小栗旬(41)が、新型コロナウイルスを事実に基づく物語として日本で初めて映画化する「フロントライン」(関根光才監督、25年6月公開)に主演することが18日、分かった。
2020年(令3)2月3日に横浜港に入港後、日本で初となる新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」に駆けつけた、厚生労働省の災害医療派遣チーム「DMAT(ディーマット)」が未知のウイルスと闘った姿を描く。松坂桃李(36)池松壮亮(34)と初共演。直々にオファーした窪塚洋介(45)とは、98年のフジテレビ系ドラマ「GTO」以来26年ぶりの共演が実現した。
ダイヤモンドプリンセスが横浜港に入港した当時、日本に大規模なウイルス対応を専門とする機関は存在しなかった。その中、世界56カ国、3711人の乗客健康診断と有症状者の検体採取により、10人の感染者が確認され、日本は初めて治療法不明の未知のウイルスに直面することとなった。
DMATは、95年の阪神・淡路大震災を受けて05年に結成された医師、看護師、医療事務職で構成された医療チームで、大規模災害や事故などの現場で、発生から48時間以内から活動、対応できる専門的な訓練を受けている。未知のウイルスに対応できる経験や訓練はされていなかったが、家族を残し、安全な日常を捨てて「命」を救うことを最優先に、急きょ最前線に駆けつけた。
そうしたDMATの戦いを、フジテレビ「コードブルー」シリーズや、福島第1原発事故を題材にした23年のNetflixシリーズ「THE DAYS」を手がけた、増本淳プロデューサー(48)が企画、脚本、プロデュースを務め、手がけた。300ページを超える取材メモから、複数のエピソードを丁寧に脚本にまとめた。映画は、横浜港に入港した20年2月3日から乗客全員の下船が完了した同21日までを描く。
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小栗は、DMATの指揮官・結城英晴を演じる。「当時自分が知らなかった(新型コロナウイルスと)戦った人たちがいるという物語に非常に引き込まれましたし、映画として作るべきものだなと感じた」と出演を決めた理由を語った。撮影後には「日常を取り戻したこの状況の中で、忘れてはいけないかなり大きな出来事だなと思うし、それを映画として届けられるという事は僕たちにとっても挑戦的だった」と強調。できあがった作品を鑑賞し「すごく力のある映画でした。全員が主役の映画になっており、参加できたことを誇りに思います」と自信を口にした。
初共演の松坂については「桃李くんは一緒の現場にいてくれる安心感が強かった」、池松については「とっても尊敬する俳優さんなので目の前で芝居見られてラッキーって思っているくらい」と絶賛。26年ぶりの共演となった窪塚については「若い頃から僕にとってはヒーローみたいな俳優さんなので今回肩を並べさせてもらってやっと願いがかなったみたいな自分にとっては大きな出来事」と振り返った。そして「今回共演した方々は元々リスペクトのある俳優さんばかりなので僕からしたらこんな幸せな場所はない」と撮影を振り返った。
松坂は、小栗演じる結城と対策本部でぶつかり合う厚生労働省の役人・立松信貴を演じた。「映像化して形に残すという事に参加する意義があるなと思い、お話をいただいた時にぜひやらせてください、という思いがあった」とオファーを受けた当時を振り返った。初共演の小栗については「1人1人に対して真摯(しんし)にコミュニケーションを取っていらっしゃるし、現場での立ち姿も含めて、小栗さん全体が作品を包み込もうとする、そういう温かさを持った方。それがすごく結城とリンクする部分がある」と評した。完成した映画を見て「見た方の中に記憶として残り、この映画を心の中で持ち続けられるような作品になってほしいです」と語った。
池松は、地元の岐阜に愛する家族を残し、横浜に駆けつけ、船内で診察を続ける医師のDMAT隊員・真田春人を演じた。出演を決めた理由について「自分がフロントラインに行って何ができるかわからないけれど、少しでもあの時にあった事を追体験するべき」と語った。その上で「それぞれに家族があって、さまざまな背景があって、いろんな思いを持ってあそこに立ってくれていたこと、そういう事が自分の身体を通して浮かび上がってくることを目指した」と役作りを語った。作品を見て「大クラスターに立ち向かった名もなき勇者たちの奮闘にスポットを当て、コロナによって浮き彫りになるさまざまな人間性を映し出し、思いやりや善意という人に与えられた希望を浮かび上がらせ、深く心に残る物語になっていました」と語った。
窪塚は、小栗演じる結城とは東日本大震災でもともに活動し、“戦友”とも呼べる過去を持つ仙道行義を演じた。「旬が声をかけてくれて、新型コロナウイルスの話なんだけど興味があるかって。ちょっと警戒したんだけど台本に感銘を受けて、これはぜひやりたい」と、出演オファーは小栗からだったと明かした。「医師の役はやったことがなかった」とキャリア初の医師役だったことも背中を押した。作品を鑑賞後「とても素晴らしい作品でした。皆で乗り越えたコロナ時代がまだ生々しいので、登場人物たちそれぞれいろんなシーンでたくさんの思いがあふれて涙に変わりました」と、当時と重ねて涙したと明かした。
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▽増本淳プロデューサー きっかけは、まだ私たちの生活に新型コロナウイルスが深く入り込んで来る少し前、2020年3月の初めごろに聞いた、クルーズ船に乗船した医師との会話でした。当時は新型コロナウイルスがまん延するクルーズ船のことを、マスコミが盛んに伝えていましたので、私もわかったつもりでおりました。ところがその医師が語ってくれた船内の実態は、世の中に知られていないことばかりで、驚くべきことや涙なくしては聞くことのできないエピソードの連続でした。日本中の誰よりも先に未知のウイルスに立ち向かうこととなった医師や船員、乗客たちはどれほどの恐怖や葛藤を味わったのでしょうか。また家族は彼らをどんな気持ちで送り出したのでしょうか。私はこの知られざる愛と勇気の物語を一人でも多くの人に共有してもらいたいと考えました。そしてこのたび、多くの人々の協力を得て、こうして皆さまに映画という形でお届けできることになりました。
▽関根光才監督 未知のウイルスがもたらす「パンデミック」というものについて、2020年以前の私たちはほとんど無知であり、その衝撃に、私たちは人生が静止するかのような経験を共にしました。全人類が共有することになる出来事というのは、私たちが生きている間あと何回起こり得るでしょうか?その最初期に起きたとあるクルーズ船での「クラスター」、それもこの初めて経験する恐ろしい事態に突然放り込まれ、立ち向かうことになった最初の医療従事者たちやさまざまな人々の葛藤や愛の実話を、増本淳さんのオリジナル脚本で映画化する…稀有(けう)で、挑戦的で、私たち皆が共有すべき作品になると思いました。そしてこの作品に参加できるなら、それはフィルムメーカーとしての重要な責務だとも感じていました。もし次にパンデミックが起きた時、私たちは一体どうするのか…知られざる物語からひもとける何かが、きっとあると思います。
<映画本編を鑑賞後の俳優陣のコメント>
▽小栗旬(結城英晴役) すごく力のある映画でした。全員が主役の映画になっており、参加できたことを誇りに思います。どのエピソードも実話をベースにしたものなので、とてもドラマチックでした。
▽松坂桃李(立松信貴役) 撮影時は船内がどんな風に描かれていくのかわからないまま、緊張感だけは絶やさずに現場に臨んでいました。何が起きているのかわからない。これは当時、実際に関わっていた人々の誰しもが感じていた感情だったのだと思います。観た方の中に記憶として残り、この映画を心の中で持ち続けられるような作品になってほしいです。
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▽池松壮亮(真田春人役) ダイナミックな映像と人間ドラマが調和し、社会性とエンターテインメント性の両方を備えた素晴らしい映画に仕上がっていました。今作の制作に関わった全員の努力と献身に、そしてあの時この世界を支えてくれた全ての医療従事者の方々の勇気と献身に、心から敬意を表したいと思いました。
▽窪塚洋介(仙道行義役) 手前みそですがとても素晴らしい作品でした。皆で乗り越えたコロナ時代がまだ生々しいので、登場人物たちそれぞれいろんなシーンでたくさんの思いがあふれて涙に変わりました。何げないカットにも心が震えることも多かったです。
◆「フロントライン」 2020年2月、乗客乗員3700人を乗せた豪華客船が横浜港に入港した。香港で下船した乗客1人に新型コロナウイルスの感染が確認されていたこの船内では、すでに感染が拡大し100人を超える乗客が症状を訴えていた。出動要請を受けたのは災害派遣医療チーム「DMAT」。地震や洪水などの災害対応のスペシャリストではあるが、未知のウイルスに対応できる経験や訓練はされていない医療チームだった。対策本部で指揮を執るのはDMATを統括する結城英晴(小栗)と厚労省の役人・立松信貴(松坂)。船内で対応に当たることになったのは結城とは旧知の医師・仙道行義(窪塚)と、愛する家族を残し、船に乗り込むことを決めたDMAT隊員・真田春人(池松)たち。彼らはこれまでメディアでは一切報じられることのなかった最前線にいた人々であり、治療法不明の未知のウイルス相手に自らの命を危険に晒しながらも乗客全員を下船させるまで誰1人諦めずに戦い続けた。
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