数々の名牝が勝利してきた阪神JFだが、衝撃度ではこの馬が一番ではないか。阪神3歳牝馬S時代の98年、連闘で勝利を手にしたスティンガーだ。名門・藤沢和雄厩舎の一時代を支え、昨年9月に天国へ旅立った天才少女の足跡を振り返る。
スティンガーは父サンデーサイレンス、母レガシーオブストレングス、母の父Affirmedの血統。4歳上の全姉がGII・2勝のサイレントハピネスとあって、社台ファームでの育成段階から大きな期待を集めていた。11月の東京でデビュー勝ちすると、中2週で牝馬限定の500万下・赤松賞へ。ここも楽勝すると、陣営は阪神3歳牝馬Sへの連闘を決めた。2歳(当時の表記は3歳)の牝馬の連闘、しかも関西遠征とあって悲観的な声も多かったが、この判断が正しかったことを結果で証明する。
単勝5.2倍の3番人気に支持された一戦。初騎乗の横山典弘騎手を背に、道中は後方で脚をためた。前半600mは34秒3のハイペースとあって、この策が吉と出る。4角で外から差を詰めると、直線入口で早くも先頭へ。大外からエイシンレマーズから追い上げたが、これを坂で突き放すと、2馬身差をつけてゴール。無傷の3連勝でGI初制覇を果たしたのだった。
この後はGIタイトルにこそ届かなかったが、00年の京都牝馬特別、00年と01年の京王杯スプリングCを制覇。マイル以下を主戦場に、息長く活躍した。これまでに連闘でGIを制した馬は89年の安田記念のバンブーメモリー、18年の安田記念のモズアスコットを含めて3頭いるが、牝馬はスティンガーの1頭のみ。この偉業はいつまでも語り継がれるに違いない。
【連闘でGIを勝利した馬】
バンブーメモリー(シルクロードS→安田記念)
スティンガー(赤松賞→阪神3歳牝馬S)
モズアスコット(安土城S→安田記念)
※内容に一部誤りがございました。訂正のうえ、お詫び申し上げます。