<第37回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原音楽出版社協賛)>
今年の日本を席巻した「侍タイムスリッパー」が、第37回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原音楽出版社協賛)で14年「永遠の0」以来の作品賞、監督賞、主演男優賞の3冠に輝いた。都内1館での上映から火が付き355館に拡大し、興行収入は25日時点で8億1700万円を記録。私財をなげうち、自主映画として製作した安田淳一監督(57)は「商業映画の質を目指してきた」と語った。
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脚本も手がけた「侍タイムスリッパー」で作品賞、監督賞を受賞した安田淳一監督(57)は「まだまだ伸びしろ、研さんせねばあかんところはある」と謙虚に口にした。一方、日本を沸かせた大ヒットを踏まえ「かつての映画館はこうだったと思うような娯楽作品を作っていきたい」と宣言した。
大阪経済大在学中に8ミリビデオで映像制作を始めた。結婚式の撮影などを手がけて腕を磨き、14年の長編デビュー作「拳銃と目玉焼」を機に製作・配給会社「未来映画社」を設立。撮影、照明、編集、VFX(視覚効果)整音など1人11役を務めたことが話題を呼ぶが「安く上げること以上に、商業映画を目指してクオリティーを上げる方法としてやっている」と強調した。
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今後については、企画開発に5年以上をかけた今回の成功を踏まえ「予算を組んで1年かけて面白い脚本を作る枠組みができるなら、映画会社ともやりたい」と明言。具体的に「『男はつらいよ』をリブート(再起動)したい」と声を大にした。テキ屋というアウトローな一面を持つ寅さんを許容しない時代になってきているが「映画の夢を追いかける、売れない俳優で描けば社会は受け入れてくれるし、同じような物語は書ける。アイデアを聞いてくれはったら、いいけど」と期待した。【村上幸将】
■監督賞・選考経過 「他ジャンルにも挑戦した」(服部宣之氏)と白石和彌監督を推す声もある中、「全てを背負うことに意味がある」(笠井信輔氏)「『侍−』に名を成さしめたメジャー映画は反省してほしい」(寺脇研氏)との声があがり、決選投票で安田監督が制した。
▼昨年「月」が作品賞、同作と「愛にイナズマ」で監督賞の石井裕也監督(41) 受賞というものが作品にとっての絶対の価値ではないと分かっていながら、暗闇の中を手探りで進む作り手にとってはとても大きな励みになります。安田監督、スタッフ、キャスト、全ての関係者の皆さん、このたびは名誉ある日刊スポーツ映画大賞作品賞、ならびに監督賞の受賞、本当におめでとうございます。
◆安田淳一(やすだ・じゅんいち)1967年(昭42)京都府城陽市生まれ。大学在学中から映像制作を始め、8年かけて卒業後は、幼稚園の発表会からブライダル撮影、企業用ビデオ等の撮影業を開始。イベント演出や油そば店の開業など、さまざまな事業をこなす中、14年に自主製作映画を公開。23年に父が亡くなったことを受け、実家の米作り農家を継ぐ。24年に新藤兼人賞銀賞を受賞。
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