2024年シーズンのF1は、前年王者であるレッドブルの優位性が崩れ、最終戦までコンストラクターズ選手権のタイトル争いが繰り広げられる1年となった。シーズン中は7人の勝者が生まれ、上位勢にはどのチームにも優勝のチャンスがあった一方、中団チームは数少ない入賞のチャンスを確実にものにしなければならず最終戦まで熾烈な争いが続いた。
そんな2024年シーズンに開発されたF1マシンを振り返るこの企画では、今回はコンストラクターズ選手権5位のアストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チームの『AMR24』を取り上げる。
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■AMR24/アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム
アストンマーティンの2024年マシン『AMR24』はテクニカルディレクターだったダン・ファローズによれば、「シャシーデザインはもちろん、ノーズ、フロントウイング、フロントサスペンション、リヤサスペンションを新設計し、あらゆる特性のコースで競争力を発揮できるように“作動領域を拡大”した」マシンとなるはずだった。
しかし、実際には2023年のマシンの進化型という印象は否めず、序盤はトップ4チームについて行けなかった。第4戦日本GPでフロアとサイドポンツーンにアップデートを投入。サイドポンツーンはレッドブルに似た斜めに段差を設けた複雑な形状に変更された。しかし、パフォーマンス的には、中団グループ勢の上位チームとポイント争いを繰り広げる厳しい戦いを強いられた。
ヨーロッパラウンド初戦となったエミリア・ロマーニャGPで大規模なアップデートを実施。ノーズ、フロントウイング、フロアボディ、フロアフェンス、フロアエッジ、ディフューザー、コーク/エンジンカバー、リヤサスペンション、リヤコーナーの9点を投入してきた。
9点のアップデートのなかで特徴的だったのはノーズとフロントウイングのデザイン変更。ショートノーズというコンセプトは維持しつつ、ノーズの先端を2段目のフラップの先まで伸ばし、その先にセパレーターを装着して1段目のメインフラップにつないでいる。ノーズの変更に合わせて、アッパーフラップのデザインとセパレーターの配置も微妙に変更している。
第12戦イギリスGPに1段目のメインフラップのノーズ周辺の形状の湾曲を小さくした仕様を投入。しかし、アストンマーティンのパフォーマンスはなかなか改善されず、マシンの進化は停滞を続ける。
第19戦アメリカGPでノーズの先端を細くし、1段目のメインフラップの中央部分の湾曲を緩やかなデザインに戻した。
さらにアメリカGPではサイドポンツーンやフロアなどにもアップデートを持ち込んだが、パフォーマンスの改善が見られなかったため、続く第20戦メキシコシティGPで新旧仕様を比較テスト。その次のサンパウロGPではフロアのみ、日本GPで使用した仕様に戻すなど、アップデートを巡る混迷は続いた。
最後の2戦でアストンマーティンはアップデートを入れないままシーズンをコンストラクターズ選手権5位で終えた。最終戦アブダビGPでアストンマーティンが採用したサイドポンツーンとフロアは外見的に判断すると、日本GP仕様だったと思われる。コンストラクターズ選手権は同じ5位だが、ポイントは280点から94点に激減。シーズン終盤にテクニカルディレクターを退任したファローズが残したAMR24を、2025年に向けてどう進化させるのか。アストンマーティンの舵取りが注目される。