《独自》【みのもんた・後編】話術の「極意」を継承「しゃべり手とは…」

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2024年12月19日 10:02  TBS NEWS DIG

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TBS NEWS DIG

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アナウンサーや司会、キャスターとして、テレビやラジオで活躍し、朝の情報番組「朝ズバッ!」では、およそ9年にわたりMCを務めた、みのもんたさん。
今回、80歳の傘寿を迎えたみのさんのもとへ、「朝ズバッ!」で共演し、みのさんを「師」と仰ぐ、TBSの井上貴博アナウンサーが訪れ、対談が実現。
本業・アナウンサーの「しゃべり」について、語りあいました。
 

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◆井上アナ:
私も40歳になりましたけど、みのさんと40歳差で、古舘伊知郎さんとは30歳差。

◆みのさん:
古館くん、どうしてるんだろう?

◆井上アナ:
古館さん、元気にしてますよ。「トーキングブルース」やってらっしゃるし、舞台でしゃべるのもやってます。

◆みのさん:
よくしゃべるよね。俺は、あの「しゃべり」はできないもんね。ダーッと一気にしゃべる。

◆井上アナ:
古舘さんが、私のラジオにゲストで来てくださったとき、みのさんの話をしていました。
古舘さんも、みのさんの「しゃべり」ができない。だから、あの「しゃべり」になったんだと。

◆みのさん:
俺、古舘くんの、あの「しゃべり」はできないね。見事なもんだよね。
彼の素晴らしさっていうのは、俺、最近思うんだけれども、考えてしゃべってないんだよね。考えてしゃべるとね、トチるんじゃないのかな。
彼自身が持っている「エネルギー」みたいなものが…石油を燃やすと石油が燃えたエネルギーが出るし、紙を燃やしたら紙を燃やしたときのエネルギーが出るし、材木を燃やしたら材木を燃やしたエネルギーが出るし。全部違うんだよね、彼の場合。僕なんかの場合は、通り一遍なんだよ。あなた(井上アナ)のも感心して見ている。

◆井上アナ:
恐縮です。

◆みのさん:
「何を考えてやってんのかな」なんて思いながら…(笑)

◆井上アナ:
未だに、私、「朝ズバッ!」を見返えします。
やっぱり「間」の使い方が、どんどんテレビでは無くなってきていて、「間」を嫌う。どんどん速さの中でやっていく。
(みのさんは)その中で、あれだけの「間」を…。
本当に大げさじゃなくて、7秒ぐらい黙りますから、みのさん。
もう「(放送)事故、(放送)事故、(放送)事故」というぐらい。あれを何とか。
そのままは出来ないですけど…。

◆みのさん:
十分出来てると思いますよ。「緩急」というのがあるからね。その「緩急」をうまく利用できれば、いいんじゃないの。
「しゃべり手」の「名人」と言われてきた人が、過去に何人もいるけれども、芥川隆行さんは「名人」の1人。「間」の取り方が絶品だったよね。

僕らはラジオの時代だから、本当にラジオの前に座りましたよ。吸い寄せられるみたいに。
「宮本武蔵」という小説があって、それをラジオで「語り」をやっていて吸い込まれたね。見事だったね。
だから、ずいぶん真似をしましたよ。僕、文化放送に入って真似しましたよ。でも、真似しても出来なかった。
(芥川隆行さんは)ドキッとする様な「間」を空ける。一番びっくりしたのはね。「そのとき」といきなり言うのよ。
「そのとき……」ずっと「間」を空けて、「ラジオが壊れたのかな?」と思わせておいて…「武蔵は」。
これは真似した。
「そのとき…」1、2、3、4、5、6、7、8、9、(「間」をあけて)「武蔵は」。
…“なんだよ”と思ったよね。だけど、そこにいっちゃうんだよね。でもね、真似してもできないね。

古舘くんの「しゃべり」は、速射砲のようだけど、彼が「間」をうまく使ったら、それこそ、もっと違う「しゃべり」が出てくるかもしれないよね。

関口宏さん、僕の1年先輩だけど、あの方も、見事だよね。やっぱり関口さんはすごい「しゃべり手」なんだなと思うよね。
「しゃべり」なんだけど、「しゃべってない」んだよ、すごいよね。
そういうの見ちゃうわけ。真似しようとしても、出来ないんだよ。

◆井上アナ:
「しゃべり」に対しての思いを語る、みのさんは顔が変わりますよね。

◆みのさん:
「しゃべり」って大事だもんね。
「しゃべり」でも、丁寧に「お」をつけられると「おしゃべり」。余計な話になっちゃうんだよね。
だから、お金をとるのは「しゃべり」だろうね。いくらしゃべっても「無駄なしゃべり」は「おしゃべり」かな。




◆みのさん:
よくね、「お前はしゃべりすぎだよ」という人がいるけど、「しゃべる」っていうのはね、大変なことですよ。だから、その「しゃべり」で生きていくというのはね、素晴らしいことですよ。

「流暢にしゃべる」のが「しゃべり」じゃないんですよね。
ただ、「流暢」にしゃべれば、抑揚もつくし、リズム感もでてきますから…。
「しゃべる」というのは大事なことだし、いいことだし、奥の深い世界ですよね。

テレビで、色々な方の「しゃべり」を観たり、聴いたりしているけど…同じ。
「2円30銭」のギャランティでしゃべる人も、「10万円」でしゃべる人も、そう変わりがない。
なんで、そうなっちゃったのか、「しゃべり」というものが、なかなかテレビ・ラジオから出てこない時代ですよね。なんでかなぁ…。
今は「無駄話」はたくさんあるみたいだけど…「聞き惚れる話」っていうのは、なかなか…ぶつからないね。

◆井上アナ:
それこそ「おしゃべり」に近いものに、なってしまっているのかも知れないというのは、みのさんの話を伺っていて、今思いましたね。

◆みのさん:
でも、あなた(井上アナ)の「財産」は、たくさんあるはずだよ。

◆井上アナ:
僕は間違いなく、みのさんがアナウンサー人生の「原点」ですね。
 



2010年から3年間、みのさんと「朝ズバッ!」で共演した井上アナ。みのさんから多くを学んでいました。


◆井上アナ:
2019年かな?コロナ禍前にお会いしたときに、みのさんが言ってくださったのが、「井上くん、良いね。観てるよ。でもね、井上くん、『良いね』って言われているうちは、まだまだなんだよ。『井上、手に負えないな。ちょっと勘弁してくれ。』そう言われてからがスタートだから、孤独だよ。戦えよ」と言ってくださったのは、僕の、この5年間を支えてくださった言葉ですね。

◆みのさん:
井上くんの「しゃべり」で言うならば、この間も観てましたけれどもね。もう「完成」していると思うのね。
だから、「完成」している、井上くんの「しゃべり」というのが、あるのですから「もう一つ上」の「完成したしゃべり」が、あるのかどうかというのを追及してみるといいね。
そうすると「もう一つ」違う、「新しい井上流」の「しゃべり」が生まれるかもしれない。

今も「井上流」の「しゃべり」が出ているけれど、もう一つ有名になりたかったら、もう一つはすごいアナウンサーになりたかったら、「井上流」の何かを考えてみるといいね。

簡単なんだよ。本当に簡単に出来ますから。

「そのとき武蔵は…」これだけでも良いんですよ。
「おはようございます。井上です。そのとき武蔵は…な〜んつっちゃって」それだけで良いんですから。
それを出すたびに「バカヤロー いい加減にしろよ」と言われるたびに、やればいい。
そうすると、「あのアナウンサー、何なの?」「あの人は何なの?」「いや、そのうちフリーになってタモリを抜くんじゃないの?」と言われるかもしれない。
「何か一つ」ね、「有る」か「無い」かだと思うよね。
井上くんの「しゃべり」だったら、どんな「しゃべり」があるかって、相当あると思いますよ。
井上くんの場合は、まだまだこれからの人だから
 



みのさんからのアドバイスを深く心に刻んだ、井上アナ

◆井上アナ:
今日お話を伺っていて、まだまだ、みのさんには色々なところで発信していただきたいなというのを感じました。

◆みのさん:
いやー。もう発信はいいね。発信するものも無いしね。
それより、「面白いしゃべり手」に、たくさん出てきてほしいね。

【担当:芸能情報ステーション】

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