【漫画】もし死神が普通に暮らし、学校に通う町があったら? ホラーコメディ『骨皮とお塩』がゆるくて熱い

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2024年12月03日 08:00  リアルサウンド

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『骨皮とお塩』より

 死神の学校に通う生徒・骨皮と塩田は“亡くなる人の魂を回収する”という実習のペアを組むことになる。調査のために回収対象となる女子高生・夏木ウリに会いに行く2人。死神であることを隠して夏木と接するが、仲を深めたために情が芽生えてしまい――。


(参考:漫画『骨皮とお塩』を読む


 Xに10月上旬に投稿されたオリジナル漫画『骨皮とお塩』は、学校に通う死神の青春を描いたホラーコメディ。“死神に感情移入する”という不思議な体験、ゆるゆるとした青春コメディのなかで、生きることや出会いと別れについて考えさせてくれる良作だ。


 本作を手掛けたのは、農業系のアルバイトをしながら漫画家アシスタントとして研鑽を積んでいるという今際イムラさん(@imawaimura)。『骨皮とお塩』をどのようにして描いたのかなど話を聞いた。(望月悠木)


▪️はじまりは専門学校時代の課題


――なぜ『骨皮とお塩』を手がけようと思ったのですか?


今際:本作は当初『骨皮お塩』というタイトルでした。漫画の専門学校に通っていたのですが、2年生の時に授業の一環で「漫画投稿サイト『comico』に縦読み漫画を投稿する」というものがありました。そこで『骨皮お塩』というスーパー銭湯でアルバイトする死神の漫画を制作・投稿しました。


――『骨皮お塩』はその後どうなったのですか?


今際:特に強い思い入れはなかったのですが、専門学校の友人たちが褒めてくれて、嬉しくなって3話ほど投稿しました。それ以降は別の読み切り漫画を描いていたので、『骨皮お塩』は放置していました。それから、専門学校の卒業間近に制作した読み切り『晴れ女の告白』が新人賞を受賞して、同作が掲載されてデビューに至りました。「次は何を描こうか?」と考えていた時に『骨皮お塩』を思い出し、登場人物はあまり変えず、読み切りとして作り直したのが『骨皮とお塩』です。ちなみに「締め切りに間に合わない」と思い、専門学校時代の友人たちに背景などを手伝ってもらい、それ以降も何度も助けてくれる友人たちには感謝しかありません。


――そもそも、“死神という存在が周知されている世界”を舞台にした理由は?


今際:もともと死神や妖怪などオカルト的な存在がモチーフの作品が好きです。特に中学時代に出会った伊坂幸太郎先生の『死神の精度』(文藝春秋、以下同)と『死神に浮力』が大好きで、その辺りから多少の影響は受けているのではないかなと思います。


——そんなオカルト的な存在である死神が学校に通う内容でした。


今際:「死神も修学旅行に行ったり、テストの成績で進級が決まったりしていたら面白いだろう」と思い、“死神の学校に通う生徒”を描きました。また、余命僅かな人間は高齢者でも新社会人でも良かったのですが、“賞に出す読み切り”ということで見栄えを考えて女子高生を選びました。


▪️伊坂幸太郎の影響


――登場人物はどのようにして生まれたのですか?


今際:描きやすいビジュアル・性格のキャラになっています。骨皮とお塩は互いに対になるビジュアル・性格に、夏木ウリはどこにでもいる明るい女子高生にしています。ちなみに、「塩田お塩」は塩ラーメンから、「髄骨皮」はラーメンの出汁をイメージした名前を決めました。「夏木ウリ」は夏のお話なので、「夏」と「キュウリ」から来ています。


——死神の衣装のデザインについても教えてください。


今際:ゆるキャラ寄りの死神の姿と、等身の違う人間の姿のギャップを描きたかったので、あのような姿となりました。「死ぬ間際に死神が訪れるのならば、恐ろしい姿ではなく拍子抜けするようなゆるい姿で、コンビニにコピーしに行くくらいの感覚で人間の命を終わらせてほしい」という私の願望も含まれています。


――また、死神の衣装では登場人物の見分けがつきにくいですが、各キャラを描き分けるために意識したことは?


今際:主役の2人に焦点を当てるため、ある程度の統一感を持たせつつ、かつ個性を出そうとしたため、お面の形はそれぞれ違っています。主人公の2人以外はほとんどモブキャラとして描いていますが、各生徒には名前や得意分野があるため、「いつか他の死神たちも漫画に出せたら」と思っています。


——1ページ目の「鹿に乗って通勤〜」という地の文が、最後のコマでいかされるのが素敵でした。この仕掛けはどのようにして思いついたのですか?


今際:先述したことと似ているのですが、私は伊坂幸太郎先生の作品が大好きです。伊坂先生の作品は、序盤に出てきた何気ないアイテムや会話が最後に伏線として華麗に回収されるため、その様式をリスペクトした形になります。また、「鹿で通勤〜」というのは実際に私の父親が話していた嘘です。父親は上手い嘘話ばかりをするので、「本当に鹿に乗り、鹿の駐車場がある」ということを信じていた時期があります。


――今後の漫画制作における目標は?


今際:ありがたいことに『月刊マガジン』(講談社)の新人賞で、準入選を2回受賞して、今年は講談社のWebコミック配信サイト『月マガ基地』に読み切りを掲載してもらいました。次は連載を目指してネームを作成しています。しばらくはアシスタントとアルバイトをしながらになりますが、「いずれは本業にしたい」「読者にファンレターを書いてもらえる漫画家になりたい」と思っています。また、漫画アプリ『コミックDAYS』(講談社)で読み切り漫画『春よ、帰らないで!』が掲載中ですので、読んでもらえたら嬉しいです。


(望月悠木)



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