日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。まさかの実話! 治安も学力も最底辺の学校で起きた奇跡の逆転劇
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『型破りな教室』評点:★4点(5点満点)
「目標」や「数値」に還元されえない価値
荒れた学校や地域に赴任してきた先生が、その情熱で子どもたちを揺り動かして「学ぶこと」や「考えること」の楽しさに目覚めさせる......という映画はジャンルとして確立しており、たとえば『落ちこぼれの天使たち』(88年)や『暴力教室』(55年)、『コンラック先生』(74年)、はたまた『いまを生きる』(89年)などがよく知られている。
必ずしも環境が「荒れて」いなくても、生徒が無気力だったり教育について周囲の理解が得られないケースもある。実話を元にした本作の舞台はメキシコの小学校で、多くの家庭は貧困に苦しみ、街には犯罪が溢れ、教育行政は腐敗している。
学校にはパソコン一つなく(前に支給されたものはすぐに盗まれてしまったのだ)、子供たちは自分の未来をすでに半ば諦めている。
元になった実話では全体の成績が驚くほど上昇した、ということが強調されているが、本作が描く「教育」の焦点はそこではない。
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さまざまなことについて、その理由や仕組みがどうなっているのか、仮説を立て、考えて、理解できるようになる、という過程そのものが持つ喜びが重要なのであり、それは試験や就職といった「目標」と別に生涯持ち続けることができる財産なのだ。
STORY:麻薬と殺人が日常と化したアメリカとの国境近くのメキシコの小学校。子供たちの生活は犯罪と隣り合わせで、教育設備も教員の意欲も不足し、学力は国内最底辺。そこで、新任教師のフアレスはユニークで型破りな授業を始める
監督・脚本・制作:クリストファー・ザラ
出演:エウヘニオ・デルベス、ダニエル・ハダッド、ジェニファー・トレホほか
上映時間:125分
全国公開中
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