<第37回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原音楽出版社協賛)>
「ラストマイル」が石原裕次郎賞に輝いた。
塚原あゆ子監督はTBSの人気ドラマ「アンナチュラル」(18年)「MIU404」(20年)をともに制作した、脚本家野木亜紀子氏とプロデューサー新井順子氏のドラマチームで映画に挑戦し、興収約60億円の大ヒット。「この3人ならエンタメにすると信じて、『作っていいよ』と言ってくださった皆さまに御礼申し上げたい」。
通販サイトの荷物の連続爆破事件をきっかけに、通販サイトと運送業者のひずんだ関係や配達員の労働実態を描き、エンタメに落とし込んで問題提起した。大きなスケールの爆破演出は石原裕次郎さんの作品をほうふつとさせ、「爆破や特効は石原さんがやられていた世界から脈々と続いてきた。文化の礎を作ってくださった」と感謝した。
「アンナチュラル」「MIU404」2作品の人気キャラクターが同じ世界に集結し、事件解決に奔走。日本で「アベンジャーズ」のような作品を実現させたことも評価された。「現代を切り取るときに自然に彼らがいたらいいな。世の中の考えてほしい部分を考えてくれればいいな」と狙いを明かした。
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名映画監督の木下惠介監督が設立したドラマ制作会社・木下プロダクション(現TBSスパークル)に入社。多くの人気ドラマを手がけ、“源流”の映画でヒット作を生んだ。「アンナチュラルから6年やってきて、集大成じゃないけど、そんな映画になった。前の作品も含めて、たくさんの方から愛されていると思うとすごくうれしい」と喜びを語った。【野見山拓樹】
■石原裕次郎賞・選考経過 「ドラマ人気も集め、壮大な作品を作ったことは素晴らしい」(橋本亮氏)「社会的、現代的な邦画が少ない中で配送業を描いた」(福島瑞穂氏)。驚異的な興行成績もあり、第1回投票で「十一人の賊軍」に競り勝ち過半数を獲得。
■着眼点感心させられた
石原裕次郎賞を受賞された「ラストマイル」。今まで誰も目をつけることがなかった物流業界の裏側、「便利で当たり前」に活用している消費者に反し、時間に追われながらこなしていく関係者達の疲弊や苦悩を、倉庫内の荷物が爆発しその真相を追っていく中で明らかにされていく、という着眼点に感心させられました。審査員の何人かは映画を見た後、届けられる荷物を開けるのがちょっと怖くなった、と言っていたそうです。
石原音楽出版社 取締役名誉会長石原まき子
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◆石原裕次郎賞 1987年(昭62)に亡くなった、戦後を代表するスター石原裕次郎さんの遺志を引き継ぎ、日刊スポーツ映画大賞に併設。石原音楽出版が運営に全面協力している。その年に最もファンの支持を得て、スケールの大きな作品に贈られる。賞金は300万円。
▼昨年「THE FIRST SLAM DUNK」で石原裕次郎賞の井上雄彦監督(57) 塚原あゆ子監督ならびに「ラストマイル」の製作に携わってこられた皆さま、このたびは石原裕次郎賞受賞おめでとうございます。いま人の世が大きく変化する時に、過去と未来をまたいで残るものも、また人の手によってつくられる、例えば良い映画がそうなのだと思います。皆さまの今後ますますのご活躍をお祈りいたします。
◆塚原あゆ子(つかはら・あゆこ)千葉大文学部を卒業し、97年に木下プロダクション入社。05年「夢で逢いましょう」で初めてドラマ監督を務め、「下剋上球児」(23年)「海に眠るダイヤモンド」(24年)など人気作品を手がけた。18年「コーヒーが冷めないうちに」で映画監督デビュー。21年に「MIU404」の演出で芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。
◆ラストマイル 流通業界最大のイベント“ブラックフライデー”の前夜を発端とする連続爆破事件が発生する。巨大物流倉庫のセンター長に着任したばかりの舟渡エレナ(満島ひかり)は、チームマネジャーの梨本孔(岡田将生)と事態の収拾にあたる。
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