2025年1月7日からスタートする新ドラマ『マイ・ワンナイト・ルール』(テレ東系ほか、毎週火曜深夜24時30分〜)。本作はなかおもとこ氏の電子コミックが原作となっており、理性や世間の目を気にするあまり、自らの性衝動を満たせずに悶々とした日々を送る33歳の会社員・成海綾が主人公となっている。そんな成海綾役を務めるのが、俳優の足立梨花さんだ。
“女性の性欲”という、いまだ世間でタブー視されがちな題材を扱った漫画のドラマだけあって、演じる上での苦労は相当なもののように思える。なにより、これまで性の話題でいえばデリヘルや夫婦交換といった前衛的な題材を多く扱ってきたテレ東の深夜ドラマだけに、どのような仕上がりになっているのか気になるところ。そこで足立さんに、綾を演じる上での葛藤や作品を通して届けたいメッセージなどの話を聞いた。
◆「わかる」「あるある」と共感できる原作
まず主演のオファーが届いた時の率直な感想を聞くと、「最初は女性の性欲がテーマということで、『どういう風になるんだろう?』という疑問は浮かびました」という。
「とはいえ、オファーをいただいた後に原作を読んだのですが、同年代の女性として共感できる部分が多かったです。私自身『仕事も恋愛も頑張りたい』と思っているものの、どちらも上手くいかずに悩むことがあり、綾に対して何度も『わかる』『あるある』と思いました。テーマこそセンシティブですが、『原作の世界観を守れば良いドラマになる』『女性に寄り添える作品になりそう』と感じました」
たしかに原作では、性について気軽に話せない空気感の他にも、仕事を頑張っても「可愛げがない」と敬遠される葛藤など、女性ならではの苦労がいくつも登場する。“女性の性欲”というインパクトのあるテーマに意識を奪われてしまうが、等身大の女性の悩みを詳細に描いていくドラマになりそうだ。
◆原作漫画が連載中だからこその難しさ
現在、原作漫画の『マイ・ワンナイト・ルール』は連載中であり、まだ完結はしていない。だからこその難しさも口にする。
「読者さんは『この後どうなるんだろう?』と思いながら読んでいると思いますが、ドラマでは原作よりも“先”を描くことになります。もしかすると、ドラマを見た原作ファンの人に『こんな展開は望んでいない!』『綾はそんな人じゃない!』と思わせるかもしれない。
また、原作に描かれている話であれば、綾のその時々の感情は原作を読めばわかるのですが、原作で描かれていない部分のストーリーとなると、綾の感情は想像するしかありません。一応、私の中での綾像はありますが、読者さんが思い描く綾像とは異なる可能性も低くない。撮影を通して監督と話し合いながら綾の言動や感情を手探りで把握していく作業はやはり簡単ではありません」
苦労を口にするが「ドラマと原作が違う展開になったとしても、原作の世界観を壊さなければ、ドラマオリジナルのストーリーとして楽しんでもらえると思います。そう感じてもらえるようなドラマを作っていきたいです」と語った。
◆性欲の話を“下ネタ”と思われる怖さは?
原作はラブコメ要素も多いが、それでは本作のメインテーマである女性の性欲が軽く捉えられかねない。その辺りに不安はないのか。
「女性の性欲がメインテーマですが、性行為が軸ではありません。あくまで『女性が性欲とどう向き合うのか』という部分に重点が置かれた作品と認識しています。綾が葛藤している様子、そこにどのようなことに対応していくのかを見せられれば、“下ネタ”と安易に結び付けられることはないはずです。
また、ポップなシーンとしっとりシーンを演じ分けることで、原作の笑える部分も見せつつ、女性の悩みに寄り添うことができるのかなと考えています」
ただ、そのためにも綾が“視聴者から共感される主人公”になる必要がある。俳優“足立梨花”と聞くと、他の作品で演じてきた嫌なキャラをイメージする人も珍しくないはず。足立さんは“みんなの綾”になるために「何かを参考にするのではなく、『綾としていたい』という気持ちを意識するようにしています」と回答。変に飾らずに演じることで、“綾”を表現できると語った。
◆女性も気軽に“性”を話せる社会になれば
足立さんは「綾が悩んでいる背景には、やはり女性が性の悩みを話せない空気感が大きいです。下ネタやエッチな話という感じではなく、女性が性に関する話題をもっと自然に話せる社会になれば」と本作への意気込みを話す。
「『別に性の話なんてしたくない』という人もいると思いますが、それでも悩んでいる人もいるため、『こういうことで悩んでいる人もいるよ』ということが伝えられると嬉しいです」
最後に本作の見どころとして「1話ごとに綾がどのように葛藤・成長していくかに注目してほしい」と答える。
「綾が自身の感情と向き合い、時には迷いながら進んでいく姿が描かれています。このドラマを見て、『こういう考え方もあるのか』という気づきを感じてもらい、『私もこんな気持ちになったことがある』と共感や安心感を覚えてもらいたいです」
“女性の性欲”は間違いなく扱いづらい題材である。どのようにドラマで表現されているのか注目だ。
<取材・文&人物写真/望月悠木>
【望月悠木】
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki