2024年F1第24戦アブダビGP。コンストラクターズタイトル争いは、依然としてランド・ノリスが首位を走り有利な状況を維持していた。一方でフェラーリもカルロス・サインツがノリスを追い続け、19番手スタートのシャルル・ルクレールも上位まで追い上げ逆転を狙った。アブダビGP後半を無線とともに振り返る。
────────────────────
F1第24戦アブダビGPのレース後半に入った29周目、依然として首位ランド・ノリス(マクラーレン)をカルロス・サインツ(フェラーリ)が追う展開。このままいけば、マクラーレンのコンストラクターズ選手権制覇が確定する。
一方中団では、ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)が7番手のピエール・ガスリー(アルピーヌ)を追っていた。こちらも少なくともガスリーを抜かない限り、ハースはアルピーヌに6位を奪われてしまう。
ニコ・ヒュルケンベルグ:1ストップじゃないよね?
ギャリー・ギャノン:違うよ。
ミディアムタイヤで13周しか走らずにハードタイヤに交換したヒュルケンベルグにしてみれば、当然2ストップのつもりだっただろう。「違うよ」と返した担当エンジニアも、この時点では1ストップはないと思っていたのか。しかしヒュルケンベルグは結局残り45周をハードタイヤで走り切って8位でチェッカー。しかしガスリーを抜くことはできず、アルピーヌの選手権6位が確定した。
29周目にピットインし、スタート直後のオスカー・ピアストリ(マクラーレン)との接触事故の10秒ペナルティを消化したマックス・フェルスタッペン。あまりに厳しい裁定に、皮肉な一言を漏らした。
フェルスタッペン:ついでに20秒ペナルティももらおうか? ほんとにバカやろうだよ。
31周目、ターン6の攻防でバルテリ・ボッタス(キック・ザウバー)がブレーキロック。止まりきれず、ケビン・マグヌッセン(ハース)にぶつかってしまう。
マグヌッセン:ああ〜なんて素晴らしいXXXなんだ!
緊急ピットインしたボッタスは、そのままリタイアとなった。
ボッタス:これでオシマイだ。
スティーブン・ペトリック:ああ。こんな形で終えたくはなかった。
39周目
ウィル・ジョゼフ:ニュータイヤに替えたら、サインツをコース上で抜けるか?
ノリス:抜けると思うよ。
この時点で首位ノリスと2位サインツの差は4秒弱。もしここで2回目のピットインを行えば、もちろん首位の座はサインツに明け渡すことになる。それでもノリスは、「コース上で抜けると思う」と速さに自信を見せた。
しかしノリスは、このままチェッカーまで走り切った。
43周目
ルイス・ハミルトン:前とのギャップはどれくらい?
ピーター・ボニントン:14秒だ。
ハミルトン:14秒?
トト・ウォルフ代表:君ならできる。
5番手を走るハミルトンが知りたかったのは、前を行くジョージ・ラッセル(メルセデス)とのギャップだった。「14秒?」と聞き直したのは、自分が思った以上に差が開いていたのだろう。しかしウォルフ代表の励ましにも奮起したか、ミディアムのハミルトンはハードのラッセルを1周1秒以上速いペースで追い詰め、最終周に逆転に成功した。
一方3番手シャルル・ルクレール(フェラーリ)は、首位ノリスに25秒以上の大差をつけられていた。
44周目
ルクレール:これだとコンストラクターズは負けなのか?
ブライアン・ボッツィ:そうだ。でも、まだ終わっていない。プッシュし続けるんだ。
しかしルクレールのペースは、コンスタントにノリスより遅い。
ジョゼフ(→ノリス):ルクレールが24周走ったタイヤで、グレイニングで苦しんでる。次の3周が重要だ。
45周目
ボッツィ:よし、リズムに戻ろう。
ルクレール:そのリズムって、どういう意味だよ? リズムに乗って走ってるんだけど。
ボッツィ独特の言い回しに、苛立ちを隠さないルクレール。最終周までに、ノリスとの差は30秒まで広がった。
55周目
ルクレール:ランドとカルロスの差は?
ボッツィ:7秒5だ。
ルクレール:XXX
ノリスは一度も首位を譲らず、ポール・トゥ・ウインを達成。コンストラクターズタイトルを確定した。そして2025年のドライバーズタイトル奪取を、堂々と宣言した。
ジョゼフ:やったぞ。ワールドチャンピオンだ。
ノリス:ホホー!! パパイヤが頂点に立った!! みんな、本当によくやってくれた。誇りに思うよ。特別な1年だった。そして来年は僕の年だ!!
リカルド・アダミ:P2、P2だ。手堅いレースだった。
サインツ:みんな、よくやってくれた。ベストを尽くしたんだけどね。彼らは週末ずっと、僕らよりコンマ1秒速かった。ありがとう、リッキー。ありがとう、フェラーリ。フォルツァ・フェラーリ!
ルクレール:カルロスの最後のシーズンに、タイトルを獲りたかった。一緒にやれて、本当に楽しかった。
ハースは選手権6位こそわずかに届かなかったものの、中団グループでの強さを印象付けた1年だった。
ギャノン:この2年間は最高だった。君のやり遂げてくれたことには、賞賛しかない。
ヒュルケンベルグ:僕こそ感謝だよ。僕をカムバックさせてくれただけじゃなく、これだけの成功を遂げさせてくれた。本当にありがとう。今のまま行くのが大正解だ。このまま突き進んでくれ。
ギャノン:君のことはずっと信じていたし、その思いは今も変わらないよ。
小松礼雄代表:ありがとう、ケヴ。君との7年間は、本当に素晴らしかった。
マグヌッセン:ありがとう!
マグヌッセンの奥さんも、デンマーク語で祝福した。
マグヌッセン夫人:最後のレース、おめでとう。愛してる。あなたの帰還を、娘たちと待っています。
マグヌッセン:ありがとう、ハニー。さあ、これからホリデーだ。