田代万里生、「オペラ座の怪人」の後日譚を描いた「ラブ・ネバー・ダイ」 3度目の出演に「また新たな気持ちで向き合える」【インタビュー】

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2024年12月05日 08:10  エンタメOVO

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田代万里生

 数々の名作を世に送り出し続けてきたミュージカル界の“生ける伝説”アンドリュー・ロイド=ウェバーが「オペラ座の怪人」の後日譚として生み出した、ミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」。日本で3回目の上演となる公演が、2025年1月17日に幕を開ける。クリスティーヌと結婚したラウル・シャニュイ子爵を、2014年の初演時から演じる田代万里生に、意気込みや役作りについて、さらにはミュージカルデビュー15周年を迎えた心境を聞いた。




−「ラブ・ネバー・ダイ」には3度目の出演となりますが、改めて本作への意気込みをお願いします。

 2014年の初演のときには3回も出演できるとは思ってもいなかったですし、11年間かけてラウルと向き合うことができて本当にうれしい気持ちでいっぱいです。

−2014年の日本初演、それから19年の再演で印象に残っていることを教えてください。

 初演のときは、僕はちょうど30代に差し掛かる頃で、初めて役者として子どもがいる役柄をいただきました。その翌年からは、ミュージカル「エリザベート」のフランツ・ヨーゼフといった息子のいる役や重厚感のある役、年齢が実年齢よりも上の役柄を演じることが多くなったのですが、初演のラウルが初めて苦悩が渦巻いている、受動的なお芝居が必要とされる役柄だったので、すごく難しいなと思いながら演じました。19年の再演では、初演からいろんな経験を経て違う形で向き合えることができましたが、特に今回の再々演に関しては、僕自身が今年、実生活でも息子が生まれて父になったということもあって、同じく父親であるラウルを演じるということもとても楽しみにしています。きっとまた新たな気持ちで向き合えるのではないかと思っています。

−ラウルという役柄についてはどのように捉えて演じていましたか。

 お客さんからは「ラウルは嫌い」とか「私の好きだった(「オペラ座の怪人」で描かれた)あのすてきなラウルはどこにいったの?」とよく言われますが(笑)、僕は全くそうは思っていなくて。「オペラ座の怪人」のすてきなラウルはまだいます。ただ、クリスティーヌと結婚してグスタフという10歳の息子を育てながらも、クリスティーヌはファントムを忘れられないのではないかと、何か引っかかるものが10年間あった。クリスティーヌももしかしたらラウルと向き合い切れていないところがあったのかもしれない。そうしたことをラウルが感じ取って、「自分が描いていた未来とは何かが違う」と思っているのではないかなと思います。なので、僕の中では、青年ラウルから大きく外れたキャラクターというよりは、青年ラウルの延長のつもりで演じています。

−先ほど、実生活で父になったことが役作りの変化につながるというお話がありましたが、今回、ラウルという役柄のどのようなところをより深めていきたいですか。

 たくさん手をかけて育ててきたのに、何もしていないファントムが10年経って突然現れて連れて行こうとする。それだけは我慢できないのだと思います。今、自分に子どもが産まれたことで、グスタフに対しての愛情や思い入れ、一緒に過ごした時間というのをしっかり感じられます。きっとラウルはクリスティーヌとグスタフの成長の喜びを分かち合って、時を経てきた。それなのに、グスタフの手を引っ張っていこうとするファントムに対しての怒りや不安はますます強くなるのではないかなと思います。

−今回の公演では、加藤和樹さんとのダブルキャストになります。加藤さんとは何度も共演されていますが、どんな印象がありますか。

 和樹くんとは、「マタ・ハリ」でもダブルキャストでラドゥーという役を演じたのですが、全く色の違うラドゥーが誕生して。ダブルキャスト同士のお芝居は見たくないという俳優さんがたくさんいる中、僕と和樹くんは全くそんなことなくて、お互いの稽古は必ず見るというくらい見ていたかなと思います。お互いの演技を見ながら、インスピレーションをいただきつつ、お互いに自分の個性を生かした役作りをしていたような気がします。お芝居以外でも仲良くさせていただいていて、和樹くんの家に行ってお手製のラーメンを食べさせてもらったりもしています(笑)。今回も楽屋が同じなのではないかなと思うので、とても楽しみにしています。

−「マタ・ハリ」ではそれぞれの個性を生かした役作りということでしたが、田代さんとしては、加藤さんの個性、ご自身の個性はそれぞれどのように感じていますか。

 まず、共通点は、二人ともめちゃくちゃ真面目だということだと思います。僕は和樹くんのことをそう思っていますし、多分、和樹くんも僕のことをそう思っていると思います(笑)。ただ、その種類が違うんですよ。それからやっぱり和樹くんはセクシー。顔に「セクシー」って書いてある(笑)。24時間、何をやってもセクシーなので、そこが違いかなと思います。僕は、これまで比較的、貴公子系の役を若い頃にたくさん演じさせていただいたので、そうした人物が崩れていく姿を出していけたらいいなと思って演じています。そこが個性の一つなのかなと思います。

−田代さんは、今年、ミュージカルデビュー15周年、さらに40歳を迎えられた節目の一年でした。

 今(取材当時)、デビュー15周年を記念したアルバムをレコーディングしているのですが、10周年から15周年にかけて演じた役柄のソロナンバーを中心に、オリジナル楽曲なども含めてお届けするものになっています。この5年間で演じた役柄は、くせ者ぞろいなんですよ。5年前のアルバムは端正な役柄が多かったのに、今は急に叫んだり、ダミ声になったり、嫉妬に狂ったり、ちょっと様子が変だったり、嫌なパパだったり、コミカルだったり(笑)。本当にいろいろなチャレンジをさせていただいた5年間だったなと思います。

−デビュー当時と現在で、ご自身の中で感じている大きな変化は?

 若いときは、何事も経験だし、やってみないと分からないことも多いと思っていたので、隙間なく、立て続けに舞台に出演をして、経験を積んでいこうと思っていましたし、ありがたいことにそうさせていただいていました。ですが、40代に入ってからは、体ももちろん20代とは違いますし、喉も違いますし、精神的にも違う。日々の過ごし方や理想とする過ごし方、これからの人生をどう過ごして、どう音楽や舞台と向き合いたいかを考えるようになりました。何にでもチャレンジしてみるという考え方から、より慎重に、より一つ一つ丁寧に向き合えるように、インターバルもいただきながら作品を選んだり、役柄を構築していけるように心がけようと考えています。

−それは何かきっかけがあって、変化したのですか。

 コロナ禍があったり、改めて自分の体と向き合う機会ができたことがきっかけだったとは思います。それから、この15年間の中で自分なりのペースがつかめてきたからということももちろんあります。自分が納得する舞台にするためには台本と向き合う時間がどれだけ必要なのか、その役柄や作品を愛するためにはどれだけの勉強が必要なのかが分かってきたので、それからですね。

−今、お仕事をする上で大切にされていることは?

 人間は、馬車馬のように20年も30年も走り続けるのは不可能ですし、アウトプットをし続けるだけではだめだと思います。アウトプットをし続けながらインプットするってなかなか難しいんですよ。なので、インプットする時間とインプットするための気持ち、体力の余裕を持つための休息は、メンタル的にも体力的にも必ず必要です。舞台以外の経験や人との出会いをたくさんして、家族との時間や1人の時間をより大切に過ごして、プライベートを充実させて、心と体に余裕を持って作品に取り組むということがすごく大事だと痛感しています。

−最後に、公演に向けた意気込みをお願いします。

 3回目の出演になり、より熟成したラウルを演じられるのではないかと思っています。まだこの作品をご覧になったことがない方は、舞台美術とロイド=ウェバーの音楽の力に圧倒されると思います。そして、ミュージカルを見たことがない方も、「オペラの怪人」を見たことがない方も、事前予習がなくても十分楽しめる作品です。テレビや動画配信などいつでも気軽に見られる媒体がたくさんある現在ですが、決まった時間、決まった場所に1000人以上が集まって、1000人以上が固唾(かたず)を飲んで目の前で繰り広げられる生のお芝居を見る。そうした体験をぜひ劇場で体感していただきたいと思います。お待ちしております。

(取材・文/嶋田真己)

 ミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」は、2025年1月17日〜2月24日に都内・日生劇場で上演。


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