【写真】制裁シーンで綿密なリハーサルを重ねる窪塚洋介
◆カモの迫力が炸裂…震えるような恐ろしさ
渡邊ダイスケによる漫画『善悪の屑』と続編の『外道の歌』を実写化した本作。小さな古書店「かもめ店」を営む2人の男、カモ(窪塚)とトラ(亀梨)。一見何の変哲もないさびれた古書店だが、裏では“復讐屋”を名乗る彼らが、耐えきれないほど悲痛な思いを背負った被害者の代わりに、法から逃れた加害者に壮絶な復讐をもって裁きを下す姿を描く。
撮影現場となる、倉庫を利用したスタジオを訪れたのは2024年7月。外は34度にも達する猛暑だったが、この日は真っ暗な倉庫にゾクリとするような異様な空気が流れる中、第3話の撮影が行われていた。今回“復讐屋”のターゲットとなるのは、児童虐待事件の犯人である岸本周平(田中俊介)。岸本は義理の娘・凛を虐待し続け、衰弱死させていた。凛の祖父母から依頼を受けた“復讐屋”は彼を確保し、制裁を下していく。
窪塚演じるカモは、静かな佇まいの中に周囲を圧倒するようなオーラを放っている。トラ役の亀梨はウェーブがかかった長髪で、体にタトゥーを入れた姿も漫画から飛び出してきたよう。カモとトラの同居人となり、“復讐屋”の手伝いをしている奈々子を演じる南も、前髪をビシッとピンで留めた様子まで原作の奈々子そのものだ。ビジュアルの作り込みからも、原作へのリスペクトが感じられた。
そしていよいよ、カモによる拷問がスタート。岸本は縛られ、バスタブに押し込められている。白石晃士監督は、カモと対峙した岸本の戸惑いや怯えを表す目の動きなど、田中のそばへ駆けつけて細かく演出。カモは岸本の前に立っているだけでもとんでもない迫力をにじませていたが、低音ボイスで語りかける声色もさらに恐ろしさを倍増させている。ターゲットだけでなく、視聴者も恐怖を覚えること間違いナシだ。処刑を実行するのはカモであるため、トラと奈々子はそのありさまを少し離れたところから見届けている。撮影の合間に、亀梨は関西弁の練習を繰り返す努力家な一面をのぞかせるとともに、南の緊張をほぐすように会話を弾ませるなど和やかな空気をつくり上げていた。
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◆想像以上にトラ!と驚き
『貞子vs伽椰子』『不能犯』など数々のホラーやミステリーを手掛けてきた白石監督とあって、観る者を震え上がらせる描写は超得意分野。この日も、声のボリュームなど細やかな部分にまで演出をつけ、バスタブに押し込められたターゲットの足がどのような状態になっていると恐ろしく見えるかなど、これまで培ってきた経験を注ぎながら、生々しいシーンを生み出そうとしていた。
「DMM TVオリジナルとしてドラマを作ろうという時に、男の子や男性から盛り上がりが生まれて、そこからさらに女性に広がっていくようなものをやってみたいと思った」という久保田哲史プロデューサーは、「そう思いながら原作やオリジナルなど、いろいろと探している中で出会ったのが、渡邊先生による原作です。白石監督が強い原作愛を持っていたことも含め、これを実写として撮れるのは白石監督しかいない」と全幅の信頼とともに任せたという。白石監督は「実写版としてこれから先も続けていきたいと思っていますし、幅広いお客さんに楽しんでいただくためにも、原作にある人情味やユーモラスな部分もしっかりとピックアップしていきたい」と吐露。攻めるところは攻めつつも「ハードコアだけの作品にならないよう、バランスを大事に臨んでいます」と意気込みを語る。
“復讐屋”コンビのカモ&トラによるコンビネーションが、肝となる本作。久保田プロデューサーと白石監督は、ダブル主演として窪塚と亀梨を迎えられたことは大きな喜びだと口を揃える。「お二人ともキャラクターへの理解度がすばらしい」と舌を巻いた白石監督は、「窪塚さんのカモは、黙っていても迫力がにじみ出てくるし、その奥底にあるやさしさまでが表現されています。またあの声がいいですよね」としみじみ。「亀梨さんのトラは、ビジュアル的にも想像以上にトラ! 関西弁も熱心に練習してくださって、驚くほどのクオリディです。みんなは『白石監督はすぐにOKを出す』と思っているかもしれません。いつもはそんなことないんですよ。お二人の演技があまりにもすばらしいので、すぐにOKを出しちゃう」と楽しそう。
原作者の渡邊とは、脚本開発の段階から密にコミュニケーションを取っているとのこと。白石監督は「渡邊先生はキャラクターをとても大事にされているので、先生が『このまま使ってほしい』というセリフは大事にしながら脚本を進めていきました」と道のりを回想。久保田プロデューサーは「DMM TVを立ち上げて2年。本作がDMM TVを象徴するような作品になってくれると思っています。白石監督にとっても、ターニングポイントになるようなものになってほしいと願っています」と並々ならぬ自信をのぞかせていた。
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撮影後に直撃すると、さわやかな笑顔で応じてくれた窪塚、亀梨、南の3人。拷問シーンなど壮絶な描写にも果敢に挑むドラマだが、窪塚は「これは悪、これは正義など、それぞれに言い分があって誰にも決められない部分もある。善悪について考えさせられるものが各話に盛り込まれている」と原作を読んで突き刺さるものがあったそうで、「自分は幸せに生きている方だと思うけれど、路地裏の一つ向こう側ではこういうことが起きているんだということが、生々しく描かれていた」と敬意を表し、続けて「亀ちゃんとは初共演。ご一緒できたら、楽しいだろうなと思った」と本作に乗り出す上では、亀梨の存在が大きかったと告白する。
一方の亀梨も「窪塚さんとご一緒できるということが、本作をお受けした大きな理由」だと息ぴったりに共鳴。「DMM TVだからこそできる表現もあるのではないかと感じ、そういった作品のテイストにも惹かれました」と話す。「原作をもともと読んでいた」というのが南で、「こういったジャンルの作品をやらせていただくのは初めて。窪塚さん、亀梨さんとご一緒できることもうれしかったですし、新しい挑戦をしてみたいと思いました」と覚悟したことを明かしつつ、実際に撮影に入り「お二人ともやさしくて、リラックスしてお芝居ができています。また、奈々子はゲームが好きな女の子。私もゲームが好きで、奈々子が劇中でやっているゲームも実際にやったことがあるもので。うれしかったです」と役柄に愛情を傾けていた。
役作りに話が及ぶと、窪塚は「カモは今までやったことのないような役。セリフもほとんどなくて、1日に3ワードくらいしか言わないこともある。拷問シーン以外のカモは、寡黙なんです。サングラスをしていて、衣装もワンポーズしかない(笑)。言葉ではないところで芝居をしなければいけないキャラクターで、そういった意味でも新鮮です」と笑顔。役作りでは「重戦車」をキーワードとしているといい、「低いトーンでセリフを話すのもその一環。セリフの分量が少ないからこそ、低音ボイスでの演技ができる。今回はアクションにしろ、セリフの分量にしろ、トラが大部分を担ってくれていて亀ちゃんに甘えさせてもらっています」と感謝しきりだ。
この日見学した拷問シーンはカモが中心となって展開されたが、日常生活を映し出すパートでは、トラの躍動をたっぷりと目にすることができる。亀梨は「作品の光や明るさになれるよう、意識しています」と切り出しつつ、「トラは関西弁で話すので、日々練習しています。夜な夜な、ベッドサイドで方言監修の先生が吹き込んでくださった声を聞きながら過ごしています」とにっこり。「ハードな描写もありますが、カモ、トラ、奈々子の3人で過ごしている時間や、書店にいたりする時には、彼らのかわいらしいやり取りがあって。3人の不器用さや、抱えている過去も見応えがあります。ハードな描写と彼らの人間味というメリハリが、この作品を特別なものにしているのではないかと感じています」となぜ復讐屋になったのかなど、彼らが抱えている背景も注目だと語る。
南の「フレッシュな突破力」にも刺激を受けているという窪塚と亀梨。窪塚は「亀ちゃんの現場に向かう真面目な姿勢に毎日、熱い気持ちにさせてもらっている」、亀梨は「今日撮影していたシーンを見ていてもそうですが、カモがドン!と立っているだけで画として強いものがある」とお互いに高め合うように過ごしている様子。「この3人でカモ、トラ、奈々子をできたことがとてもうれしい」とうなずき合うなど、抜群のチームワークで作品づくりに取り組んでいた。(取材・文:成田おり枝)
DMM TVオリジナルドラマ『外道の歌』は、DMM TVにて配信中。
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