【モデルプレス=2024/12/28】2019年に放送されたTBS系日曜劇場「グランメゾン東京」の完全新作となるスペシャルドラマが12月29日よる9時に放送。主演を続投する木村拓哉(きむら・たくや/52)がモデルプレスらの取材に応じ、今作で重要視したという飲食業界の現状や、自身が演じる尾花夏樹との向かい方について語ってくれた。
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2019年に連続ドラマが放送され、多くの作品ファンを生み出した本作。自分の腕と舌とセンスに絶対的な自信を持ち、料理のためならどんな犠牲もいとわない型破りなフランス料理のシェフ・尾花夏樹(木村)が、女性シェフ・早見倫子(鈴木京香)と出会い、もう一度シェフとして生き直し、周囲と衝突しながらも日本で三つ星レストラン「グランメゾン東京」を作り上げようとする姿を描いた。スペシャルドラマでは、新型コロナウイルスが蔓延し大きな打撃を受けた飲食業界、すべての星を失ってしまった「グランメゾン東京」が再び奮闘する姿を描く。
◆木村拓哉が重要視した飲食業界の現状
― 今回スペシャルドラマのお話を聞いた時の率直な感想を教えて下さい。
木村:非常に嬉しかったです。あのパンデミックさえなければ、もっと早いタイミングで会うこともできたのかなとは思っていました。でも、あの時間が実在していましたし、非常にやりたかったけどやれる状況ではなかったというのがきっと正直なところなのかなって。もう1度話を立ち上げていいならば、そこ(コロナ禍)はなかったことにしたらいけないのではないかと思いました。踏ん張られた方や、別の選択をしてお店を閉めぜざるを得なかった方たちもたくさんいらっしゃっただろうし、そういう選択を強いられてしまった方たちに対しても、“フィクション”という世界ですっ飛ばして描くのはなんか嫌だなと。プロデューサーの伊與田(英徳)さんにも、そういうお話をさせていただいて、今回のスペシャルドラマの脚本に反映した形で作らせていただきました。
― “すっ飛ばしたくない“というのは、コロナ禍の飲食店業界を見て思ったのでしょうか?
木村:見てもそうですし、お料理を作ってお客様に食べていただく、サービス業としてはその流れで終わりですけど、どなたかのために、喜んでもらうために、素敵な時間を過ごしていただくために料理を作るわけで。「どんなお料理を食べれるだろう」「どんな時間が過ごせるだろう」「すごい素敵な時間だった」と思って帰ってくださるお客様がいて、お店とお客の関係性かもしれないけど、料理を考え、作り、提供し、食べていただくことは究極のコミュニケーションじゃないですか。コミュニケーションが取りたくても取れなかった事実は一出演者としてもすごく重要なことだと思いましたし、飲食のお話なので避けて通るのは違うのかなと。シリーズ最初はコロナ禍の前だったので、もう一度彼らがみなさんの前に現れる時に、この間の時間が全くなく「みなさんお久しぶりです」というのもあって構わないとは思うんですけど、やっぱり飲食業界を描く作品には必要なのかなと思いました。
◆木村拓哉“尾花夏樹”演じての気づき
― これまでにも様々な役を演じられていますが、木村さんにとって尾花夏樹はどのような役なのか教えて下さい。
木村:彼を演じさせていただくことによって、料理というエンターテイメントの色々な瞬間に立ち会えましたし、色々な思いにもさせていただきました。「ミシュランガイド東京2025」発表セレモニーで三つ星に選ばれた方たちの屋号を発表させてもらったんですけど、その価値に選ばれるということの名誉だったり、責任だったり、プレッシャーだったり、星を持たれてた方たちは、それを維持する。スペシャルドラマや連続ドラマを監修していただいた「カンテサンス」のシェフ・岸田周三さんが三つ星を取られていて、実際に彼がお店で出しているメニューも「『グランメゾン東京』でぜひお出ししてください」って言ってもらい、使わせていただいているんです。すごく一部分の世界なのかもしれないですけど、その一部分を尾花をやらせてもらうことによって、味わうこともできるし、1人で味わってはいないので、共演者、スタッフももちろん、撮る人・撮られる人が1つのチームになって煮詰めていくような感じは楽しかったです。
自分もこのような役をやらせていただく前までは、正直ミシュランって聞いても「タイヤですよね」という方が解釈として強かったんです。こういう作品で時間を過ごさせてもらうと、ミシュランの響きも違う響きになってくるし、その世界において特別なことというのも、こういうお話をやってない限り、一切興味もなかっただろうなと思います。作品と通してものすごい熱量と、ものすごいモチベーションとストレスと向き合ってる方たちの存在も知ることができました。
ある意味、食べる前の「いただきます」がちょっと変わったかもしれないです。添え物の野菜から何にしても、全ての命をいただいてる。個人的に非常に面白い、価値のある1つの作品ですし、共演者もスタッフも僕にとっては宝物の1つになったなと思います。
― 調理シーンは実際に作られていたそうですが、木村さんご自身も召し上がっていたのでしょうか?
木村:味は全部あたります。だから、変な感じでした。「はい、スタート!」「はい、カット!」って言ったら終わりの世界なんだけど、みんな「いや…」って料理の感想を言って。あなた別に料理人じゃない。出演者として、俳優としてやってるんだよね?って(笑)。それは倫子さんも同じで、鈴木京香のはずなのに、カットがかかっても「いや、どうかしら」って(笑)。変な現場になっていました。味をあたってお芝居で「美味しい」にすればいいのに、本当に美味しくないと嫌だというか。コロナ禍の前に京ちゃん(鈴木)と一緒にパリでロケさせていただいてる時も、撮影が終わって食事を共にした時に「うちの店で出すカトラリーとしては、どう思われます?木村さん」って。“うちの店で出すカトラリー”って言ってるのに振ってくる時は、木村さんなんだ、って思っていたんですけど(笑)、感覚とか意識が共存していた現場でした。
◆木村拓哉が金髪にした理由
― 連続ドラマ・スペシャルドラマは岸田周三シェフ、映画「グランメゾン・パリ」(12月30日公開)は小林圭シェフが監修していますが、尾花夏樹という役を構築するにあたって、お二人から影響を受けたことはありますか?
木村:岸田シェフに関しては「グランメゾン東京」という話を作らせていただく時に、ものすごい大きな太い柱になってもらったなと。「カンテサンス」のシェフの岸田さんなんですけど、共存してるというか。「ミシュランガイド東京2025」発表セレモニーでも、グランメゾンのスタッフが三つ星を取ったという感じで、壇上に上がってくる彼をずっと見ていました。
― 金髪にしたのは小林シェフが金髪だからなのでしょうか?
木村:蓋開けてびっくりしました。僕は(小林シェフの)画像検索をしていなかったんですよ。そういう人がパリにいるというのは耳にしていたし、今度は彼が映画『グランメゾン・パリ』の監修をしてくれると聞いて「へ〜、すごいじゃん」と思ってました。先にスペシャルの方を構築するにあたって、台本を読ませていただいた時に「すごく面白いじゃん」「早くやろうよ」ってなっていたんですけど、尾花はどうなってんだろうって思って。「あの時のまんまだね」って感じではないだろうなと。いつもお世話になっているヘアサロンに行って、髪型について相談したら 「思い切って全頭いっちゃいましょうよ!」って(笑)。「1回、監督に確認していい?」って塚原(あゆ子)さんに連絡したら「見てみないとわかんないですね」って言われて。スタッフにも伝えて、初の全頭になりました。
衣装合わせに行ったら、みんな「はぁ〜」って完全に不評の顔をしていると思っていたら、その中の何人かが「これですか?」って見せてきたのが圭の写真だったんです。「こいつ金髪なの!?」って(笑)。パリにいる彼が取った選択として、別になしではないのかなと思いました。日本はファッションにしろ、外見の容姿にしろ「今こういうのが可愛いよね」「今こういうのがきてるよね」という理由で選択だったり、自分を変えてみたりする風潮もあるじゃないですか。でも、パリは「私はこれが好きなの」「私はこれを羽織ってるのが1番心地いいの」という方ばかりで。その中にいる尾花は、どういう選択をしたのかなと思い、そこでパッと見せられた圭の金髪を見た時に「うわ、被った」っていうのは正直思いました。本人と会った時も非常に照れたし、お互いにお互いの頭を一瞬見ました(笑)。
◆木村拓哉“チームグラメ”に感謝
― スペシャルドラマでの尾花夏樹をどのように捉えて、何を大切に演じましたか?
木村:尾花は相変わらずの人です。コミュニケーション能力が高い方ではないので、脚本を読んでいて「またそっち通っていくんだ」という思いはありましたけど、「そっち通ってくから結果面白いのか」という部分もありました。倫子さんは倫子さんで、彼女なりのコロナ禍を過ごしお店を守って、守ったからこそ失ったものもあるんだなと。5年弱の時間が経過してますけど、この人(登場人物)たちは、その5年間も各々の時間をしっかり生きてきた人たちなんだろうなというのは脚本を読んでいても感じました。再会という形にはなりますけど、過ぎた時間の隙間は、現場でお会いした時に一切感じなかったです。
― すぐに役を取り戻せた?
木村:その人たちがその場に、そのシチュエーションに、その衣装を着ていてくれるだけで、各々スイッチが入って、同時に僕も“カン”ってスイッチが入ったような感じでやらせていただきました。
― “チームグラメ”が揃ったからこそなんですね。
木村:それはものすごい大きいと思いますし、窪田正孝さんや北村一輝さんといった、また新たな存在、お料理を比喩して言わせていただくと“素材”が加わってくれることによって、出し方が変わったというか。すごくありがたかったです。
― 若手たちの成長も物語の中に描かれていますが、木村さんご自身が若手の方の成長を感じたり、何か影響を受けたりしたことはありますか?
木村:成長を感じ取れない感度の悪いアンテナだったら多分もうやる必要はないと思うし、それぐらいみんな素晴らしく、努力をしたり、行動に移したりしていると思います。僕に対して「ご一緒できて光栄です」という少し特別な感情をいただくことがあるんですけど、逆にそういう相手がいてくれるから一緒に共同作業ができるので、その「光栄です」の上に行ってもらいたいし、作業が終わった後に「こいつ結構つまんないな」というので終わったら最悪なので、それが影響なのかなと思います。
― ありがとうございました。
(modelpress編集部)
◆木村拓哉(きむら・たくや)プロフィール
1972年11月13日生まれ。東京都出身。近年の主な出演作は、テレビ朝日系ドラマ「未来への10カウント」(2022年)、映画「レジェンド&バタフライ」(2023年)、テレビ朝日系開局65周年記念木曜ドラマ「Believe −君にかける橋−」(2023年)、フジテレビ系ドラマ「風間公親−教場0−」(2023年)など。2024年12月30日より映画「グランメゾン・パリ」が全国公開。
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