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第37回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原音楽出版社協賛)の各賞が、先月27日の配信番組および28日付の紙面で発表されました。動画や紙面でお届けできなかった受賞者、受賞作関係者のインタビューでの喜びの声を、あらためてお届けします。
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塚原あゆ子監督の「ラストマイル」が、石原裕次郎賞に輝いた。TBSの人気ドラマ「アンナチュラル」(18年)「MIU404」(20年)をともに制作した脚本家野木亜紀子氏とプロデューサー新井順子氏のドラマ制作チーム“三銃士”で映画製作に挑戦。興収約60億円の大ヒットを記録した。「この3人ならエンタメにすると信じてくださった。『作っていいよ』と言ってくださった皆さまに本当に御礼申し上げたい」と感謝を込めた。
大手通販サイト「DAILY FAST」の荷物の連続爆破事件が発生し、物流センターや運送業者が混乱する。事件をきっかけに通販サイトと運送業者のひずんだ関係や、末端の配達員の労働実態を描き、観客に提起した。
大きなスケールの爆破演出は石原裕次郎さんの作品をほうふつとさせ、「爆破や特効のチームのノウハウって、石原さんがやられていた世界から脈々と続いてきたと思うんですけど、作り上げたのは多分石原さんなんじゃないかと思います。文化の礎を作ってくださった」と感謝した。
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コロナ禍で通販サイトの利用が増えたことをきっかけに、物流がテーマの作品を製作した。「顔が見えないモノの交換が現実味を帯びて、あのタイミングからなんとなく気になっていたというか、変わったという意識が生まれた」。タイトルの「ラストマイル」は、運送業者から客に届けるまでの最後の区間を指す。映画でも細やかに描かれた「ラストマイル」を走る配達員に対して、「本当に尊い仕事」と思いを込め、さらに「置き配を頼んだときって(配達員に)感謝しているけど言えないし、向こうも感謝をもらっているのかわからない。このふわっとした人間関係が今始まったと思った方がいい」と語った。
「アンナチュラル」「MIU404」の2作品の人気キャラクターが同じ世界に集結。石原さとみ(38)演じる三澄ミコト、綾野剛(42)演じる伊吹藍と星野源(43)演じる志摩一未が事件解決に奔走し、日本で「アベンジャーズ」のような豪華な作品を実現させたことも評価された。「現代を切り取るときに自然に彼らがいたらいいな。世の中の考えてほしい部分を考えてくれればいいな」と狙いを明かした。
塚原監督は名監督、木下惠介監督が設立したドラマ制作会社・木下プロダクション(現TBSスパークル)に入社。多くの人気ドラマを手がけ、今度は“源流”の映画でヒット作を生んだ。「アンナチュラルから6年やってきて、集大成じゃないけど、そんな映画になった。前の作品も含めて、ラストマイルがたくさんの方から愛されていると思うとすごくうれしい」と喜びを語った。【野見山拓樹】
◆塚原あゆ子(つかはら・あゆこ)千葉大文学部を卒業し、97年に木下プロダクション(現TBSスパークル)に入社。05年「夢で逢いましょう」で初めてドラマ監督を務め、「下剋上球児」(23年)「海に眠るダイヤモンド」(24年)など数々の人気作品を手がけた。18年「コーヒーが冷めないうちに」で映画監督デビュー。21年に「MIU404」の演出で芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。
◆ラストマイル 流通業界最大のイベント“ブラックフライデー”の前夜を発端とする連続爆破事件が発生する。巨大物流倉庫のセンター長に着任したばかりの舟渡エレナ(満島ひかり)は、チームマネジャーの梨本孔(岡田将生)と事態の収拾にあたる。
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