公正取引委員会は26日、芸能人や芸能事務所の活動に関する実態調査の報告書を公表した。特に、芸能人の移籍・独立が「ご法度」とされる業界の慣習などに基づき、事務所側が妨害する行為は、独禁法上問題になると強く警告した。
調査は、日本のコンテンツ産業を支えるクリエーター個人への適切な収益還元や労働環境是正を図るため、4月からタレントや芸能事務所、テレビ局などを対象に実施した。
移籍・独立に関するヒアリング調査では、事務所側が「仕方ない」と受け止める一方、芸能人側からは「もし辞めたらつぶす。芸能活動はできなくなると告げられた」「退所後もさまざまな嫌がらせを受けた」などの報告があった。
複数の事務所が結託して移籍を制限する事例は確認できなかったが、「引き抜きはご法度」と認識している事務所も多く、公取委は「強い競争制限効果を有する」と警鐘を鳴らした。
テレビ局に対する事務所からの圧力を指摘する声もあった。公取委は2019年、解散した男性アイドルグループ「SMAP」の元メンバーを出演させないよう圧力をかけた疑いがあるとして、旧ジャニーズ事務所を注意している。
退所後に芸名やグループ名の使用を制限する行為が取引妨害に当たる可能性も指摘。「合理的な理由がない限り制限を行うべきでない」とした。
公取委は報告書に沿って、日本音楽事業者協会など芸能事務所の主要4団体に注意を喚起。今後は映画やアニメの制作現場での取引についても実態調査を行う方針だ。