を組んで、とある権力者を詐欺にはめるというスリリングなコンゲーム映画です。

今回は上田監督にこの作品の撮影エピソード、そして監督のキャリアから影響を受けた作品についてもインタビューしました。

原作ありの実写長編は初めてで

――『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』(以下、『アングリースクワッド』)は、韓国ドラマをベースにした作品だそうですが、リメイクするにあたり、韓国のドラマ制作側から何かリクエストはありましたか?

上田慎一郎監督(以下、上田監督):なかったですね。プロットの段階で一度チェックしていただき、その後、脚本が完成したときにもチェックしていただいているのですが、リクエストもありませんでしたし、NGもありませんでした。

――ではオリジナルのドラマに縛られることなく、比較的自由に制作することができたんですね。

上田監督:そうですね。ただ僕は原作のある実写長編を手がけるのは初めてなんです。また全16話の連続ドラマを1本の映画にするので、どこを切り取ってストーリーを作り上げていくのかという点は悩みました。

共同脚本の岩下悠子さんとプロット作りを1、2年かけて行い、岩下さんに初稿から5稿まで執筆いただき、その後を僕が引き継ぎました。

連続ドラマ6話くらいまでの“権力者を成敗する”という物語をベースにすることは早期に決まったのですが、何を削って、どこにオリジナルの要素を入れるのかなど、ああでもないこうでもないと考えて、6稿を書き上げた時点で、内野聖陽さんに出演依頼をしたんです。

内野聖陽さんと脚本作りからガッツリ組んだ!

(C)2024アングリースクワッド製作委員会

――主演の内野聖陽さんのキャスティングは監督が決めたのですか?

上田監督:主人公の熊沢役は内野聖陽さんにお願いしたいとプロデューサーに相談して、出演を依頼しました。

僕はこれまで、実力はあるけれどメジャーではない俳優たちと作品作りをしてきたので、内野さんのようなメジャーな俳優たちと同じような作品作りができるのだろうかという一抹の不安はありました。

でも内野さんとお会いしたら「撮影前からガッツリと肩を組んで一緒に作りたい。それができるのなら出演します」とおっしゃってくださり、脚本を読んでもらい、引き受けていただけることになりました。

――では撮影前から、内野さんとは打ち合わせを重ねていったのですね。

上田監督:内野さんとは何度も会って、打ち合わせを重ねましたね。妥協を許さない人なので、徹底的に話し合って脚本をブラッシュアップしていきました。

コロナ禍で制作が1年以上延期に

メイキング写真:税務署チームとの撮影風景 (C)2024アングリースクワッド製作委員会

――リハーサルもしっかりされたそうですね。

上田監督:税務署チームと詐欺師チームと橘チーム(小澤征悦さんが演じる権力者)に分かれてリハーサルをしましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で制作が延期になってしまったんです。キャストをもう一度集めるのに苦心して、結局1年4カ月も待つことになりました。

――確かにオールスターキャストなので集めるのが大変そうです。

上田監督:やっと撮影が始められるというときに、僕が新型コロナに感染してしまって、初めてリモートで撮影することになりました。

――リモートで演出して、新たな気付きなどはありましたか?

上田監督:僕は、撮影現場で走り回って演出するタイプなので、モニターの前で全体を見るということをあまりしてこなかったんです。でも今回、強制的にモニターの前で演出することになり、キャストの皆さんの芝居を一歩引いて見たら、細かい点にいろいろ気付くことができたんです。自分は現場を俯瞰で見ていなかったなと思いました。

新型コロナから復帰して現場に戻ってきたときは、以前よりも走り回らなくなり、モニターの前で演出することが増え、バランスが取れるようになりました。

俳優たちのアイデアを取り入れながら作り上げた

メイキング写真:岡田将生さん(左)と上田監督 (C)2024アングリースクワッド製作委員会

――本作はメジャーな俳優が総出演していて、これまでとは勝手が違うところもあったと思いますが、演出をしていて大変だった点はどのようなところですか?

上田監督:そうですね、俳優の皆さんを束ねられていたか……と考えると、できていなかったかなとは思います。

さっきもお話ししたように、撮影前から主演の内野さんに脚本作りにも参加していただいてガッツリ組んできましたし、撮影前にリハーサルをするなど、準備は万端だったのですが、これまでとは撮影現場の様子がまったく違いました。
場面写真:詐欺師チームの森川葵さん(左)と真矢ミキさん (C)2024アングリースクワッド製作委員会

――どのようなところが違いましたか?

上田監督:これまでの僕の作品は、メジャーではないけれど人間的に魅力のある俳優たちに出演してもらっていました。でもこの映画は、内野さんを始め百戦錬磨の俳優たちが結集していて、俳優たちからアイデアを提供されることも多かったんです。

そのアイデアは素晴らしく、僕が考えたプランを大きく上回ってくる。そうすると一度作り上げたものを壊して、再構築して、出来上がった新しいプランを俳優たちに見せて納得していただかないといけないわけです。

――これまでそんなふうに役者からプランが提出されることはあまり経験がなかったんですね。

上田監督:そうですね。これまでの現場では自分のプランに自分の思いついた新たなアイデアを付け加えていくスタイルでやってきました。でもこの映画は、内野さん、岡田さんなど俳優たちとしっかり話し合って、新たなプランを加えて作り直すという作業の繰り返しでした。
(C)2024アングリースクワッド製作委員会

ただ俳優の皆さんは「こういう現場は珍しい」とおっしゃっていました。監督によって撮影の進め方は異なると思いますが、経験豊富なベテラン監督など、自分の世界をがっちり貫くという方はけっこういると思うんです。

そういう監督と仕事をしてきた俳優にとっては、僕みたいに俳優のアイデアがよければ「それいいですね!」と取り入れていくというスタイルは珍しく映ったのかもしれません。

みんなで「ああしよう、こうしよう」と話し合いながら作り上げていく現場はワークショップみたいでした。

――上田監督らしい撮影現場だったんですね。

上田監督:そうですね。これまでと同じように映画作りができたとは思うのですが、俳優の皆さんのレベルが高いので、質問や提案を打ち返したり、まとめたりするのがとても大変でした。すごくタフな現場でしたし、かなり鍛えられました。

タランティーノ監督と岩井俊二監督から刺激を受ける

完成披露試写会に登壇した監督。本作は企画から映画完成まで6年かかった(C)2024アングリースクワッド製作委員会

――上田監督のキャリアについてお話を聞きたいです。学生時代から自主制作映画を撮影されていたそうですが、そのときから映画監督を目指していたのですか?

上田監督:中学時代から親父のハンディカムを借りて、放課後、友達と映画もどきの作品を撮っていたのが最初です。でも当時はあくまで趣味の範囲でやっていました。将来、映画監督になりたいと思ったのは、高校生のとき。進路相談で将来について考えたことがきっかけで、映画監督を職業として意識しました。

映画作りは楽しいし、周りに褒められるから、これを仕事にできればそれが自分にとっては一番いいと思ったんです。

――影響を受けた監督や作品はありますか?

上田監督:それはもうたくさんいますが、本当に映画が好きになったのはクエンティン・タランティーノ監督の『パルプ・フィクション』です。そのほかにもポール・トーマス・アンダーソン監督の『マグノリア』、ガイ・リッチー監督の『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』あたりですね。

高校生くらいのときに、これらの映画に出会って、映画好きになりました。

――タランティーノ監督の作品など、どこが上田監督の琴線に触れたのでしょうか?

上田監督:それまではハリウッド大作が好きで見ていたのですが、タランティーノ監督の映画は、これまで見てきた映画と違う、すごく自由な感じがしたんです。思春期なので「ほかとは違う」という価値観がかっこいいと思っていたのかもしれませんね。

――日本映画で刺激になった作品はありましたか?

上田監督:岩井俊二監督に傾倒していました。『リリイ・シュシュのすべて』が好きで、『リリイ・シュシュのすべて』的な暗い映画を自主映画として作ったこともあります。あと『花とアリス』も大好きですね。

――『花とアリス』はかわいい映画ですよね。

上田監督:『花とアリス』は上映館数が少なかったので、かなり遠くの映画館まで遠征して見に行きました。蒼井優さんが大好きだったんです。1回目の上映が終わった後、すぐ2回目のチケットも取って2回連続で見ました。

そういえば『花とアリス』のメイキングの特典が付いたチョコレート菓子があったんですが、その特典をヤフオクで落札して手に入れたりしていましたね(笑)。

――監督の映画に出演してくれたら最高ですね。

上田監督:そうですね。2019年に日本アカデミー賞話題賞をいただいたとき、蒼井優さんが司会だったんです。会場でばったりお会いしたとき、「受賞おめでとうございます」とおっしゃっていただいて……もう夢かと思いました(笑)。

目の前のことに全力でぶつかるだけ!

税務署チームの3人 (C)2024アングリースクワッド製作委員会

――今後の映画作りについて考えていることはありますか?

上田監督:正直にいうと先のことはあまり考えていなくて、目の前のことに全力でぶつかってきた結果、今ここにいるという感じなので、今後もやるべきことを全力でやるだけです。

もう次の脚本も書き始めていますし、とにかく目の前のことを着実に形にしていきたい。また僕は衝動的な行動も多いんです。縦型ショートフィルムの『レンタル部下』も、実際に存在するサービスを知ったことがきっかけでスタートしましたから。

――カンヌ映画祭「#TikTokShortFilm コンペティション」でグランプリを受賞されましたね。

上田監督:狙って作ったわけではないのですが、こうして多くの人に見ていただき、評価されて、仕事の幅が広がっていくのはありがたいと思います。でも、とにかく今は『アングリースクワッド』を多くの人に届けたい、見ていただきたい、その一心です!

上田慎一郎(うえだ・しんいちろう)監督のプロフィール

1984年4月7日生まれ。滋賀県出身。

2009年に映画製作団体を結成。2018年『カメラを止めるな!』が大ヒット。第42回日本アカデミー賞話題賞、第61回ブルーリボン賞作品賞など多くの映画賞を受賞。2019年『イソップの思うツボ』(共同監督)『スペシャルアクターズ』が公開。近作は『100日間生きたワニ』『DIVOC-12』(2021)『ポプラン』(2022)。2023年、カンヌ映画祭「#TikTokShortFilm コンペティション」でショートフィルム『レンタル部下』がグランプリを受賞した。

『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』2024年11月22日より全国ロードショー

(C)2024アングリースクワッド製作委員会

税務署に務める真面目な公務員の熊沢二郎(内野聖陽)は、ある日、天才詐欺師・氷室マコト(岡田将生)の罠にハマり、大金を奪われてしまう。ところが親友の刑事の活躍で氷室を突き止めた熊沢に対し、氷室は、熊沢が追っている権力者を詐欺にかけ脱税した10億円を取り戻してあげると提案し、税務署員と詐欺師がタッグを組むことに!

監督:上田慎一郎
脚本:上田慎一郎、岩下悠子
出演: 内野聖陽、岡田将生、川栄李奈、森川葵、後藤剛範、上川周作、鈴木聖奈、真矢ミキ、皆川猿時、神野三鈴、吹越満、小澤征悦
原作:『Squad38 (38사기동대)』/邦題『元カレは天才詐欺師 〜38師機動隊〜』
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(C)2024アングリースクワッド製作委員会
(文:斎藤 香(映画ガイド))
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