17歳が一瞬で試合を動かした。日テレ・東京ヴェルディベレーザMF眞城美春が11月30日に行われた2024-25 SOMPO WEリーグ第11節のサンフレッチェ広島レジーナ戦で前半に途中出場し、ピッチに立った直後にWEリーグ初得点を決めて勝利に貢献した。
東京NBは立ち上がりから試合を優位に進めていたが、前半中盤にはS広島Rに左サイドを立て続けに崩されて失点の危機。どちらが得点してもおかしくない展開となった。36分、松田岳夫監督が動く。3バックの左でプレーしていたDF三浦紗津紀に代えて、背番号14の眞城を投入。左ウイングバックだった松田紫野が3バックの左に下がって眞城が中盤に入った。
指揮官は試合後の会見で、「前半のスタートから相手のスピードのある選手が我々の左サイドを深くえぐるシーンが多かったので、その対応のためにスピードのある松田紫野を1つ落としました。結果的に前線に人を足すことで、相手をズラしながら構成することができたので、そこはチーム内で非常にうまくできたと思います」と説明した。
急きょ出場となった眞城は、「まずは試合にしっかり入ることを意識しました」と集中していた。「自分は周りとの連携やフリーランニングといった部分が特徴なので、そこを活かしつつ守備でも貢献したいと思っていました」とピッチでのイメージを膨らませていた。
すると38分、敵陣右サイドでボールを持った土方麻椰が相手センターバックを引きつけて左サイドへ展開。パスを受けた松田が早い段階で前線に浮き球を送ると、樋渡百花が胸トラップからシュート。ペナルティエリア左に走り込んでいた眞城がこぼれ球を流し込んで先制点を決めた。
出場から得点まで、その間わずか2分。短時間で試合を一気に動かして強いインパクトを残した。眞城は、「樋渡選手がシュートを打とうとしていたので、そのこぼれ球を詰めようと思っていたら、うまく自分のところにボールが来ました。(シュートを打つ)角度が悪いかなと思いましたが、流し込んで入ったのでよかったです」と得点シーンを振り返った。
17歳9カ月25日でのWEリーグ初得点となった。「前の試合でもチャンスがあったので、やっと決められてちょっとホッとしています」と安堵を口にし、「自分が入って早い段階で得点を奪えたので、そこからはいつも通りリラックスして試合ができました」と明かした。
采配が的中した指揮官は、「あの段階ですぐにゴールすることは想定していませんでした」と笑みをこぼし、「ただ、ゴールに向かうところで、相手を剥がすプレー、ためを作るプレーができて、味方も活かせるし自分も活きられるという選手なので、そういう意味では偶然でもなく、彼女の実力がゴールにつながったと思います」と称えた。
東京NBは58分にMF北村菜々美が追加点を挙げて敵地で2−0の完勝。勝利に貢献した眞城は、「試合前にイメージしていたことを出せたし、ゴールはずっと狙っていたので取れてよかったです。でも、まだまだできることは増やさないといけないと思いました」と話した。
東京NBにとっては6試合ぶりの無失点勝利となった。松田監督は、「全員がこの勝利に向けて1つになれた非常に素晴らしいゲームだった」と振り返った。
「最近のゲームではゴールを意識した攻撃を積み上げてきました。それが全部実を結んだわけではないですが、ゴールに近づくことができたのは非常に良かったですし、最近は0に抑えられないゲームも多かった中で守備でも0に抑えられた。失点0で得点を奪って勝てたこと、これはチームにとって大きな成果だと思います」
東京NBの下部組織出身の眞城は9月にトップデビューを果たしたばかり。途中10月にU−17女子日本代表の一員としてFIFA U-17女子ワールドカップドミニカ共和国2024に出場して2ゴールを挙げる活躍も見せた。クラブチーム再合流後も試合に絡み続け、今シーズンのWEリーグ前半戦では7試合に出場して1得点。リーグカップ戦を含めると、公式戦合計12試合に出場した。
「シーズンが始まる時はそんなに自分が試合に関われるとは思っていなかった」と話す17歳は、「WEリーグという舞台で多くの試合に出場できて、自分としてはもっとやるべきことが見つかりましたし、手応えもありました。自分が想像していた1年とはちょっと違ったけど、いい意味で自分を知れたと思います」と自身の現在地を冷静に捉えている。
「思ったより自分のやりたいプレーやボール持ってプレーできたので、そういう部分で手応えを感じています。強度や守備のところは自分と同じ学年でやっていたら通用するところでも、やっぱり大人相手だと通用しないところもあったので、そこは課題を感じました」
堂々のデビューシーズンを過ごす眞城が目指すのは、WEリーグ制覇のためにピッチでチームとともに戦うこと。「自分が試合に関わってリーグ優勝に貢献したい」。東京NBの14番の存在感はますます大きくなりそうだ。
取材・文=湊昂大