一方で、旅行需要の回復や人手不足、円安などを背景にこれらの料金は値上がり傾向です。1人分の料金でも料金が高額なケースや家族全員分となると結構な費用負担になります。しかし出発直前の体調不良や予期せぬアクシデントなどで、予定していた旅行やイベントをキャンセルせざるを得ないことがあります。
そしてキャンセルのタイミングによってはキャンセル料が発生することがありますが、こんな場合のための補償が「キャンセル保険」です。
キャンセル保険とは?
キャンセル保険は、「国内旅行」「海外旅行」「航空券」「宿泊予約」「イベントのチケット」などを対象に、キャンセルが発生した場合のキャンセル料などの費用を負担する保険です。一般的に「キャンセル費用保険」「キャンセル保険」と呼ばれています(ここでは以下、キャンセル保険と記載します)。
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例えばコロナ禍のときに陽性になった、あるいはインフルエンザなどにかかった場合、予定していた旅行やイベントはキャンセルせざるを得なくなります。そうしたこともありこの保険のニーズが喚起され、コロナ後も旅行代金などが値上がりしていることを背景に一定の需要がでています。
キャンセル保険の保険料と補償内容の例
キャンセル保険を利用するかどうかを判断する際、保険料は1つのポイントです。商品によって保険料が異なるのは言うまでもありませんが、おおよそ次の割合くらいを目安に考えてください。具体的には旅行費用や空港運賃、宿泊料金、イベントのチケット料金などの1.5〜7%程度のケースが多いようです。
実際に補償されるのはキャンセル料の全額だったり、一定の割合までだったりとさまざまです。
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どんなキャンセル事由なら対象?
キャンセル保険も保険である以上、どんな事由のキャンセルであっても対象になるわけではありません。一方で、それなりにいろいろなキャンセル事由を対象にしています。一例を挙げると以下のようなキャンセルがあります。<キャンセル保険の対象となるキャンセル事由の例>
・本人、同行者などの死亡または危篤
・本人やその配偶者、親族がケガや病気入院
・感染症の発病
・渡航先から出入国規制が発せられた
・利用予定の交通機関の遅延や欠航
・参加予定のイベントの中止や延期
・渡航先で地震・噴火、これらによる津波、戦争、暴動、テロ行為などが発生した
・ペットの死亡
・勤務先から業務出張や休日勤務を命じられた
・パスポートの紛失・盗難、期限切れ
他にもいろいろありますが、一般的にキャンセルになりそうなことはある程度カバーされています。
ただし、これらのキャンセル事由には、例えば●日以上の入院、●時間以上の遅延など保険によっていろいろと条件がついていることがあります。加入前に必ず対象となるキャンセル事由を確認するようにしてください。
キャンセル保険の取り扱いと加入方法
キャンセル保険の加入方法は大きく分けると2つあります。1つはネットで保険会社に直接申し込みをして加入するパターンです。もう1つは、保険会社などが旅行会社などと提携していて、旅行などの申し込み時に一緒に案内をされて加入するパターンです。
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キャンセル保険の選び方と注意点
キャンセル保険は、キャンセル料が高額になるほど必要となってくるでしょう。いくつかの損害保険会社や少額短期保険業者がこの保険の取り扱いを始めています。「対象となるキャンセル理由」「保険料」「補償割合」は必ずチェックしてください。保険である以上はこの部分の比較は大切なポイントです。
それから重要な点がもう1つあります。それはキャンセル保険に加入できるタイミングに制限があることです。海外旅行保険の場合、加入を忘れていても出発当日に空港にある保険の取り扱いカウンターで加入することができますが、キャンセル保険ではこうしたことはできません。
そもそも出発当日となるとすでにキャンセルとなる原因がすでに発生している可能性が高いので、それから加入できては保険として機能しません。一般的に加入に制限がかかるというのは次の内容です。
・旅行などの予約から●日以内に加入
・出発の●日前までに加入
上記の2つとも条件になっていることもありますし、下の条件だけがついているなどさまざまです。保険商品によっては早いと出発の2週間前までなどとなっていることもあります。いつでもキャンセル保険に加入できるわけではないのです。
予約から●日という条件があると予約時期によっては早めの加入が必要ですが、出発から●日前だけのケースでもせいぜい数日前までです。加入を検討している場合は、出発の1カ月くらい前になったら具体的にどうするか加入の方向性を決めるといいでしょう。
文:平野 敦之(ファイナンシャルプランナー、中小企業診断士、行政書士)
慶応義塾大学法学部卒業後、公的金融機関勤務を経てFP資格を取得。FPの妻と共に「夫婦FP」としてFPオフィスを創立。顧客の自己実現をサポート。中小企業診断士の立場から経営者・従業員のライフプランも支援。
(文:平野 敦之(ファイナンシャルプランナー、中小企業診断士、行政書士))