先頃にはFIAのクラッシュテストに合格した“最初の水素レーシングカー”となっている専用車両『Pioneer 25(パイオニア25)』 世界初の水素燃料モータースポーツ競技として、2025年に初年度を迎える計画の『エクストリームH』が、主催者と世界のモータースポーツ統括団体であるFIA国際自動車連盟の間で拘束力のない合意を締結。改めて来季より『FIA Extreme H World Cup(FIAエクストリームHワールドカップ)』として、FIAのワールドカップ格式を採用することが発表された。
前身のワンメイク電動オフロード選手権『エクストリームE』に取って代わり、これまでのバッテリーEV(BEV)から世界初の“水素燃料電池スタックを搭載したレーシングシリーズ”として生まれ変わるエクストリームHだが、2021年の創設以来、そのエクストリームEは地球の環境問題に焦点を当てるとともに、各チームの参加者が男性と女性を均等にすることで男女平等と包摂を推進することに重点を置いてきた。これらはエクストリームHでも引き続き継続されるテーマとなる。
「エクストリームHが、改めてFIAエクストリームHワールドカップになることは、私たち全員にとって非常に誇らしい瞬間だ」と語るのは、おなじみシリーズ創業者兼CEOのアレハンドロ・アガグ。
「モータースポーツ統括団体からのこの認定は、重要な承認の証であり、モータースポーツの最高水準に合わせながら水素の可能性を示す大きな一歩になるはずだ」
創設4年目を迎えていたエクストリームEについて、終盤3戦を無期限で延期してまで水素シリーズエクストリームHの立ち上げに尽力してきたアガグだが、参戦チームの形態として男性/女性のドライバーラインアップはそのまま維持され、シリーズの水素動力への切り替えがクリーンエネルギーソリューションのテストベッドとして機能することが期待されている。
今回の合意形成に際し、FIAは「持続可能な低炭素の未来にとって重要な水素インフラへのさらなる投資を促すと確信しています」と記し、世界的な潮流として脚光を浴びる水素の可能性に着目していることを強調した。
■エクストリームHに「期待している」とFIAスライエム会長
「FIAは、持続可能性と平等の新しい基準を設定する取り組みを支援することに尽力していく」と語ったFIA会長のモハメド・ビン・スライエム。
「このFIAエクストリームHワールドカップが、モータースポーツ、自動車業界、そしてそれ以外の分野にプラスの影響を与え、クリーンエネルギーへの移行を加速し、包括的なレース文化を育むことを期待している」
先ごろにはFIAのクラッシュテストに合格した“最初の水素レーシングカー”となっている専用車両『パイオニア25』は、先代モデルに引き続きスパーク・レーシング・テクノロジーによって設計および製造された車体に、公式燃料電池プロバイダーであるシンビオ社製の水素燃料電池技術を搭載する。
従来のリチウムイオンバッテリーに代わり、出力75kWの水素燃料電池スタックをおもなエネルギー源とし、複合エネルギー吸収衝撃構造を備えたチューブラースペースフレームにFOX製ダンパーを備えた前後ダブルウィッシュボーンのサスペンションを持ち、従来モデルに対しジオメトリーの改善を施すと同時にセンターシートレイアウトを採用。
これらの構成に前後各200kWのモーターは450〜850Vの電圧でシステム最高出力400kw(550hp)を誇り、325kW、850V、36kWhのバッテリーを用いて重量2200kg、幅2.4mのレースカーを0〜100km/h加速わずか4.5秒で走らせることが可能となっている。
「FIAは持続可能な技術の進歩の最前線に立っている。モータースポーツは、持続可能なままでいるために進化し、適応する必要があり、水素燃料の採用は私たちの未来の重要な部分なのだ」と続けたビン・スラヤム。
直近にも生産が開始されたパイオニア25は、来季のFIAエクストリームHワールドカップに10台が参加する予定となっている。