2024年が終わろうとしている。1月1日の能登半島地震、翌2日には羽田で日航機が炎上するなど不穏な年明けとなった。しかし米アカデミー賞に日本の2作が受賞、パリ五輪では海外の夏季五輪では最多となる45個のメダルを獲得、大谷翔平が米リーグ初の「50-50」達成とうれしいニュースも。そんな2024年を振り返り、『週刊女性』『週刊女性PRIME』が目撃してきた今年のニュースをお届けする。
「私も何も知らされてなくて。でも、ちゃんと(撮影を)最後まで頑張るので大丈夫ですよ!」
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11月下旬、篠田麻里子は出演中の連続ドラマ『潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官』(日本テレビ系)の撮影現場で、共演者やスタッフたちに笑顔を見せていたという。しかし、それでも周囲の心配が薄れることはなかったようだ。
事務所社長が4000万円を“横流し”していた
「それもそのはず、篠田さんは所属事務所の倒産危機が報じられたばかりで、撮影現場では“もし突然、篠田さんが現場に来られなくなったらどうしよう”と不安の声が上がっていました。結局、事務所の破産については11月27日に公式サイト上で公表され、それでも篠田さんは撮影を完遂させるとわかって、ひと安心でしたが……」(制作会社スタッフ)
藤原紀香や篠田らが所属する芸能プロダクション『サムデイ』は、11月下旬に破産手続き開始が決定。原因は債務超過に陥ったためで、今後財務整理や債権者への対応が終わり次第、創業から約30年の歴史に幕を下ろすこととなる。
今回の騒動は、芸能界だけではなく、所属タレントたちにとっても“青天の霹靂”だった。さらに、サムデイの“立つ鳥跡を濁す”対応はこれだけにとどまらなかったようだ。
事情を知る舞台関係者が衝撃の内幕を明かす。
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「サムデイは、紀香さんが舞台製作のために関係先企業などからチケット代として募った一時的な出資金を、本人の許諾もなしに“債務の返済”に充てる形で使い込んでしまったというんです。
舞台は紀香さん本人が直近に出演した複数の作品で、その総額は4000万円を超える額になるとか。このチケット代で購入した席は、紀香さんが関係者らのために一般発売と同時にキープしておくためのもので、舞台制作現場では慣例的に行われている当たり前の話です。
しかし、当然舞台終了後には精算を行い舞台を主催した劇場へ返金しなければならないのですが、事務所社長が独断で全額を債務返済のために“横流し”してしまったと。紀香さんがその事実を知らされた時点で、事務所はすでに破産手続きに入っていたため、法的な弁済義務がなくなった可能性があるのです」
サムデイ倒産については公式サイト上に、高橋裕社長名義の文章が公開されたことから騒動となった。
関係者のほとんどが寝耳に水の事態だったが、前出の舞台関係者によれば、紀香は当然、長く苦楽を共にした所属事務所による“裏切り行為”に大きなショックを受けているという。一方で気丈に芸能活動をこなしながら、関係各所へ自ら事情説明とお詫びを行っているのだとか。
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「紀香さんは“自分が仕事をしなければ、社員や若手が給料をもらえなくなるかもしれないと、特にこの1年ほどは舞台にドラマにと働きっぱなし。さらに驚くことに、昨年は数千万円のギャラの未払いまであった。それにもかかわらず、いちばん信頼していたはずの所属事務所が、自分が必死で集めた預かり金に手を付けてしまった状況。
にわかには信じがたい事態であり、まさに裏切られた形です。常識的にも、人道的に考えても決して許されるものではないだけに、すでに雇用関係はなくなっているものの、見かねた元担当マネージャーも紀香さんに寄り添って、関係先へとお詫び行脚に同行しているそうです」(同・舞台関係者)
事務所社長の行為は「法的に横領にあたる」
状況的には紀香こそ“被害者”となりそうなものだが、出資した側からすれば「紀香さんに預けたお金だから」となってしまう。今後の芸能活動についても不透明な中で、紀香自身は「筋だけは通さなければ」と奔走しているのだという。
気になるのは、サムデイの社長が行った行為は法的に「横領」に該当するのかどうか。『弁護士法人・響』の古藤由佳弁護士に話を聞いた。
「“預かり金”は、文字どおり、出資者から“預かっている”だけのお金であり、預かっている人が好きに使っていいお金ではありません。したがって、預かり金を目的外のことに使い込んでしまうと“他人の物”について、所有者(お金の場合は出資者)にしかできない処分を行ったことになり、預かり金を使い込んだ事務所社長に、出資者に対する『横領罪』(刑法252条)が成立します。
横領罪の法定刑は5年以下の懲役です。法人は横領罪の主体にはならないので、サムデイには横領罪は成立しません。そもそも預かり金の目的外の使い込みを、会社の適正な手続きに基づいて決議したわけではないと思うので、これは事務所社長個人の違法行為という評価になると思います」
また、古藤弁護士によると、芸能事務所の社長は、出資者から事業に関する出資金を預かることを仕事の一部として継続的に行う立場にあるため、業務上横領罪(刑法253条)が成立する可能性もあるそう。
「仮に事務所社長が破産したとしても、横領に関する損害賠償請求権は免責されません。これは、破産法が“破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権”について、免責の対象から外しているためです(破産法253条1項2号)。したがって、事務所社長は、他の債務が免責(チャラ)になったとしても、今回の預かり金の出資者に対する返金義務から逃れることはできないと考えられます」
つまり、今回の高橋社長の行為は横領に該当する可能性が高く、会社の破産手続きを行っても、預かり金の出資者たち、ひいては舞台を主催した各劇場への返金は免れることができないということ。
ネット上では、大手芸能プロダクションのサムデイが倒産することについて、疑問視する声が多々あがっている。
所属タレントたちに届いた“一方的すぎる通達”
「サムデイの高橋社長は経営難に陥っても何の手も打たず、ついには親会社にあたる芸能事務所からも見切りをつけられていたんです。親会社も、サムデイのこの危機的状況に手を差し伸べることはなかった。そして債権者の取り立てを恐れたため、破産を申請する土壇場まで、所属タレントやスタッフに倒産の事実を知らせなかったんです。
事務所の看板的存在である藤原さんと篠田さんは、同じマネージャーが10年以上も担当を続けていて、多くの芸能プロダクションから“(マネージャーと)3人でウチに移籍しないか”と持ちかけられています。ただ、そのほかの所属タレントに関しては今後の見通しさえ立たない状況だそう」(芸能プロ関係者)
藤原が集めた預かり金の横領疑惑やタレントたちへのギャラ未払いについて、サムデイに質問状を送付したが、期日までに回答はなかった。
元サムデイ所属のタレントは、匿名を条件に本誌の取材に重い口を開く。
「所属タレントたちの間でも、ここ数年は“経営がうまくいってないんじゃないか”という話は出ていました。この11月は支払日になってもギャラが支払われず、突然弁護士名義で“事務所が倒産する”との通知が届いたときには唖然としましたよ。自分だけでなく、多くの所属タレントが“ギャラ未払いのまま倒産を迎えるんじゃないか”と不安に感じています。
今後の芸能活動については何のフォローもなく、問い合わせ先も“すでに破産手続きが始まっているので事務所ではなく弁護士に”と通達されていて……。いま考えると、月給制だったのが半強制的に歩合に切り替えられたり、社長や専務の意向で突然マネージャーがクビになったり、すでにサムデイから移籍している方がいまだにホームページ上に掲載されていたりと、おかしなことばかりでした。自分の売り上げは、紀香さんや篠田さんに比べれば微々たるものですが、最後の最後までこの仕打ちはあんまりだと思います……」
歴史ある芸能プロダクションの最後は、巨大すぎる負の遺産を看板女優に背負わせるという、あまりにも悲惨な幕引きとなってしまった。
古藤由佳 弁護士 『弁護士法人・響』
「難しい法律の世界をやさしく、わかりやすく」をモットーに、消費者トラブルや借金・交通事故・離婚・相続・労働問題など、民事事件から刑事事件まで幅広く手掛ける。FM NACK5『島田秀平と古藤由佳のこんな法律知っ手相』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組などテレビ・新聞・雑誌等メディア出演も多数。