お笑いコンビ・かまいたちの躍進が凄まじい。レギュラー番組は2024年は『お笑いの日』(TBS系)でMCを務め、さらに2025年の年明けに放送した『新春!爆笑ヒットパレード2025』(フジテレビ系)で司会を担当。また、YouTubeチャンネル『かまいたちチャンネル』も登録者数が235万人(執筆時点)と、桁違いの人気をほこる。多方面で無双状態を繰り広げているかまいたちだが、どこに魅力があるのか? 元テレビ局スタッフがその理由を解き明かしていく。
◆ネタにもロケにも強く、コンビとして完成度が高い
かまいたちは、山内健司と濱家隆一からなるコンビで2004年5月に結成。ネタに定評があり、数々の賞を獲得していて、『キングオブコント2017』(TBS系)で優勝、『M-1グランプリ2019』(テレビ朝日系)では準優勝。確固たる実績を残している。
また、大阪では多くのテレビ番組に出演し、MCだけでなくロケの名人としても知られる。ロケのテクニックを競う番組『外王〜ロケ最強芸人決定戦〜』(フジテレビ系)で2連覇を果たしたこともあり、一般人とのからみも抜群にうまい。濱家は『ZIP!』(日本テレビ系)のパーソナリティ、音楽番組『Venue101』(NHK総合)のMCなど、個人でも司会者として活躍している。ネタもロケも上手でMCもできる、まさに最強のコンビなのだ。
◆クリーンなイメージに加え、危機回避能力が高い
そんな高い能力に加え、「ノースキャンダル芸人」としてもテレビスタッフから評価を受けている。これまでコンビそろって女性関係を含めスキャンダルは皆無。それどころか芸人が定番とするシモの話も2人は率先して話さない。芸人とは思えないほどにクリーンなイメージだ。
危機回避能力が高いことも魅力だ。2024年2月には、冠番組『これ余談なんですけど…』(ABC)で濱家が、薬剤師に対して見識が浅い発言をして炎上したことがある。薬剤師に対するトークで、濱家は「薬剤師さんも医療に携わっているから、医者憧れみたいなのがある」と発言。SNSで薬剤師軽視として炎上したのだ。
この騒動に濱家は即座に反応し、自身の公式Xですぐに謝罪した。自身が薬剤師について認識が間違っていたことを説明し、その上で薬剤師をテーマにした漫画『アンサングシンデレラ』を読み見識を広めたことを明かしている。これにより、結果的に濱家は好感度をあげることになった。
松本人志が「言葉狩り的に、ちょっと何か言ったら炎上させられる」と語るように、テレビ出演する芸人は何かと揚げ足をとられる時代だ。対して、濱家は炎上をしっかりと処理することに成功。テレビスタッフからして、こんなに心強いことはないだろう。
◆ダウンタウン、とんねるずは仲が良いとは…
そのうえで、かまいたちのコンビ仲の良さが、いまの時代のお笑いにしっかりとマッチングしている。特に、仲の良さが垣間見えるのがラジオ番組『かまいたちのヘイ!タクシー!』(TBSラジオ)だ。2人がリスナーからの投稿を受けて、近々で起きたエピソードを話すだけの番組だが、とにかく仲良く楽しそうにトークを展開。男子校の休み時間的な雰囲気を醸し出している。
その雰囲気は、YouTubeチャンネルで配信する動画でも見られる。12月17日には、ただグラコロを仲良く食べるだけの動画を配信。他の動画も同じような構成で、基本的には2人が仲の良いところを視聴者が見るチャンネルである。ほのぼのした濱家と山内の様子をゆったりした気分で見たい人が235万人もいるわけで、正直言えば驚くばかりだ。
仲の良さは令和のバラエティ番組では一番の武器になる。コンビ仲が良いことで知られるサンドウィッチマン・伊達みきおは、自身の番組『証言者バラエティ アンタウォッチマン!』(テレビ朝日系)で不仲コンビとして有名な「さや香」へ本気の説教をして話題となったばかり。コンビ仲が悪いことは致命的だとして、「仕事がこれ以上増えない」と指摘している。
伊達の言葉からも分かる通り、現在のテレビではコンビ仲が良い芸人が主流だ。確かに、サンドウィッチマンをはじめ、千鳥やダイアンなど売れているコンビは仲が良いことで知られる。
これまで、テレビで天下を取ってきたダウンタウンやとんねるず、ウッチャンナンチャンは、信頼し合っていても仲が良いという雰囲気ではなかった。ただ、時代は代わり視聴者は芸人に親近感や安心感を求めるようになっている。だからこそ、かまいたちが持つ柔らかい雰囲気は時代にマッチし、人気を上昇させ続けられるのだろう。
どんな大御所芸人でも、テレビとネット両方で大ブレイクした実績はない。そういった意味で、かまいたちは唯一無二の存在として、お笑いの世界で新しい歴史を作り出すコンビとなっていくかもしれない。
<TEXT/ゆるま小林>
【ゆるま小林】
某テレビ局でバラエティー番組、情報番組などを制作。退社後、フリーランスの編集・ライターに転身し、ネットニュースなどでテレビや芸能人に関するコラムを執筆