2024スーパーフォーミュラ公式テスト/ルーキーテスト 小林利徠斗(VANTELIN TEAM TOM’S) 12月13日、鈴鹿サーキットで行われたスーパーフォーミュラのルーキーテスト。この日、初めてスーパーフォーミュラのステアリングを握った小林利徠斗が、走行後に2セッションのテストを振り返った。
小林はTOYOTA GAZOO Racingドライバー・チャレンジ・プログラム(TGR-DC)に所属する19歳。2022年にスカラシップに選出されFIA-F4に参戦、2023年にチャンピオンを獲得すると、今季2024年はスーパーGT GT300クラスと全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権、スーパー耐久シリーズ、マカオグランプリといったさまざまなレースに臨み、スーパーフォーミュラ・ライツではランキング2位に輝いている。
また小林は、グランツーリスモシリーズなどのオンラインレース界でも活躍をみせており、2021年のTOYOTA GAZOO Racing GT Cupで3位になったほか、同タイトルを使用した国体やワールドファイナルへの出場経験などを持つ。
小林は11日・12日と公式テストをピットで見守り、ルーキーのみ走行が許される3日目にいよいよ初走行。坪井翔がドライブしてドライバーズタイトルを獲得したVANTELIN TEAM TOM’Sの36号車のコクピットに収まった。午前のセッション5ではタイムを記録した車両のなかで最下位に終わったものの、午後のセッション6では自己ベストタイムを1秒以上縮め、11台中5番手でスーパーフォーミュラ初ドライブを終えた。
テストに臨む前には、「正直、怖いですね(苦笑)」と語っていた小林だが、初めてのスーパーフォーミュラにどのような感触を得たのだろうか。
「もちろん、今日一日でスーパーフォーミュラというクルマを操り切るということは難しかったですが、(自分にとって)新しいクルマに対していかに短時間でなるべく速く走れるように成長するかという点でも貴重な経験でしたし、スーパーフォーミュラというなかなか乗れないクルマを1日体験させていただいたという意味でも、良いテストになったと思います」
「スーパーフォーミュラ・ライツもコーナーはすごく速い部類なので、それほど大きくは変わりませんが、パワーは倍以上あるはずなので、やっぱり直線が(大きく違う)。そこが難しいところでしたし、面白い部分でもあると思いました」
午前のセッションの最後には、ニュータイヤを投入。「午前中は本当に少しずつ、慎重にタイムを上げていったので、全然タイヤの限界は使えていなかった」と小林は振り返るが、ここで1回アタックを敢行したことにより、午後のユーズドタイヤでの走り出しでは限界が掴みやすくなっていたという。
「アタックに入ると、これまでに経験したことのない速さで……最初に思ったのは『やっぱり怖いな』と(苦笑)。ちょっとずつ心も慣らしながら、クルマの挙動を確かめながらドライブして、最終的に(赤旗もあって)アタックはしっかりはできなかったですけど、ある程度は1日で対応できたので、そこは僕の中では成長できたところかなと思いますね」
スーパーフォーミュラの難しさについて小林は、「いろいろな温度を気にしながら、ステリングのモニターも見ながら、感触も確かめながら……と、いろいろ気にしながらタイヤを温めて」いくことが求められる、低気温・路温下でのタイヤのウォーミングアップを挙げた。なお、トムスは今回のテストでタイヤウォーマーを使用していなかったという。
実際、午後のセッションの最終アタックでは、ピットアウト直後に小林の肝を冷やすシーンがあった。
「最後の新品タイヤのアタックのときは、ピットを出て行って1コーナーに向けて旋回して行ったら、そのままクルっと回ってしまいました。(2日目にアウトラップの2コーナーでクラッシュした)小出(峻)選手のスピンも見ていたので、『実際、どうなんだろう』と想像していたのですが、同じようなことが自分の身にも起きたので、本当に難しいクルマだなと思いました。ただ、それをちゃんと扱えている人は扱えているので、そこは頭を整理して、(タイヤが)冷えているときの乗り方なども考えていきたいと思います」
その後セッションが赤旗終了となったことで、アタック完遂はならなかった小林。「神経をすり減らしますね。体力的なものよりは、精神的なものが……」と、初ドライブならではの緊張感と戦いながらも、自らの成長を感じた1日となったようだ。
「また何かしらの機会があれば乗ってみたいです。操るのは難しいクルマですが、操ることができればできるほど、ものすごく楽しいクルマだと思うので、そこはまたいろいろなところに経験を活かしつつ、成長したいと思います」