ラグビー日本代表の顔が100回目の早明戦で魅せた! 矢崎由高が明治大の夢を粉砕

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2024年12月03日 07:11  webスポルティーバ

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 12月1日、東京・国立競技場で100回目を迎えた関東大学ラグビー対抗戦の伝統の一戦、早稲田大と明治大との「早明戦」が行なわれ、4万人を超えるファンが集った。

 早稲田大は開幕から6戦全勝、明治大は5勝1敗。今季は両校のプライドを賭けて、優勝のかかった大一番を迎えた。早稲田大は7点差以内の敗戦でも優勝が決まるだけに、明治大は3トライ差&26点差の勝利が必要となる。

「これまで築き上げてきた先輩たちの(早明戦の)歴史が途絶えることはない。その一員になることを誇りに思うし、責任がある」

 日本代表で今年ブレイクした早稲田大FB矢崎由高(2年)は、固い決意を抱えて100回目の早明戦に臨んだ。

※ポジションの略称=HO(フッカー)、PR(プロップ)、LO(ロック)、FL(フランカー)、No.8(ナンバーエイト)、SH(スクラムハーフ)、SO(スタンドオフ)、CTB(センター)、WTB(ウイング)、FB(フルバック)

 試合序盤は、接点の圧力で勝る明治大のFW陣が「前へ」の気合いを見せた。しかし、早稲田大は「接近・展開・連続」を武器にFWとBKが一体となってアタックを繰り出し、前半は数少ないチャンスをしっかりものにして12-10のリードで折り返した。

 早稲田大を率いる大田尾竜彦監督は、後半開始時にピッチへ選手を送り出す時、矢崎に「頼んだよ!」と声をかけた。

「(矢崎は)非常にいいメンタル状態で、気負いもなく、自分のやるべきことをクリアな状態で試合に臨んでくれた。おそらく後半、トライを取ると思っていた」

 17-17の同点で迎えた後半21分、大田尾監督の言葉は実現となる。

 キャプテンHO佐藤健次(4年)の意表を突くゴロパン(地面を転がす短いキック)で相手陣内奥まで攻め込むと、連続攻撃のなかで矢崎がSH細矢聖樹(4年)のパスにスピードを上げて走り込み、相手ディフェンスラインを突破。最後はタックルを受けながらも、右手をゴールラインに伸ばした。

【強制的に1週間のオフを取らせる決断】

 矢崎の見事なトライとその後のPG(ペナルティゴール)で、早稲田大は27点とリードを拡大。ゲーム終盤は明治大の猛攻を受けるも粘りのディフェンスでしのぎ、記念すべき100回目の早明戦を制した。

 この勝利によって、早稲田大は6年ぶり24度目の対抗戦優勝を決めるとともに、元日本代表FB五郎丸歩が主力だった2007年以来となる全勝優勝を成し遂げた。早明戦の通算成績は早稲田大の56勝42敗2分。

 試合後、矢崎は20歳らしい元気な笑顔を見せた。

「明治大が強く、こういう(クロスゲーム)展開になるのはわかっていたので、自分たちがやってきたことを、芯をぶらさずに80分間やり続けた。僕の年齢の5倍くらい伝統がある試合に出られたこと、早明戦でファンに勝利を届けることができて、とてもうれしいです!」

 今季はこれまで調子が上がらなかったことも、喜びを爆発させた理由のひとつだろう。対抗戦で早稲田大が連勝を続けるなか、本人も「ここ何試合かは、自分のパフォーマンスにすごく納得がいってなかった」と話していたからだ。

 大学1年時から早稲田大のエースとして躍動してきた矢崎は、今年2月からU20日本代表や日本代表活動にも参加。夏から秋にかけてはエディージャパンの一員としてテストマッチに5試合出場し、10月26日のニュージーランド代表戦も先発した。さらにサモアやカナダへの遠征も経験し、その合間に早稲田大の試合にも出るという超多忙な日々を送っていた。

 オールブラックスに19-64で大敗したあと、矢崎はこう語っていた。

「自分に足りない部分はたくさんありましたが、これからの可能性を信じて使い続けてくれたエディー(・ジョーンズHC)さんには感謝しています。(大学に戻っても)自分のスタンダードを下げず、また日本代表の舞台で活躍できるように、この半年間やっていきたい」

 矢崎は高い意識を持って、大学ラグビーシーズンを迎えた。

 しかしながら、早稲田大の授業や練習に参加しながら日本代表活動にも参加すれば、心身ともに疲れが出るのは致し方ないこと。大田尾監督は11月の中旬、矢崎に1週間のオフを取らせることにしたという。

【2019年以来の「荒ぶる」を歌えるか】

 気持ちを切り替えてリフレッシュし、早明戦に向けてしっかり準備できたことが、今回の好パフォーマンスにつながったのは間違いない。

「(11月23日の)早慶戦から2週間しっかり準備をして、自分には何が必要なのかをもう一度見つめ直し、いいマインドを持って試合に臨めた。今日は少しでも自分に点数を上げられる出来だったかな」

 大田尾監督も「オールブラックス戦が終わったあとも連戦でコンディション調整が難しいなか、早明戦に合わせてやってくれたので、矢崎はアスリートとしてステップアップできたと思います」と目を細めた。

 関東対抗戦を7戦全勝で駆け抜けた早稲田大が次に見つめる先は、2019年度以来の優勝を目指す大学選手権。今回はシード校となり、12月21日の準々決勝から参戦する。

 昨年度の大学選手権、早稲田大は準々決勝で京都産業大学に28-65と大敗。年越しもできずにシーズンを終えて、当時1年生だった矢崎は目を赤く腫らした。

 その悔しさを忘れるわけはなく、すでに矢崎は大学選手権に気持ちを切り替えている。

「去年は去年、今年は今年です。チームはいい方向に進んでいる途中なので、あと6週間で完結させたい。目標はあくまでも『荒ぶる』(優勝した時にのみ歌うことが許される第二部歌)を歌うこと。大学選手権の優勝です。初心に戻って練習をやっていきたい」

 世界的名将のジョーンズHCに抜擢されて、わずか1年で「日本代表の顔」として大きく進化を遂げようとしている矢崎。桐蔭学園時代に続き、創部107年目を迎える「臙脂(えんじ)のジャージー」を日本一に導くことができるか。

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