ムファサとスカーの運命は必然だった? 尾上右近&松田元太が語る『ライオン・キング:ムファサ』

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2024年12月21日 13:40  クランクイン!

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クランクイン!

(左から)松田元太、尾上右近  クランクイン! 写真:小川遼
 映画『ライオン・キング』の主人公シンバの父であるムファサの若き日を描いた『ライオン・キング:ムファサ』が20日に劇場公開された。動物たちの王国プライドランドを治め、民から尊敬と愛を集めたムファサは、幼い頃に両親と離れ離れになり、孤児になった過去を持つ。命の危機にさらされる中、ムファサが出会ったのが王の血を引くタカ(※若き日のスカー)。二人は血のつながりを超えた兄弟の絆で結ばれるが、『ライオン・キング』では宿敵同士となってしまう。一体二人に何があったのか…。今回クランクイン!は、超実写プレミアム吹替版声優としてムファサを演じる尾上右近とタカ役のTravis Japanの松田元太にインタビュー。 お互いをけんけん(右近の本名・研佑から)&げんげんと呼び合い、本物の兄弟のような絆を見せた二人に、初挑戦となった吹替えの仕事や、ムファサとタカの運命について話を聞いた。

【写真】尾上右近&松田元太の撮り下ろしソロショット

■オーディションは「怖い」

――オーディションで役をつかんだということですが、どんな風に合格を知ったのですか?

松田元太(以下、松田):ツアー中にメンバーと一緒に知りました。これまでもディズニーのお仕事にいつか挑戦したいなと思っていたし、声優のお仕事も挑戦してみたかったので、決まった時はすごくうれしかったです。メンバーはもちろん、ファンの皆さんが喜んでくれたのが、ものすごくうれしくて。なのでたくさんの方に見届けていただきたいです。

――松田さんはTravis Japanのロサンゼルス公演の前にカリフォルニア ディズニーランド・リゾートにも行っていましたが、ディズニー声優として行くパークはどうでしたか?

松田:普通にいちファンとして楽しんじゃいました(笑)。でも、より身近に感じる部分はあったかもしれません。キャストさんには「日本でタカ役をするの!?」と驚いてもらったので、うれしかったです。世界のディズニーってすごいなと改めて感じました。

――右近さんはいかがでしたか?

尾上右近(以下、右近):決まった時はカレーを食べていました。人の行き来が多くて、広くて、天井も高く、音も響く建物にいて、連絡をもらった時は「あっ」と声が出てしまったのですが、「あっ、あっ、あっ」と声が反響して…(笑)。情報解禁まではなかなか言うことができなかったので、家族くらいまでに留めて報告しました。

オーディションを受ける段階でも、なかなか人には言えなかったんですけど、(尾上)松也さんが『モアナと伝説の海』でマウイ役を演じていらしたので、オーディションの様子をやんわりと聞いたこともありました。その後、イベントで声優発表された後には、松也さんから「これでお前もディズニーファミリーだな」とメッセージをいただきました。尾上家という同じ家で育ってきて、これまでも松也さんがやってきたことを、僕が後から挑戦することが多かったので、僕にとっては兄貴のような存在です。

――オーディションを受ける機会はお二人とも少なくなってきていると思うのですが、だからこその緊張はありましたか?

右近:舞台も歌舞伎もオファーをいただくので、僕はオーディションの経験がほとんどないんです。なので「絶対に受かりたい」という気持ちで、できるだけの準備をしました。でも、受けている最中はうまくいったと感じたのですが、帰り道にはもうダメかもしれない気がして…。結果が出るまでの期間すごくモヤモヤしていました。『ライオン・キング:ムファサ』の広告が流れた時は目をそらし、僕じゃない人に決まってから映画を見に行った時にきっと落ち込むだろうから、その場合のリスクマネジメントまでしました(笑)。オファーをいただく瞬間が一番幸せだと思っているのですが、オーディションを経ての出演決定は、もう一段階うれしさが違いました。

松田:僕もオーディションは受からないものだと思っていて、今までのドラマのオーディションを振り返っても、ダメなんだろうなと悔しさを覚えていました。今回のオーディションの準備は、あまりたくさんのことはできなかったのですが、曲をずっと聴いて、タカに寄せて歌えたらいいなと考えながら、自分なりのディズニー感やライオンみを入れてみようかなと試行錯誤しました。合格した時は自信にもなったし、良い経験ができました。それでもやっぱりオーディションは怖かったです。

――ドキドキのオーディションを経て挑戦した収録は、初めてならではの新鮮さや発見はありましたか?

松田:ものすごく良い経験をさせていただいて宝物のような時間だったんですけど、口の動きのタイミングを合わせなきゃいけなかったりとすべきことがたくさんあって、自分の思い通りの仕上がりになっていないこともあり、「なんでできないんだ。全然ダメじゃん」と悔しい瞬間がたくさんありました。でもスタッフさんにいろいろとサポートしていただきながら、時間はかかってしまったんですけど、ぐちゃぐちゃになりながらも当たって砕けろで何度もトライしました。初めての経験だったのですが、見てくださる人がたくさんいると思うとそんなことは通用しないというか…。だからこそ「絶対に良いものを届けないといけない」という責任があるし、それを果たせたらいいなと思います。

右近:僕も難しいのと飲み込みの遅さがあって、当たって砕けて、何度もやり直す収録でした。秒数に追われて、最初はセリフをただ読み上げるだけになってしまって、画を見る余裕もなく、自分の感覚を出したり、力を抜いたりということもできない時間が長く続きました。それでも監督が付き合ってくださって。いつもお仕事の時には「呼んで良かった」と思ってもらいたい気持ちが強いのですが、今回もなんとかしてやり遂げたいという思いで挑みました。

――ライオンならではの難しさがあったり?

■ムファサの運命は必然だった?

右近:とてもありました! いきなりほえたりするので、ほえるバリエーションも必要で。

松田:あと「息を音にする」の感覚が難しかったです。マイクにバサッと息を吹きかけても割れちゃうので、ちょっと外さなければいけなくて。台本の指示とタイミングを合わせるのも難しかったです。技術面でも勉強になりました。

右近:役として歌うことも難しかったですね。みんなが歌いたくなるような歌なんですけど、しっかりと音程が難しい。ムファサが感じる旅のワクワクと埋まらない孤独の両方が見える感じでというディレクションもあり、その関係性の説得力を持たせるのは難しかったです。

――二人で歌うムファサとタカの“兄弟の絆”を歌った劇中歌「ブラザー/君みたいな兄弟」もステキでした。

右近:めちゃくちゃ良い曲です。いろんな人に共感してもらえると思うし、ムファサとタカの兄弟関係の絆の深さをすごく感じられると思います。幸せな気持ちになれるかもしれないし、一方で切ない気持ちにもなるかもしれない。

――右近さんは、アニメーション版(1994)&超実写版(2019)の『ライオン・キング』でムファサ王を演じた大和田伸也さんから役を引き継いだわけですが、役作りで意識したことはありますか?

右近:何を受け継ぐのかというのは、やり方や声の出し方など技術的なことだけではないような気がしています。歌舞伎もそうなのですが、伝えようとする気持ちや大切に磨き上げている様子を、後輩や子どもたちが見て、後に続く人たちが「僕なりの形はこうだ」と自分たちのやり方で突き詰めていく伝統の村で生きている中で、何を伝統として受け継ぐのだろうと考えた時、それは愛情や情熱だと思うんです。なので今回の大和田さんからも、伝統を受け取らせていただいた感覚に近いです。

とはいえ、大和田さんのムファサにつながるようなイメージは自分の中のどこかに持っていました。立派な大人でも若い頃は今とは違ったりすると思うのですが、人生ってそういうもので、そのプロセスを見せるのが、自分のムファサの役割だと思っています。未完成ながらも完成形につながっていく点線が見えるようなイメージで、自分なりのムファサを演じました。

――松田さんは声優初挑戦ではありますが、タカからヴィランのスカーに変わっていくグラデーションを表現しなければいけない難しさがあったと思います。どのようなアプローチを取ったのでしょうか。

松田:スカーになる瞬間ももちろん大事なのですが、スカーじゃなかったときの時間を改めて考えて、「タカはこういうライオンなんだろうな」とか「今こういう思いで過ごしているんだろうな」と自分の中で解釈しながら声に乗せていく作業をしていきました。その中で、ポロッとスカーの片りんが見えたり、グツグツと煮詰まっていくような恐ろしさを感じさせる部分もあるので、徐々にスカーと化していく感情の変化を大切にしました。スカーになる瞬間は命がけです。

――必見ですね。さて、この物語の後には二人に悲劇の運命が待ち受けているわけですが、演じてみて、この結果は必然だったと思いますか? 避けられるルートがあったと感じますか?

松田:う〜ん。そんな未来があったかもしれないですが…ああいう運命だったんだと思います。

右近:こういうお仕事をさせていただいているのも、縁やタイミングがあるように、自分だけで決められないものってきっとあると思います。それを多分、人は運命と呼んでしまうのではないでしょうか。そういう意味ではムファサとスカーの結末も運命なんだと思います。いくら自分たちが歩み寄ろうと思ったり、関係を良くしようとコミュニーケーションを取っても、思い通りにならないことってあるので、二人の結末はそうならざるを得なかったんじゃないかなと思います。

(取材・文:阿部桜子 写真:小川遼)

 映画『ライオン・キング:ムファサ』は全国劇場で公開中。
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