俳優の小芝風花さん(27歳)が、公開中のアニメーション映画『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』で王女ヘラを演じています。騎士の国ローハンの運命を託された若き王女を、時に強く時に繊細に演じます。
今年芸能生活13年目を迎えた小芝さんは、今回の声優業のみならず、俳優、バラエティと多方面で活躍中。来年のNHK大河ドラマ「べらぼう」では、主人公の幼なじみを演じます。その現状についてお話を聞きました。
◆「人間の欲望って怖い!」
――まず今回、声優のオファーを受けた時はいかがでしたか?
小芝風花(以下、小芝):うれしかったです! アニメーションの声優をやったことがなかったので、最初は「やった! やります!」という感じでしたが、『ロード・オブ・ザ・リング』というとても人気がある作品のお仕事を、アニメーションの声優をしたことがないわたしが引き受けてもよかったのだろうかと、後からプレッシャーが大きくなっていきました。
――その『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズそのものについては、どのような印象を持っていましたか?
小芝:「人間の欲望って怖い!」ですね(笑)。指輪を見つけたら自分はどうなってしまうのかわからないなと。最初は平和であってほしいなどと思っていても、何でも叶うとなると人の欲望って尽きなくて、どんどん支配したい、上に行きたいとなってしまうんだなって。ファンタジーですがリアルに感じて、欲望って怖いと思いました。
◆「彼女の持っている強さ」を大事に
――今回の新作は、また違う時代の物語になるわけですよね。
小芝:そうですね。200年くらい前の物語で、指輪をめぐって争うお話ではないんです。わたしが演じるヘラは、最初は馬に乗りのびのびと育ち、活発な女の子で芯も強いのですが、やがて自分が民を守らなければいけないと自覚してさらに強い女性になっていきます。本当に憧れるというか、ひとりの女性の成長物語でもあるんです。
――劇中では、その成長の過程も声で表現されていましたね。
小芝:彼女の持っている強さは大事にしました。ヘラの守りたいものが、自分自身なのか民なのか。幼馴染のウルフとヘラの戦いを見ていて、最終的に自分よがりのものではなく、みんなを想う気持ちが最後は強くなっていくなと、観ていて感動しました。ヘルム王との関係ではグッとくるものがあるので、いろいろな方たちに観てほしいです。
――ヘラのキャラクターは、どのように理解しましたか?
小芝:強く芯がしっかりしている。自分がしなければいけないことを、あの時間に迫られている中で、ちゃんと自覚して行動している。しなければいけないことにしっかり向き合い行動するってなかなかできないと思います。今でこそ女性は自由に活躍できると思うのですが、あの時代に第一線で戦える姿は強くてカッコいいなと思って観ていました。
◆「いろいろ悔しいこともあったけど……」
――第一線で戦うという意味では俳優の仕事も似ているかと思いますが、小芝さん自身もヘラと近いところがあるのではないでしょうか?
小芝:ヘラは王女なので比べると背負っているものが違いすぎて演じながら自分と似ているなとかは考えてはいなかったのですが、年齢を重ねていくにつれてお仕事をするときの責任だったり、現場でもどんどん年下の方が増えてきたりするので、いつまでも先輩に甘えていちゃいけないなと、自分がしっかりしなくちゃいけないなと自覚することがここ数年すごく増えてきて。この人について行きたいと思われるような、ヘラのような強い女性にはあこがれます。
――ヘラとの出会いや学びのほかに、本作に関わってよかったなと思うことはありますか?
小芝:ドラマだけでなく舞台、映画もやりたいですし、いろいろなお芝居をしたいと思っていたので今回声優さんのお仕事もさせていただけて。今後この経験が普段のお芝居に活きてくるかもしれないですし、普段やっているお芝居が声のお芝居でも活きてくると思うので、どんどんお芝居の引き出し、幅が広がると思いました。これから先、またアニメーションのお仕事がしたいという夢も広がりました。
――2024年、大変充実されていたと思いますが、来年もNHK大河ドラマの出演もあり、この状況をどのように受け止めていますか?
小芝:とてもうれしいです。今芸能界デビューから13年目で、主役など大きな役柄を任せてもらえたり、最初からポンと叶えられていたわけではないので、その分のありがたみを感じています。昔ご一緒した方が見ていてくださって、「この役を任せてみたい」とまた声をかけてくださることも増えてきて。いろいろ悔しいこともあったのですが、その期間があってよかったなと、今は思えます。
その時その時に積み重ねてきたものが、今活きていると感じる場面が多いので、これからも安心せず、ひとつひとつ真摯に向き合っていきたいなと思っています。
◆プライベートでの目標は“富士山登頂”
――さて20代後半戦ですが、どのように過ごしたいですか?
小芝:まだ体力的にも元気だから、20代はいっぱい働きたいです(笑)。プライベートでは富士山に20代のうちに登ってみたいです。山登りは少し苦手なタイプなのですが、登山が好きな方のお話を聞いたら、やったことがないのに無理と言ってしまうことは違うなと思って。結局やらないかもしれないですが(笑)、一応富士山は目標にしています。
――目標とは別に、直したい課題はありますか?
小芝:興味をもちにくいこと、です。たとえば共演させていただくと仲間になるので、興味が湧くのですが、自分から「この人に会ってみたい!」「これをしてみたい!」と興味を持ちにくいんです。なかなか自分の世界が広がりにくいところがあるので、「好きな人と誰とでも対談できますよ!」となった時も困るんです。
もっといろいろなものに興味を持たなくちゃと思うのですが、なかなか難しくて。でも、興味を持ち、好奇心旺盛になれたら、趣味ができたりしてさらに毎日が楽しめるようになるんだろうなと。なかなか直りにくいだろうけれど、そうなれるように頑張ります。
――とりあえず2025年の目標はそこでしょうか?
小芝:そんなすぐに変われないです(笑)。永遠の課題のような気がしています。今は大事にしたい身内で手一杯なところがありますが、それはそれで大事だけれど、もうちょっとほかにも目を向けたいなと思っています。
<取材・文/トキタタカシ>
【トキタタカシ】
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。