10月クールの連続ドラマ中でも特に大きな盛り上がりを見せた『ライオンの隠れ家』(TBS系)。個性豊かなキャストの中でも一際輝いていたのが、主人公の弟であり、自閉スペクトラム症の特性を持った「みっくん」こと小森美路人(こもり みちと)役を演じた俳優・坂東龍汰であるという主張に、異議を唱える人は少ないだろう。
そんな坂東にとって初となる写真集『日常日和』(ワニブックス)が12月4日に発売された。発売後即重版が決定するなど、注目を集める本書は、北海道から役者を目指すために上京したばかりの当時19歳の坂東が、出会ったカメラマン・松井綾音とともに8年間撮影を続けてきた写真によって構成された写真集。
当時、坂東が暮らしていた家や街、徐々に俳優として頭角を表していくまでの成長記録が収められているほか、胸の内が明かされたロングインタビューも掲載。ニューヨークで生まれ、2〜3歳で北海道に引っ越し、シュタイナー教育によりテレビやインターネットに触れずに広大な自然で育ったという生い立ちのほか、個性豊かな家族について、そして俳優として活躍する今の想いが赤裸々に語られており、坂東の内面にも深く迫った内容となっている。
異例の写真集が生まれるまでの経緯のほか、ブレイク中の現在の心境について、坂東龍汰にインタビュー。
▪️「仲間」だからこそ8年間撮り続けられた写真集
|
|
――坂東さん、エゴサーチしますか?
坂東龍汰(以下、坂東):普段はしないですけどドラマ放送中は感想が多くつぶやかれるので、見ちゃいます。
――視聴者の反応を知るために。
坂東:そうですね。撮影していた時は、制作サイドとしっかり意思疎通をしながら、ひとつひとつのシーンを作っているんですけど、物語を純粋に見てくれている人たちには実際どう伝わっているのか、気になります。
|
|
――写真集を見ても「THE・天真爛漫」と言いますか、世俗的なものに執着がないイメージがあるんですけど、しっかり俳優として視聴者の反応にも気にされるんですね。
坂東:意外と気にしちゃうかもしれないですね。でも、嫌なことが書いてあっても全然気にしないですよ(笑)! あまりにも多かったら流石に落ちこむかもしれないですけど、嫌なことを言われても気にならないメンタルの強さがあるから、エゴサできてるのかもしれないです。
――この写真集の最初のページは、カメラマンの松井さんと出会ってすぐの撮影なのに、笑顔の写真ばかりですよね。その理由は「お互い若くて無邪気だったから」と本書のインタビューには書いてありますが、それにしても「写真を撮らせてほしい」と連絡してきた初対面の人を前に、ここまでリラックスできるのはすごいなと思いました。
坂東:上京したばかりの頃は今よりもっとオープンマインドだったかもしれないですね(笑)。色んな人に会っても心を閉ざすことはなかったと思います。知らない土地で過ごすことに緊張してしまう瞬間もありましたけど、だからこそ誰かと会ってる時間は「一人じゃない」と感じることができて、すごく楽しかった。人と会ってる時はよく笑っていましたね。
――松井さんは出会った当初から「坂東を長く追って写真を撮っていきたい」という想いがあったとのことですが、坂東さんもいつか写真集にしたいという想いがあったんですか?
|
|
坂東:最初に撮影した時は、僕は19歳だったんですけど俳優の仕事をやりたいとは思ってはいましたが、当時は事務所にも所属していなかったんです。もともと写真を撮ることも好きで、撮られることにも興味があったというのも理由の一つですが、まず第一に芸能事務所に送るための写真が必要で撮影していたので「写真集を作りたい」とは全く考えていませんでした。
――なるほど。その後、2017年にドラマ『セトウツミ』でデビューした後も撮影を続けられていますが、事務所に所属したから「もう撮影する意味はない」とは思わなかったのですか?
坂東:そう思うこともありました。デビューした後に色んなカメラマンさんにも出会うようになると、一人のカメラマンにずっと撮られていることに意味を感じなくなった瞬間もあって。「もうそろそろいいんじゃない?」と思ったこともありましたし、松井にも「撮られたくない!」と伝えたこともありました。
――それでも8年間、撮り続けてきた。
坂東:そうですね。撮影を続けられていたのは、松井と僕がカメラマンと被写体の関係でありながら、友達という関係でいることができたから、というのも大きいです。上京してすぐにできた仲間だし、共通の友達もすごく多くて。写真を撮っていない時期も、普通にご飯に行ったり、みんなでキャンプに行ったりしていました。
なにより僕に何度も断られても、松井が「いつヒマ?」「今週撮れる?」と撮影に誘い続けてくれたからこそ、写真集という素敵な形で残すことに繋がっているので、松井にはすごく感謝しています。
▪️坂東龍汰を形成する「子ども」のような好奇心
――写真集には松井さんのインタビューも掲載されていますが、坂東さんの印象について「出会った頃は3歳児かなと思った」と語られています。
坂東:ふふふ(笑)
――同時に「8年間ですごく大人になった」ともお話しされていますね。
坂東:いや、僕の核となる部分は今でも「3歳児」だと思うんですよ。
――変わってない?
坂東:変わってないですね。これは多分死ぬまで変わらないんじゃないですかね(笑)。その「3歳児」の部分は、僕を形成している部分だから、これからもきっと変わらない。
――松井さんは坂東さんのどんな部分を「3歳児」とおっしゃっているのでしょうか。
坂東:僕はもともと色んなことへの興味や探求心が強くあって。小さい子供って、珍しい物を見つけたら「これな〜に?」とか聞いたり、何でも口に入れちゃったりするじゃないですか。僕も人や物への興味や好奇心っていうものが人一倍強いのは色んな人に言われますし、自分でもそう思います。松井と出会った19歳の頃は特に強かったんじゃないかな。
――なるほど。それは今でも変わってない、ということですか。
坂東:年齢を重ねるにつれて、変わっていくこと、変えていかないといけないこともあると思います。19歳だったからできたこと、19歳という年齢だからこそ許されたこともきっとある。「できる/できない」というよりも27歳だからこその客観的な視点も働いてくるし、やっぱり仕事において人との付き合い方は成長していかないといけないし、役者としても常にレベルアップしていかなきゃいけないとは思います。それでも普段の人との向き合い方は、やっぱ当時の19歳の頃から…いや多分、中学生ぐらいから変わってないと思います。
――根っこは変わらない。
坂東:そうですね。そうは思いつつも、年齢を重ねるにつれて物事への探求心や人に対しての興味は、徐々に薄れてしまっているのも感じていて。役者として人を演じる仕事をしているので、他人や自分自身への興味は常に持っていないといけないと思っています。
▪️毎年違う景色を見ることができている
――松井さんは「30歳、40歳、50歳になった坂東も撮り続けたい」と話しています。50歳になった未来の自分をイメージできますか?
坂東:50歳か…。なんとなく30歳前半ぐらいまではイメージはできますけど、50歳の自分がどうなってるかは、全く想像できないですね。
でも僕が関わりのある50代の方々はみなさん、かっこいいんですよね。もちろん生まれた時代が違うから、全く同じ道を歩くということはないと思いますが、先人の方々が築き上げてきたカルチャーはずっと追いかけ続けるんだろうなとは思っています。そして、その時代ごとに生まれる新しいカルチャーの良さをピックアップしながら、良いものを作ることができたらいいなと思っています。
――本書の巻末インタビューでは「もうここ何年も『本当に今が大事で』みたいなことをずっと言ってます」とお話しされていますね。2024年には多くの人に坂東さんが発見されたと思うので、特に今年は「今が大事」と考えらっしゃっているのかなと。
坂東:そうですね、今でも『本当に今が大事』と思っていて。これは毎年一緒なんだな…(笑)。でも、そう思えなくなったら逆に後退していくと思うんです。
年始から「今年は去年より頑張らなくていいや」と思って一年をスタートしたら、きっとそういう年になると思います。僕は毎年「今年はもうひとつ上に行きたい」と思って一年をスタートして、実際に毎年違う景色を見ることができていると思っていて。だからずっとそう思えることは、きっと間違いじゃないんだと思います。
(文=リアルサウンドブック編集部)
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 realsound.jp 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。