年末年始のお楽しみの一つが、年末年始ならではのドラマ編成。過去に放送されたドラマの一挙放送や総集編ももちろん楽しみですが、人気ドラマの新作スペシャルドラマや、年末年始の特番ドラマも、ドラマ好きには見逃せません。
そこで今回は、「2024年の年末年始に観るべきスペシャルドラマ」3タイトルを、おすすめ順にご紹介します。
※以下、すでに放送されたシリーズのネタバレを含みます。
◆3位『グランメゾン東京』12月29日よる9時〜
まずは2019年放送の日曜劇場で人気を博したドラマから。映画『グランメゾン・パリ』の12月30日公開に先駆けて、12月29日よる9時〜『グランメゾン東京』(TBS系)初の新作スペシャルドラマが放送されます。
『グランメゾン東京』は、木村拓哉演じる型破りなフランス料理シェフ・尾花夏樹と、鈴木京香演じる、絶対的な味覚をもつシェフ・早見倫子がタッグを組み、メンバーを一人ひとり増やしながら、みんなで世界最高の“三つ星レストラン”を目指し奮闘する物語。
◆木村と鈴木が「おじさん」「おばさん」と呼び合う姿は新鮮
木村拓哉が主演というだけで「キムタクドラマ」と言われがちですが、本作は例えるならば『西遊記』のような、仲間集めと目標達成の王道ストーリー。それが、高いエンタメ性をもって描かれています。
“破天荒だけど一本気”というキムタクらしさは残しながらも、木村と鈴木が「おじさん」「おばさん」と呼び合う姿は新鮮でした。監督は、ドラマ『海に眠るダイヤモンド』、映画『ラストマイル』などで今年大活躍だった塚原あゆ子氏が担っており、納得のヒット作! 今回のスペシャルドラマも劇場版も、塚原氏が手掛けています。
新作スペシャルドラマの舞台は、世界各国で新型コロナウイルスが蔓延して飲食店が大打撃を受けたあとの世界。アジア人女性初の三つ星レストランのシェフとなった早見(鈴木)ですが、その後、コロナ禍で店を維持するために翻弄されます。一方で、パリに行ったはずの尾花(木村)は姿を消し、連絡が途絶えていた―――というはじまりです。
連続ドラマに続き玉森裕太、及川光博、沢村一樹らのキャストも続投。そこに今回は、主役クラスの俳優・窪田正孝、北村一輝も参戦するというから楽しみ。12月26日から29日にかけて、深夜から一挙放送SP(※一部地域を除く)も予定されているので、年末はどっぷりグランメゾンの世界に浸れそうです。
◆2位『監察医 朝顔2025新春スペシャル』1月3日よる9時〜
同じく人気シリーズのスペシャルで外せないのが『監察医 朝顔2025新春スペシャル』(1月3日よる9時〜/フジテレビ系)。
2019年に第1シーズンがはじまり、第2シーズンは2クール連続で放送。2021年と2022年にはスペシャルドラマも放送され、今回が3作目のスペシャルとなります。
『監察医 朝顔』は、主人公の監察医・朝顔(上野樹里)が遺体を検案・解剖することでその人の“生きた証”を見つけ出し、残された生きる人々の心を救っていく物語。また、朝顔は東日本大震災で被災した母・里子(石田ひかり)を失った悲しみを抱えています。
父・平(時任三郎)、夫で刑事の真也(風間俊介)、長女のつぐみ(永瀬ゆずな)、次女の里美(中村千歳)ら家族とともに、少しずつその悲しみを乗り越えてきました。
◆サスペンスとホームドラマを融合したような描き方
筆者は、深津絵里が監察医を演じた1998年の名作ドラマ『きらきらひかる』シリーズのファンだったこともあり、はじめは『監察医 朝顔』も死因の真相を究明するサスペンスものだと思っていました。しかし本作は少しだけ違います。
監察医が主人公の物語なので事件は起きますが、それ以上に朝顔の家族とともに過ごす日常にもフォーカスされているのです。仕事と家族を完全に切り離せる人はどれだけいるでしょうか。どちらも影響しあっている。そんなリアルな人間描写に、丁寧な親子関係や夫婦関係の心理描写が重なり、サスペンスとホームドラマを融合したような描き方が、人気の理由かもしれません。
今回のスペシャルドラマでは、父・平が認知症で老人ホームに移り家族4人での暮らしに。自死と思われていた溺死とみられる遺体と、感電死とみられる遺体が続けて見つかり、解剖の結果から2つの事件のつながりが判明。同じ頃つぐみが「じいじ(平)を見た気がする」と不思議なことを話し始め―――という展開。これまでのシリーズを観ていなくても、初見から充分に楽しめる作品です。ぜひこの機会に朝顔ワールドを堪能してみてください。
◆1位『スロウトレイン』1月2日よる9時〜
そして筆者が最も楽しみな作品は、1月2日よる9時〜放送の新春スペシャルドラマ『スロウトレイン』(TBS系)。
秋クールで話題を呼んだドラマ『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)や、今年の大ヒット映画『ラストマイル』を手掛けた脚本家・野木亜紀子氏によるオリジナル作品です。そして演出を、ドラマ『カルテット』、『逃げるは恥だが役に立つ』、映画『罪の声』などを手掛けた土井裕泰氏が担います。
◆実力派の俳優×脚本×演出が描く新時代のホームドラマ
本作は、鎌倉に暮らす3人の姉弟の物語。長女でフリーの編集者・葉子を松たか子が、次女で職も居場所もふらふら変える都子を多部未華子が、何やら姉たちに明かせないことがある末っ子・潮を松坂桃李が演じます。
さらに、野木・土井作品で魅力的な人物を多く演じてきた星野源も出演。姉弟たちの人生に大きく関わる作家・百目鬼見(もめき・けん)を演じます。また日本のドラマ初出演となる韓国の人気俳優のチュ・ジョンヒョクも主要キャストに。
姉弟は、交通事故で両親と祖母を一度に亡くしました。月日は経ち、二十三回忌の法事の帰り道、都子が突然「韓国に行く!」と葉子と潮に告げます。この告白をきっかけに、三者三様の姉弟に、“人生”という旅路の分岐点が訪れる―――という物語。
野木亜紀子氏は、時代をキャラクターや台詞に映し出すことに長けており構成力も抜群です。そして土井裕泰氏は、作品ごとの個性に合わせて魅せ方を作り込むことで、多くのヒット作を生み出してきました。そこに、どんなキャラクターにもどこか品を残し嫌われない国民的女優・松たか子が主演とくれば! 観ないわけにはいきません。お正月から贅沢な一本が観られそうです。
◆『孤独のグルメ』『新・暴れん坊将軍』にも期待
他にも大晦日恒例の『孤独のグルメ2024大晦日スペシャル』(テレビ東京系、12月31日よる10時〜)や、主演・松平健×監督・三池崇史×脚本・大森美香の『新・暴れん坊将軍』(テレビ朝日系、1月4日よる9時〜)も見応えがありそう。年末年始ならではの豪華な作品を、ぜひ楽しんでください。
<文/鈴木まこと>
【鈴木まこと】
雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201