日本最大級のグローバル人材に特化した人材紹介会社エンワールド・ジャパンは、外資系企業や日系グローバル企業を中心に人材採用支援を行っています。
今回、日系企業から外資系企業に転職する「外資越境転職」を支援する一環として、外資系企業・日系企業の従業員を対象に「外資系企業に対するイメージギャップ調査」についてアンケートを実施しました。
■求められる英語力にギャップ|6割以上は初級・中級レベル
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日系企業に勤める外資系企業未経験者に「外資系企業で求められる英語レベルのイメージ」について質問したところ、「英語が必要(初級・中級・上級・ネイティブレベル)」というイメージを持つ人の割合が63%となりました。
そのうち、特に「上級以上・ネイティブレベルが必要」というイメージがある人の割合は55%となりました。
次に、外資系企業の従業員に勤め先で実際に必要とされる英語レベルについて質問したところ、実際に「英語が必要(初級・中級・上級・ネイティブレベル)」と回答した人の割合は74%で、そのうち、66%の人は「初級・中級レベル」の英語スキルで業務を遂行していることが明らかとなりました。
これらの結果から、外資系企業で求められる英語スキルは、外資系企業未経験者が想像するほど高くなく、約6割以上の人が初級・中級レベルで対応できていることが明らかになりました。
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■海外経験イメージにギャップ|6割以上が国内で英語力を習得
外資系企業の従業員に「海外経験」について質問したところ、外資系企業で働く従業員の62%が「海外留学や海外での生活経験はない」と回答していることが明らかとなりました。
さらに、「英語の習得方法」について質問したところ、「国内の学校教育(小学校〜大学・大学院)」(39%)、「独学」(33%)、「国内の職場」(28%)が上位を占める結果に。「国内の学校教育(小学校〜大学・大学院)」で習得した人は「海外留学」(20%)で習得した人よりも2倍近く上回っていることがわかりました。
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これらの結果から、外資系企業は海外経験がなくとも国内での学習や職場経験を通じて十分な英語力を身につけている人が多く、現在国内で働く人にとってもチャレンジできる選択肢であることが示唆されます。
■職場の評価制度にギャップ|6割以上が努力や協調性重視の評価形態
外資系企業未経験者に「外資系企業での雇用の安定性に関してのイメージ」について質問したところ、「評価によって減給になる」のイメージが「よくある」「時々ある」と回答した人は51%と、約半数にのぼる結果となりました。
対して、外資系企業の従業員に、実際に評価によって減給になる実態があるかを聞くと、「よくある」「時々ある」が36%で、外資系企業未経験者がもつイメージより15ポイント低い結果となりました。
また、「評価によって降格になる」イメージと実態も同様に質問したところ、同じような結果となったことから、外資系企業の雇用の安定性に対するイメージと実態にギャップがあることが明らかになりました。
外資系企業の評価による減給や降格のリスクは、外資系企業未経験者のイメージよりも厳しくなく、外資系企業も安定した職場環境を提供していることがうかがえます。
さらに、同様に、外資系企業未経験者に「外資系企業の評価基準に関するイメージ」について質問したところ、「成果が出なかった場合でもプロセスや努力、協調性が評価される」イメージが「あてはまらない」「どちらかというとあてはまらない」と回答した人の割合は56%となり、“プロセスや努力”よりも“成果主義”のイメージが強い結果となりました。
一方で、外資系企業の従業員に、実際に成果が出なかった場合でもプロセスや努力、協調性が評価されるかを伺うと「あてはまる」「どちらかというとあてはまる」と回答した方は62%となり、 外資系企業未経験者のイメージを覆す結果となりました。
外資系企業では「成果のみの評価」だけではなく、「プロセスや努力、協調性」も重視される傾向にあることが明らかとなりました。
以上の結果から、外資系企業の雇用の安定性や評価基準について、外資系企業未経験者が抱くイメージと実態にギャップがあることが明らかになりました。
実際には、減給や降格のリスクは外資系企業未経験者のイメージよりも低く、外資系企業も安定した職場環境を提供していることが示唆されます。また、外資系企業では結果だけでなくプロセスや協調性も重視されることがうかがえます。
■国際経営コンサルタント・植田統氏による解説
調査結果は、私自身も納得できる内容が多く含まれていました。
日系企業従業員が外資系企業に対して「プロセスよりも成果が評価される成果主義」という印象を持つ一方、外資系企業従業員が「努力や協調性」を重視する環境だと回答している点が非常に印象的でした。
もともと、ジョブ型の雇用制度を採用している外資系企業は、予め職務の内容やその職務に対する条件が定められたジョブ単位で採用され、採用をした直属の上司によって人事評価がなされます。しかし、多くの外資系企業の日本法人では、人事制度が現地に合わせて調整されていることが一般的です。
そのため、従業員の評価を行うのも外国人上司をもつ幹部クラス以外においては、日本法人のマネージャーが担当するケースが多く、外資系企業と日系企業の評価基準が完全に異なるとは一概には言えない状況です。
私の経験からも、外資系企業が規模を拡大するにつれて、日本市場、商習慣に適用する必要性が高まり、日系企業に近しい環境やカルチャーを持つと感じています。ただし、この現象にはメリットとデメリットがあることも事実です。
メリットは、外資系企業への転職に不安を抱えている方々にとって、環境への適応がスムーズになることです。その環境のもと、外資特有の社歴の長さに依らないキャリアアップのチャンス、自己成長の機会に恵まれるのであれば非常に魅力的です。
一方、デメリットに関しては、外資系企業流の合理的な仕事の進め方、パフォーマンスを上げるためのアグレッシブな姿勢に触れる機会が減少することです。
本国やグローバル拠点と関わることで結果に結びつくタスクがどれなのかを常に見直すプロセスやそのような考え方を優先するアプローチを積極的に学ぶことで、視野を広げることができます。
このような姿勢を保ち続けることで、外資系企業での経験が皆さんの貴重な財産となり、キャリアの発展に繋がることでしょう。
◇解説者プロフィール
植田統氏 国際経営コンサルタント、弁護士、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授 1981年に東京大学法学部卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。ダートマス大学エイモスタックスクールにてMBA取得。 その後世界4大経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・ハミルトン(現・PWCストラテジー)を経て、世界有数のデータベース会社レクシスネクシス・ジャパン代表取締役社長。そのかたわら大学ロースクールに通い司法試験合格。2008年からは、世界NO.1の企業再生コンサルティング会社のアリックスパートナーズでライブドア、JALの再生を担当。 2014年に独立し、青山東京法律事務所を開設。現在は、社会人大学院である名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論を学生に講義し、数社の社外取締役、監査役を務めている。著書に『日米ビジネス30年史』(光文社)、『2040年「仕事とキャリア」年表』(三笠書房)などがある。
■調査概要
調査方法:インターネット調査 調査地域:全国 調査実施期間:2024年10月28日〜11月1日 有効回答数:800名 回答者所属企業:外資系企業400名、日系企業400名 回答形式:単一回答および複数回答形式
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