「情熱価格」のブランド再生はなぜ成功した? 「ドン・キホーテ」の商品開発力と人材育成力に迫る!

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2025年01月06日 18:10  BOOK STAND

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『ドンキはみんなが好き勝手に働いたら2兆円企業になりました』吉田直樹
 リーマン・ショックや新型コロナウイルス禍などをものともせず、35期連続増収を記録している総合ディスカウント店「ドン・キホーテ」。運営会社のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの売り上げは2兆円を超えており、これは国内ではセブン&アイ・ホールディングスやイオン、ファーストリテイリングに次ぐ規模だといいます。

 これだけの巨大企業ともなると、物事を進める際に決済や稟議にひどく時間がかかったり、上層部のトップダウンで現場には何の権限もなかったり......なんてこともあるものですが、「ドン・キホーテ」にそれは当てはまらない様子。基本的に稟議はなく、「会議で盛り上がったら、その通り、すぐに意思決定される」(同書より)というから驚きです。

 そんなある意味"好き勝手"な社風のもとで、なぜ「ドン・キホーテ」がここまで成長できたのかを知ることができるのが書籍『ドンキはみんなが好き勝手に働いたら2兆円企業になりました』。同社CEOの吉田直樹氏、上席執行役員の森谷健史氏、そして外部からPB(プライベートブランド)再生を支えた博報堂のクリエイティブディレクター・宮永充晃氏が著者に名を連ねており、この3名が交互に、PBのリニューアルプロジェクトや「ドン・キホーテ」という組織について赤裸々に記しています。

 「ドン・キホーテ」の組織で特徴的な点として挙げられるのが、「各店舗における家電や衣料品といった7つの商品カテゴリーの各買い場担当者は、仕入れも販売も丸ごと任される」というところです。どの商品をどこからいくらで仕入れるか、仕入れた商品をいくらでどのように売るかは担当者の自由。「まだレジもろくに打てないような新人に、月間4000万円を丸投げする会社が他にあるでしょうか?」(同書より)と吉田氏も言うように、この「権限委譲」こそが「ドン・キホーテ」の成長力につながっているのは明らかなようです。

 「ドン・キホーテ」といえば、「ド」のマークが目印のピープルブランド「情熱価格」でも有名。2009年の立ち上げから一時は低迷していたところ、吉田氏がマーケティングの手法を本格的に導入し、リブランディングさせることに成功しました。そうして生まれたのが「素煎りミックスナッツDX」「みかん(身割れ)」「にんにく6倍ドン引きペペロンチーノ」「チューナーレス スマートテレビ」といったヒット商品の数々。「『我々が作らないでどうするんだ!』という使命感を社員全員が共有することでワクワクするような面白い商品が生まれる」(同書より)との言葉には、「ドン・キホーテ」ならではの「顧客最優先主義」が感じられます。

 こうして見ると、社員一人ひとりが自分の裁量で自由に動ける会社であることがうかがえる「ドン・キホーテ」。しかし「自由には責任が伴う」との言葉もあるように、「打ち出の小づちを会社が用意してくれて、それを自由に使える権利を持てるわけではありません」(同書より)。自分で情熱を持って、目標を決めて、仕事をして会社に貢献する――「僕はそういう意味で、ドンキは自由裁量権がある唯一の会社だと思っています」(同書より)と吉田氏は綴っています。

 同書は流通・小売業界などで働いている人はもちろん、就職活動をおこなう学生にも参考になるはず。そして、ドンキに行くたびに感じるあのワクワク感の秘密を知りたい人にもぜひおすすめしたい一冊です。

[文・鷺ノ宮やよい]



『ドンキはみんなが好き勝手に働いたら2兆円企業になりました』
著者:吉田直樹,森谷健史,宮永充晃
出版社:日経BP
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