ヒロインは映画やドラマ、舞台と多方面で大活躍中の古川琴音。監督は『俺物語!!』『総理の夫』の河合勇人です。
では台湾のオリジナル映画と日本版はどう違うのか。それぞれの魅力を見ていきましょう(ネタバレなし)。
『言えない秘密』の物語
【台湾版】音楽学校に転校してきたシャンルン(ジェイ・チョウ)は、校内の旧校舎から聞こえてきた美しいピアノのメロディーに心惹かれます。音をたどって部屋に入ると、女子生徒が古いピアノを弾いていました。
彼女の名前はシャオユー(グイ・ルンメイ)。シャンルンが彼女に曲名を聞くと「秘密」と教えてくれません。その後、二人の距離は縮まり、自転車で一緒に下校したりするように。しかし、ある日を境にシャオユーは学校に来なくなってしまうのです。
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留学先でのトラウマから、音楽大学に復学したもののピアノと距離を置いていた湊人(京本大我)は、旧校舎から聞こえる美しいピアノの音色に心奪われます。音をたどって部屋に入ると、弾いていたのは雪乃(古川琴音)という女子学生。
湊人は曲名を聞きますが、彼女は「秘密」と言って教えてくれません。二人は時々中庭のベンチで会い、自転車を二人乗りしたり、連弾したり。ところが、突然、雪乃は湊人の前に現れなくなるのです。
【台湾オリジナルの物語を大切にした日本版】
日本版は、物語の重要なシーンは台湾版と同じエピソードとして丁寧に描いています。
例えば
・主人公とヒロインの出会い
・ヒロインが曲名を秘密にすること
・自転車の二人乗り、ピアノの連弾
・恋のライバル登場
・ヒロインが旧校舎のピアノの部屋から彼のいる場所まで108歩数える
他にも共通点は多く、日本版には台湾オリジナル映画へのリスペクトを感じます。
台湾オリジナルと日本版の違い
全体的に台湾映画『言えない秘密』を分かりやすく脚色したのが日本版という印象です。台湾版は多くを語らず、余韻を楽しむような作品作りをしていましたが、日本版は湊人と雪乃の運命をきっちり描いています。ではポイントごとに違いを見ていきましょう!ポイント1:シャンルンと湊人
シャンルンは高校生で、湊人は大学生という設定。台湾版は監督・脚本のジェイ・チョウが主演も務め、クールで大人びたかっこいい主人公という印象。
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一方、京本大我はトップアイドルらしく湊人に王子様感をプラス。クールなシャンルンと比べると感情表現が豊かでした。ちなみに日本版を大学生にしたのは京本大我の年齢に合わせて設定を引き上げたそうです。
ポイント2:主人公の家庭環境
シャンルンの父親は音楽教師で厳格なタイプ。湊人の父親はカフェを経営。カフェ内でライブをするほどの音楽好きで明るい性格です。お父さんのキャラクターはだいぶ異なります。
シャンルンの父親は、実はヒロインのシャオユーとつながりがあり、そのことが彼女の秘密に関わっています。湊人の父は息子を優しく見守る系の父親。物語の核心に深く関わっているのは、シャンルンのお父さんのほうでしょう。
ポイント3:二人をつなぐ音楽
主人公とヒロインが出会うきっかけとなったピアノ曲『Secret』ですが、台湾オリジナルと日本版ではまったく違う曲です。日本でリメイクする際、改めて楽曲制作をしたようです。台湾オリジナルの『Secret』は、切なさを感じさせるしっとりとした美しい楽曲。一方、日本版の『Secret』は、かわいらしくポップな雰囲気もある楽曲です。
日本版『言えない秘密』の音楽担当・富貴晴美さんは「メロディを口ずさめるような、みんなに愛される曲」という制作サイドのリクエストを受けて作曲したそうです。台湾版はクラシック要素がふんだんに盛り込まれた楽曲ですが「日本版はクラシック要素を取り入れつつ、より分かりやすい楽曲にした」と富貴さんは語っています。
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台湾版も日本版もヒロインのお母さんは悲しみを抱えている印象があります。しかし、映画における役割は少々違い、シャオユーのお母さんの言動は少し分かりにくいんです。お母さん自身が少し心が病んでいるのかも……。
一方、雪乃のお母さんは、湊人が雪乃に会いたくて尋ねてきたとき、最初は冷たく対応しますが、あることがきっかけで彼を部屋に入れ、雪乃の秘密がつづられた日記を彼に渡します。これをきっかけに雪乃の秘密がひも解かれていくのです。
ポイント5:用務員のおじさんの存在
台湾版ではシャオユーと仲がいい用務員のおじさんが登場します。体が不自由なのですが、いつもシャオユーを助けてくれる優しい人で、彼女の秘密にも気付いているという重要な役です。しかし、日本版ではこの用務員のおじさんは存在しません。雪乃は秘密を知る人物が大学にはいないため、雪乃のほうが孤独かもしれません。
ポイント6:結末
主人公がヒロインの秘密を知ってから結末まで、台湾オリジナルと日本版は違います。両方ともとても切ないのですが、台湾オリジナルは一瞬「え、どういうこと?」と思わずにいられない謎めいた結末。日本版は湊人と雪乃の運命がはっきり示されます。
『言えない秘密』比較まとめ
台湾版は“秘密”そのものよりも、シャンルンとシャオユーが互いを思い合う気持ち、“愛”をとても大切に描いていると感じました。高校生の物語なのに大人っぽくしっとりしているんですよ。日本版は、“秘密”の伏線回収をしながら、湊人と雪乃の互いへの感情を同時に描くことで涙を誘います。シャンルンはシャオユーの名前をあまり呼ばなかったけれど、湊人は雪乃が姿を見せなくなってから、「雪乃、雪乃」と何度も呼ぶんです。彼が名前を呼ぶたびに「大好き」と告白しているよう。恋愛の描き方も日本版は明確でした。
どっちがいいとは言い難く、台湾、日本版、どちらもいい! ぜひ見比べてみていただきたい。ジェイ・チョウと京本大我、グイ・ルンメイと古川琴音、俳優の持つ雰囲気もまったく違うので、キャスト目当てで見ても楽しいと思います。
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(C) 2007 East Empire International Holding Limited.
<参考>
『言えない秘密』公式資料
(文:斎藤 香(映画ガイド))