一度だけ不倫した妻に「恥ずかしくないんですか?」“赤の他人”が猛攻撃。妻が返した“特大の嫌味”は|ドラマ『わたしの宝物』

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2024年12月19日 16:10  女子SPA!

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木曜劇場『わたしの宝物』第9話より ©フジテレビ(以下同じ)
 夫以外の子を産み、夫には知らせずに夫とともに育てていく「托卵(たくらん)」を描いたドラマ『わたしの宝物』(フジテレビ系、木曜よる10時〜)。12月19日、ついに最終回を迎える話題の作品を、夫婦関係や不倫について著書多数の亀山早苗さんが読み解きます(以下、亀山さんの寄稿)。

◆当事者同士が話し合うこと、第三者にひきずられないことという教訓

『わたしの宝物』第9話は、息づまる展開から始まった。以前参加したフリーマーケットについて話を聞きたいからと莉紗(さとうほなみ)の取材を受ける美羽(松本若菜)と、冬月(深澤辰哉)と対峙する宏樹(田中圭)。冬月を大切な人として美羽を糾弾したい莉紗、大切な人の夫から呼び出されて戸惑う冬月。二組のやりとりが交錯していく。

 それにしても莉紗の美羽への言葉はすさまじかった。

「あなたは結婚していて、夫も子どももいる。それなのに冬月と不倫した。私はあなたが許せません。冬月がどんな思いで苦しんできたか……」
「ふざけんな。何きれいごと言ってんの、気持ち悪い。薄汚いただの不倫でしょ。あなた恥ずかしくないんですか、子どもいるんですよね。みっともない、お子さんがかわいそう」

 ここまで言うか、第三者が、と思ったとき、美羽が反撃に出る。
「さっきから何をおっしゃってるんですか」

◆渾身の皮肉と嫌味を放つ美羽、コップの水をぶっかける莉紗

 そして美羽は、フリーマーケットに誘われただけだと述べ、「それがどうして不倫になるんですか」としらを切り通す。

「よっぽど好きなんですね、冬月さんのこと。嫉妬ですか」
「冬月さんとお話しになったらどうですか。大切な人なんでしょう。それができないからってつまらない嫉妬に私を巻き込まないで。みっともないと思わないんですか」

 あまり感情を表に出さなかった美羽の渾身の一撃である。相手の言葉を逆手にとっての皮肉と嫌味。それに対して、莉紗はコップの水を美羽の顔にぶっかける。

「最低」とつぶやいて去っていく莉紗、ひとり残った美羽は全身が震わせている。闘いのあとの武者震いなのか、莉紗の言葉が全身に刺さったゆえの傷の痛みか。

◆「栞は不倫でできた子どもだった」やっと気づいた冬月は

 そのころ、宏樹と冬月が喫茶店で対峙している。「中学時代以来の再会で、気持ちが盛り上がったのか」と冬月を追いつめていく宏樹。再会したときの彼女が、どれほど傷ついていたか、うまく笑うことさえできていなかったかを語る。それを聞いて怒る宏樹。美羽を追いつめたのは自分のモラハラだとわかっているからだ。

「もう終わったこと」という冬月に「勝手に終わらせるな」と襟首をつかむ宏樹。「栞はどうするんだ」と。

 冬月はこの期に及んでも、栞が自分の子だと気づいていなかったのだ。

 その後、冬月は、今までの美羽や真琴(恒松祐里)とのやりとりを思い出して、ようやくそのことに気づき、戦慄する。

 冬月は再び宏樹に会って、「オレは夏野を救えなかった。彼女を救ったのはあなたです」と断言する。

◆美羽が守りたい、娘以外のたいせつなものは、何なのか

 宏樹は美羽を誘って、ようやくふたりきりで話す機会をもうけた。
「栞を抱いて海に入ろうと思った。栞と親子でいられなくなるくらいなら死んでしまおうと思った」
 衝撃の告白なのだが、美羽は「え」と言ったきり。ここで驚かないのはなぜなのかがわからない。

「あのときからオレ、先に進めない」
 さらなる告白にも、美羽のリアクションは薄い。

 促されて、美羽はようやく冬月とのことを話し始めたが、そこに宏樹への大きな愛情は感じられない。罪悪感ゆえ、がんじがらめになっているということなのだろうが、観ている側にとっては美羽という人間がよくわからなかった。罪を犯したから、言い訳はせず、自らに罰を課しているのだろうか。

 娘の「栞」という名前についても、冬月との思い出がつまった刺繍の栞のことを話してしまうのだが、「死のうとさえ思った」宏樹を、むしろ追いつめているようにしか思えなかった。モラハラ時代の夫への不信感が、彼女をそうさせているのだろうか。彼女が守りたい、栞以外のたいせつなものは、冬月なのか宏樹なのか、あるいは自分自身なのか。

◆「今後、娘との面会は希望しない」身を退こうとする宏樹

 離婚は決定的となり、弁護士が入って粛々と進んでいく。そして美羽はある日、宏樹の弁護士から連絡を受ける。
「最後に3人での面会を希望されています」と。

 宏樹は今後いっさいの娘との面会を希望しないという。言われた日時に、指定された動物園に行ってみると、そこにいたのは冬月だった。
 そのころ、宏樹はスマホから、美羽と栞の写真を次々と削除していた。

 宏樹は身を退こうとしている。夫という立場も、父親という立場も振り捨てて、美羽と冬月が一緒になるべきだと思ったのだろう。あの美羽の告白を聞けば、宏樹がそういう決断をするのはわかりきったことだったのかもしれない。

「たいせつなものってどうしたらいいんでしょうね」と宏樹は喫茶店のマスター(北村一輝)に尋ねる。マスターは胸を指しながら、「ここにしまっておいてもダメージ食らうし……むずかしいね」と答えるしかない。

◆最終回。3人は、それぞれの道を歩き始めるのか

 それにしても、たいせつな人にはたいせつなことをきちんと面と向かって話すことが重要なのだろう。美羽と宏樹ももっと早く話せたら、もっと正直になれたら、現状のようにはならなかったかもしれない。そして第三者に惑わされないことという教訓もある。莉紗や真琴のような、おためごかしの親切やおせっかいには耳を塞いだほうがいいこともある。

 さて最終回。3人は、それぞれの道を歩き始めるのか。宏樹は本当に栞との面会を望まないつもりなのか。今回もせつない演技が光った田中圭演じる宏樹の決断が気になるところだ。
<文/亀山早苗>

【亀山早苗】
フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio

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