写真 放送中のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)『おむすび』での演技が好評の山本舞香(27歳)。さらに2024年10月からはドキュメンタリー『ANOTHER SKY』のMCを今田耕司とともに担当と、大車輪の活躍を見せている。同時に2024年は、事務所移籍や結婚など、環境が大きく変わった年でもあった。
そんななか、いま「強い味方がいるのを感じているし、心が安定している」と話す山本に話を聞いた。
◆おじいちゃん孝行がかなった朝ドラ出演
2010年に『鳥取美少女図鑑』Vol.2に登場したことをきっかけに芸能界入りした山本。翌年春には、初代の宮沢りえを筆頭に、坂井真紀、池脇千鶴、蒼井優、夏帆、川口春奈らを輩出してきた“リハウスガール”の14代目に抜擢された。
その後もJR SKISKIといった人気CMやモデルとして注目を集めるとともに、ドラマ『南くんの恋人〜my little lover』『チア☆ダン』『Sister』、映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』『東京喰種 トーキョーグール【S】』など、女優業で実力を発揮してきた。
――11月から橋本環奈さん主演の朝ドラ『おむすび』に出演中です。
山本舞香(以下、山本):朝ドラって、ちょっとお堅いイメージがあったので、私が呼ばれることはないだろうと思っていました。『おむすび』は環奈が主演。また一緒にお芝居できることが、まず嬉しかったですし、朝ドラ出演ということで、私のおじいちゃんもすごく喜んでくれました。
――栄養専門学校編で関西弁を披露しています。
山本:私が演じる矢吹沙智は神戸の子の役なので、方言のプレッシャーがやっぱりありました。セリフの音源をずっとイヤホンで聞きながら、ことば指導の先生にも指導していただきましたが、本当に難しくてすごく苦戦しました。
耳で覚えるのは割と得意です。でも聞いている音と、自分から出てくる音が違ったりして。だけどどう出したらいいのか分からなく悩むこともありました。でも挑戦できたことは良かったと思っています。
――橋本さんとの再共演が嬉しかったとのことですが、映画『カラダ探し』(22)の際、ロケ撮影で泊まっていたホテルの大浴場にも一緒に入るなど、とても仲良くなったとお話されてました。
山本:その後も連絡を取っていましたし、今回も前室でずっと一緒にいました。環奈はすごく努力家。心も体も疲れている状態だったと思いますが、弱音も絶対に吐きません。
メイクやアクセサリーについても全て自分で把握していましたし、現場全体を視野に入れてケアしながら立っている姿を見て、改めて尊敬しました。
――1対1のシーンの感想は。
山本:すごくやりやすかったです。相手が環奈でよかったと心から思いました。
◆私ができることは、すべてに100%で立ち向かうこと
――『鳥取美少女図鑑』登場から15年目です。変わった部分と変わっていない部分を自分で挙げるなら?
山本:変わったことは、笑顔でいようという心がけが強くなったことです。真顔でいると、機嫌が悪そうに思われちゃうんですよ。役によっても波があって、引っ張られて笑顔が出なくなるときもある。そういう時期でも、たとえばバック裏を映されちゃったりすると、それを見た人に態度が悪いと思われてしまう。
そういうこともあるし、極力気を付けて笑顔でいなきゃと思っています。変わらないのは自信がないことです。現場にいる入るときはいつも不安。
――何に対する不安なのでしょう。
山本:現場になじめるかどうか、どんな人たちが集まって、どんな現場になるんだろうと。映画やドラマって、バラバラなところから集まってくるから。「いい現場になるといいなあ」といつも思っています。
――俳優としての仕事は好きですか?
山本:お芝居するのは好きです。現場に入るときは不安ですけど、楽しいし、他人になれる瞬間が好き。
――以前、転機になった作品に『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(18)を挙げていました。
山本:そうですね。ドラマ『死にたい夜にかぎって』(20)や『Sister』(22)もそうです。この前も『Sister』でお姉ちゃん役だった(瀧本)美織ちゃんとご飯を食べました。
撮っているときは、必死にその役と向き合って立っていただけですが、振り返ってみると、ほかの現場も、本当にいい現場だったなと、毎回思います。
――同年代の女優さんにライバル心はありますか?
山本:ないです。だからダメなのかなとも思います。環奈もそうだけど、ほかの人を見ていて「すごいな」と思うことはよくあります。
でもそれって、その人だからできることであって、自分ができることはほかにあるはずと思いながらやっています。
――自分の強みはなんだと感じていますか?
山本:自分を求めてくれたことに対して、100%で返そうと思う気持ちかな。今回の朝ドラはもちろん、ほかの仕事でも何でもそう。全てにおいて、求められたことは、作品に対してもスタッフの方にも、そしてファンの方に向けても、私は100%で応えるだけ。常に100%で立ち向かっています。
◆動物に寄り添うことが、自分の支えになった
――女優業とは別に、10月からはドキュメンタリー『ANOTHER SKY』(日本テレビ)のMCを務めています。今田さんとのお仕事はいかがですか?
山本:ゲストの魅力を引き出すのが本当にお上手な方で、その人の魅力をしっかり引き出しているのを、傍で見ていて「すごいな」といつも感動しています。
私も人間観察が好きなので、ゲストの方の「この人はどういう生き方をしてきて、この場所でこうした感覚、刺激を受けたんだ」といったことを見られるのがすごく楽しいです。同業者じゃない人も多いし、ぱっと見のイメージとはまた違うその人の感性を知ったりできる。人の話をこれだけじっくり聞く機会ってないし、すごく刺激を受けています。
――現在、ほかにも興味を持っていることはありますか?
山本:あと3年で30歳。焦っているわけじゃないけれど、以前からやりたかった保護施設を作るという夢のことも考えると、時間がないなと感じています。
――犬の保護施設ですか?
山本:犬も猫も。私は猫アレルギーなんですけど、でも犬も猫も、ほかの動物たちのことも考えた、その子たちが幸せに過ごせる保護施設を作りたくて。
――どうして動物や保護施設に興味を持つようになったのでしょう。
山本:10代前半でデビューして、仕事をしてきました。自分が思っていることをうまく言えない時期もありました。そんなときに、動物に支えられたんです。動物は言葉が喋れない分、何がしたいのか、怖いのか、痛いのか、お腹が空いているのか、こちらが察してあげる必要がある。
「この子たちも、自分と同じように、言葉にできないけれどいろいろ思っているんだな」と重ねてしまうところもありましたし、私が汲み取ってあげなきゃいけないと感じました。
もともと子どもの頃から犬がいる生活ではあったんですけど、20歳から自分でワンちゃんを飼って一緒に生活するようになって、寄り添うことが、自分自身の大きな支えになりました。
――今年、フレンチブルドックのサニーちゃんが新しく家族に加わったとか。現在は3匹飼われているのですか?
山本:4匹です。サニーとシュリとレニと、あとミアという子がいます。ただ母が溺愛していて、実家にいる子もいます。
◆縁を大事に、芝居の仕事をしっかりやり遂げたい
――ところでSNSが盛んな今、応援だけではない、いろんな声が簡単に入ってきます。そうした言葉にも以前から「平気だ」とコメントしていることが多いですが、正直、平気ではないときもあったのでは?
山本:平気だと言うしかないですよね。自分自身にも「平気だ」と言い聞かせるしかない。もちろん応援してくれる方の声は、以前からずっと力になっています。
――今年は大きく環境が変わった年でもありますね。
山本:弱音を吐ける場所が出来ました。でもだからこそもっともっと努力して、芝居も磨いて、がんばらなきゃと思っているところです。
――最後に、今後、特に大切にしていきたいと感じていることを教えてください。
山本:お芝居を頑張るのは大前提で、人間関係って本当に大切だし、同時に大変なことだと感じています。だからこそ縁って大事だし、そのタイミングで出会う人たちとの関係を大事にしていきたい。そして、幸せだと感じる瞬間をもっと増やしていきたいです。
これまでにも楽しいこともたくさんあったはずなのに、辛かったり嫌なことがあると悪目立ちしちゃうんですよね。でも私は、最後は「最高の人生だったな」と思って終えたい。そのためにも、まずは自分自身、今こうして好きだと感じているお芝居の仕事を、しっかりやり遂げたいと思っています。
【山本舞香プロフィール】
1997年、鳥取県出身。’10年「鳥取美少女図鑑」Vol.2への登場をきっかけに芸能界入り。主な出演作にドラマ『家政夫のミタゾノ』『Sister』、映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』。放送中の連続テレビ小説『おむすび』(NHK)に出演。ドキュメンタリー『Google Pixel presents ANOTHER SKY』の司会もスタート。2024年10月13日、MY FIRST STORYのボーカル・Hiroとの結婚を発表した
<撮影/唐木貴央 取材・文/望月ふみ ヘアメイク/MAKI スタイリング/上田リサ 衣装協力/ALM Reflection muku>
【望月ふみ】
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi