石破茂首相は、就任後初めて臨んだ2025年度予算案の編成で、自身肝煎りの防災や地方創生に重点を置いた。来年1月召集の通常国会では、少数与党として野党の協力を得つつ、年度内成立に全力を挙げる構え。だが、夏の参院選を見据える野党側の攻勢は必至で、審議の行方は見通せない。
首相は27日、予算案の閣議決定を受けて首相官邸で記者団の取材に応じ、「野党の賛成がなければ成立しない。丁寧に説明し、賛成してもらえる環境を醸成したい」と述べた。
予算案は、首相が意欲を示す26年度中の「防災庁」設置に向け、内閣府防災部門の人員と予算を大幅に拡充。地方創生に関しても、交付金を2000億円に倍増した。
先の臨時国会は、与党過半数割れの状況下で、野党が主導権を握り続けた。自民党が政権奪還を果たした12年以来の「一強多弱」の構図は一変。政府・与党は、24年度補正予算を成立させる過程で、野党に譲歩を重ねざるを得なかった。
首相は、通常国会の予算審議も「低姿勢」で臨む意向。ただ、野党側が参院選に向けて実績づくりを狙う中、政府高官は「何をどこまでのめば賛成を取り付けられるのか」と不安を隠さない。
実際、立憲民主党の野田佳彦代表は記者団に「税金が無駄遣いされないようしっかりチェックする」と表明。その上で「何を予算審議で勝ち取るか戦略的に検討する」と意気込んだ。
国民民主党は、所得税の負担が生じる「年収103万円の壁」見直しに関し、178万円への引き上げを強く主張。教育無償化を求める日本維新の会との協議も緒に就いたばかりだ。
一方、自民の派閥裏金事件を受けた政治改革では、最大の焦点だった企業・団体献金の扱いを、来年3月末まで持ち越した。禁止を迫る立民などと、存続を訴える自民の溝は深く、通常国会で再び争点になるのは避けられない。