昨年の衆院選で躍進した国民民主党は、「年収103万円の壁」見直しなどで与党への攻勢を強める方針だ。自民、公明両党が衆院で過半数割れした状況を好機と捉え、2025年度予算案への反対をちらつかせて揺さぶりをかける。夏の参院選に向けた実績づくりが狙いで、立憲民主党など他の野党との溝は深まっている。
「123万円のままなら確実に予算案は反対だ」。国民民主の玉木雄一郎代表(役職停止中)は先月25日のインターネット番組で、所得税の課税最低ライン103万円からの引き上げを巡る与党案は不十分だと指摘。178万円とするよう主張した。
予算案の衆院通過には野党の協力が不可欠で、国民民主がキャスチングボートを握る状況を背景に、玉木氏は強気を崩さない。昨年12月に実施された報道各社の世論調査では立民を抜いて「野党第1党」となる結果があったことも後押しする。党幹部は「譲歩する理由はない。交渉が決裂したら『もっと力を与えてください』と参院選で訴えればいいだけだ」と語る。
少数与党となった自民は連携相手として日本維新の会にも秋波を送っている。自民内には「宙づり国会」を脱するため、衆院解散・総選挙で局面を打開すべきだとの声もくすぶる。国民民主関係者は「今の状況はそう長くは続かない。取れるときに政策を取らないといけない」と語る。
先の臨時国会で、国民民主は与党への接近が目立った。24年度補正予算の採決では賛成に回り、25年度税制改正では与党と協議。公明と共同提出した政治資金を監査する「第三者機関」設置法を成立させた。
一方、「政策本位」を掲げて給食費無償化などでは他の野党と連携するが、維新が呼び掛ける参院選1人区の野党候補を一本化するための「予備選」には否定的な立場。玉木氏や榛葉賀津也幹事長は、企業・団体献金禁止や調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開などで立民に批判的な発言を繰り返してきた。
他の野党と一定の距離を置く国民民主に対し、参院選で立民、国民民主両党の候補者調整を求める連合幹部は「自民を利するだけだ」と頭を抱える。「大事なのは参院選まで野党をしっかり分断しておくことだ」。閣僚の一人は国民民主を引き寄せる重要性を指摘した。
税制調査会長協議に臨む公明党の赤羽一嘉氏(右端)、自民党の宮沢洋一氏(右から2人目)、国民民主党の古川元久氏(左端)ら=2024年12月17日、国会内