不特定多数の人が集まる場所では、しばしば自分勝手な行動をとる人やちょっと変わった人など、いわゆる「迷惑客」が来ることがある。パチンコ店も例外ではなく、特に勝ち負けが渦巻く環境なだけに人間性が如実に表れるケースも多い。
某大手チェーンの営業統括部長のA氏もこれまでに数々の迷惑客を見てきたという。そこで今回は「パチンコ店に現れた信じられない迷惑客」についてお話を聞いてみた。
◆温厚なお客さんが急変…
パチンコ店の会員カードシステムには、一日の投資金額の上限を設定できる機能があることをご存じだろうか。本人よりも家族が設定することが多いらしいが、ある日現れた60代くらいのお客さんは、自ら設定を申し出たという。
「なかなか珍しいことなのですが『油断していると使い過ぎちゃうから上限を5千円に設定してくれ』って自分から言ってきたんです。でも、4円パチンコをメインに打っている人だったので、5千円だとすぐに上限に達しちゃうから、『もう少し高めに設定した方がいいのでは?』とアドバイスしました。しかし『本当に5千円でいい』と言い張るのでその通りに設定したんです」
たしかに、1円パチンコならいざ知らず、4円パチンコで一日の投資上限が5千円では少々心許ない気もするが、自分の性格を踏まえて自ら低額に設定するのは悪いことではないだろう。
「そして案の定、設定してほんの数十分後に投資上限に達したことを伝えるアラートが鳴ったので、そのお客さんのところに行ってお声がけをしたんです。そしたら『うるせー! もっと打たせろ!!』って激ギレされまして……。設定前とは全くの別人になっていました(笑)。たったの数分で人格がまるで変わってしまったので、さすがに怖くなりましたよ。こういう人にギャンブル依存症に関する講演をしてもらうべきですよね。ちなみに、そのお客さんはその後、会員カードを抜いて普通に打っていました(笑)」
◆「この世の終わり」くらいの負けとは?
また、大負けして周りに迷惑をかけるほど怒り狂った客も目撃したことがあるという。パチンコには勝ち負けがある以上、運悪く大負けして怒り出すお客さんが現れることも決して珍しくはない。経済状況や金銭感覚は人によって様々なので、傍から見ると些細な負けと思えても、当人からすると一大事なケースもある。
「ある日、尋常じゃないほど怒りをあらわにしているお客さんがいました。『もう、この世の終わりだ』くらいの勢いで、1時間ほど発狂していたんです。現場のスタッフでは収まりがつかないほど手に負えない状況だったので、自分が対応することになりました。そこからさらに1時間くらい相手の話を聞いたうえで、結局、何を打っていくら負けたのか質問したら『0.2パチで2000円負けた』とのことで……。まぁ、その人にとっては“なけなしの2000円”だったのかもしれませんが、それにしても、その額負けたくらいでそんなに……って思いません?」
◆毎日コツコツ両替をしていくお客さん
7月の改刷によって相当な設備投資を強いられたパチンコ店。新札に対応した機械の導入などが一段落ついたかと思いきや、今になって全く別の影響が出ているとA氏は語る。これも不特定多数の人が気軽に出入りできるパチンコ店ならではの話だ。
「改刷が行われるとよくあるんですが、売上金の中に旧札が大量に混ざることがあるんですよ。新紙幣が出回ると、徐々に旧札が使いづらくなるじゃないですか。それをパチンコ店で新札に変えているんですよね。ここまで大量だと、脱税か何かで貯めたお金なのかなと思ってしまいます」
ちょっとワケありかもしれない旧札をパチンコ店で両替するお客さん。しかし、そういう人は一発も打たずに清算して帰りそうだが……。
「なので、最近お店の台間サンドの設定を変えて、お札を入れたら最初の500円分だけは玉貸しボタンを押さなくても勝手に玉が出てくるようにしました(笑)。全部旧札であっても、普段来ないお客さんがお金を使ってくれるわけなので、決して迷惑客ではないのですが、あまりにも多くなるとウチが怪しまれるかもしれないですからね」
◆アツくなっても忘れちゃいけないこと
筆者がパチンコを始めた頃のホールは、お客さんよりも従業員の方が立場が上だったので、迷惑客が来ても涼しい顔で撃退していたものである。時代の移り変わりと共に環境も変化していくのは世の常であるが、最低限のモラルは変わらないはず。
パチンコは勝負事なだけに、時にアツくなる気持ちもわかるが、この点だけは人として常に心掛けておきたいものである。
取材・文/サ行桜井
【サ行桜井】
パチンコ雑誌『パチンコ必勝ガイド』『パチンコオリジナル実戦術』の元編集者。四半世紀ほど勤めた会社を退社しフリーランスに。現在は主にパチンコや競輪の記事を執筆している。