元テレビ東京アナウンサーで、あざとかわいい言動から「令和のあざと女王」とも称される森香澄さん(29)。フリー転身後の現在は、アナウンサーとしてだけでなく、モデルやタレント、俳優業と活動の幅を広げています。
配信がスタートした、大人たちの“情事と事情”が複雑に絡み合う群像劇のLeminoオリジナルドラマ『情事と事情』では、今を自由に生きたいと考えながら、実は不倫相手に振り回されてしまう女性を演じてベッドシーンにも挑戦。
活躍を続ける森さんに、話を聞きました。
◆ドロドロ群像劇に「演じるのが楽しみだった」
――タイトル通り大人の男女による『情事と事情』が入り乱れる作品ですが、森さんは登場から“情事”のシーンでインパクト大です。挑戦しがいのある役だったのでは。
森香澄さん(以下、森):オファーをいただいたときは、率直に嬉しかったですし、私が演じる玉木まりもは、ピアノを弾くシーンもあるので、そこから私の名前が浮かんでくださったのだろうと思うと、すごく嬉しかったです(※森さんは高校生までピアニストを目指していたほどの腕前)。
挑戦になるだろうというのは、台本からも感じましたが、役との年齢も離れていませんし、感情の変化にいたっては普通の女性だと感じたので、演じるのが楽しみという気持ちが大きかったです。
――実際に飛び込んでみていかがでしたか?
森:感情の変化は普通と言いましたが、ワンシーンの中での移り変わりが大きくありました。
最初は笑っていたけれど、だんだん怒ってきて、バッグを投げたあとに今度は自分自身をあざ笑い始めて、そのあと悲しくなる、みたいな。難しいけれど、やりがいがあると感じました。
あと、確かに絡みのあるシーンもありましたが、ふだんから現場の雰囲気が和(なご)やかでしたし、そういうシーンこそ、より和やかな感じでしたね。
◆刺激的なシーンも和やかに
――相手役の修を演じた金子ノブアキさんとも緊張なく?
森:金子さんがパンケーキを好きなんです。私も好きなので、「食べたいね」とそのお話をしていました。
それから撮影が夏だったので、扇風機を回しながら、「暑いね〜」とよく言ってましたね。作品は結構ドロドロしてるんですけど、それに反比例するような和やかさでした。
実際の撮影では“紐パンを脱がす”といった、言葉にすると刺激的なシーンなどがありましたが、段取りが必要なことが多くて、しかも下品にならず、美しく撮りたいという監督の方向性をみんなで共有していたので、角度やタイミングだったり、かなりしっかりと打ち合わせや準備をして臨んでいました。
◆愛は「求めなくてもくれる人」がいい
――さまざまな“愛”に絡むエピソードや、登場人物たちの葛藤が描かれていきます。森さん自身は“愛”と言われて、どんなことが浮かびますか?「私はこう求めたい」とか。
森:あまり人に求めないかもしれません。というか、基本恋愛においては“求めなくてもくれる人”が好きです。私も求められる前に愛を与えたいと思いますし。
それに恋愛はもちろん、友達や家族でも、求められるということは、足りてないということ。どちらかが求める前に足りていて、飽和しているくらいがいいかなと思います。
◆局アナ時代がんばったSNSは今も自分の大きな財産
――なるほど。それはなかなかハードルが高い意見かもしれません。ところで、先日発表された「Yahoo!検索大賞2024」のスペシャル部門で1位に選ばれたことからもわかりますが、今年は特に大活躍でした。
森:ありがとうございます。
――そんな森さん自身のお話も伺わせてください。局のアナウンサー時代、SNSに自撮りをあげていて、社内の一部の人に「番宣に関係あるのか?」とツッコミが入ったとか。それでも「この衣装を見て気になってくれた人は番組を見てくれます」と切り返したそうですが、現在、会社で自分を貫けなかったり、仕事で自分のキャラを模索している人にアドバイスをもらえませんか?
森:私も会社にいたときは、アナウンサーの仕事という面で、やりたいと言ったことでも「ほかの人のほうが向いている」と言われたり、スケジュールが合わなかったりで、必ずしもできなかったりしました。それも自分の努力ではどうしようもないところがあるので、モヤモヤしていました。
そんなときSNSは自分で頑張れるフィールドだと感じて、やっていった結果、今にもつながっています。SNSは今も自分の大きな財産です。
ただ、当時、アナウンサーの仕事をおろそかにはしていません。会社を辞める時点でレギュラーが7本あったので、レギュラーとそれ以外の番組、番組以外の会社員としての仕事をやった上でSNSもやっていました。
◆今の仕事をやった上で自分のやりたいことを
――なるほど。
森:今やっている仕事ができない、やりたくない、自分に向いていない、楽しくないと感じているなら、それでヤキモキするのではなくて、今の仕事をしっかりやった上で、自分のやりたいことをやることが大事かなと思います。私はプライベートを少し削ってSNSをやっていました。
――まずは与えられた仕事をきちんとやったうえで。
森:そこが一番大事かなと思います。「やりたくないから、向いていないから、それを変える」というのはなかなかすぐにはできないし、難しいことだと思います。
会社員として安定をもらっている代わりに、ある程度ワクワクしないこともやらないといけないかなと思うので、それをやった上で、資格の勉強をするのか、自分で企画を出してみるのか、何か動いてみると自分らしく仕事ができるのかなと思います。
◆具体的な目標はあまり持たないようにしている
――森さんはSNSが今につながったとのことですが、将来的なビジョンはいつも持っているのでしょうか。
森:あまり遠くまでは持たないようにしています。結局、状況も変わりますし、下手にビジョンを掲げると、逆に縛られてしまう。先まで想像してしまうと、自分の想像できるところまでしかいけない。
それってつまらないから。数か月後くらいの小さな目標は立てますが、あまり具体的に先のことは決めないようにしています。
――いろんなことに挑戦していることで、「自分ってこういう面もあるんだ」と新しい発見はありますか?
森:そもそもフリーになったとき、こんなにバラエティ番組にゲストで呼んでもらえるなんて思っていませんでした。自分は普通の人間だと思っていたので、「あざといキャラが立ってるね」なんて言われるとは全く思っていなかった。
それが気づいたら「令和のあざと女王」と言われて「え?」と。自分としては全く予想していなかったことでした。
――SNSで踊ったり可愛い面を見せたい欲求があったとしても、それを「あざと女王」と言われるのは意外だったと。
森:「どうせ見られるなら可愛いほうがいいじゃん!」というくらいの考えでした。テレビに映るなら可愛い方がいいし、どうせ踊るなら可愛く踊ったほうがいい。つまらなさそうにやっているよりは、そのほうが見ている方も気持ちがいいですよね。
◆あざとい=セルフプロデュースができる人
――「あざとい」という言葉自体も、かつては同性からネガティブな意味でつかわれることが多かったかと思いますが、いまは誉め言葉になっている気がします。そこは感じますか?
森:そうですね。昔だったら男性に媚びているイメージだったと思うんですけど、いまはどちらかというと、あざといイコール、セルフプロデュースのできる人と捉えてくれる人が多い気がします。実際、「どうやってセルフプロデュースしてるんですか? どう自己分析してるんですか?」と聞かれます。
――ちなみに現在のご自身を自己分析すると?
森:自分が発言するとき、“目を引く文言だけれど、ちゃんと考えると誰も傷つけてはいない言い回しになっているかどうか”といった線引きは、結構気を付けています。
だから言葉選びは常にしていますね。そこはアナウンサー時代に培(つちかわ)われたものかもしれません。
予想外に炎上することもありますが、それも誰も傷つけていなければ、話題になってくれればいいかと、割とポジティブに考えられます。
◆せっかくなら、「楽しい」と思ってもらいたい
――森さんはサービス精神も強いのかなと、もともとですか?
森:サービス精神というより、その場にいる人が楽しければいいなと思うタイプです。番組においては視聴者ですし、イベントだったらお客さん。
せっかく見てもらうなら、「楽しい、面白い」と思ってもらえるようにしたいという思いは常にありますね。そのためには、若干、自分を削るときもあるかもしれませんが、基本は自然体にしています。
――ありがとうございます。最後に配信中の『情事と事情』へ改めてひと言お願いします。
森:それぞれ自分を貫いて生きているキャラクターたちなので、観る人によって、共感ポイントが全然違うんじゃないかなと思います。まず一度楽しんでいただいて、そこから自分自身の状況が変化してからまた観ると、感じ方がまた変わるような、何度も楽しめる作品かなと思います。
<取材・文・撮影/望月ふみ>
©NTT DOCOMO, INC.
Leminoオリジナルドラマ『情事と事情』は12月5日(木)より毎週木曜0時(全8話)独占配信中。※第1、2話無料配信
【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi