F1の元チーフテクニカルオフィサー(CTO)であるパット・シモンズが、正式にキャデラックでの職務を開始したことで、アメリカのマニュファクチャラーは2026年F1世界選手権への野心的な参入に向け大きく前進した。
シモンズは、F1にCTOとして在任中、F1の現在のグラウンドエフェクトレギュレーションと、2026年に迫った大きな刷新において重要な役割を果たしたが、『LinkedIn』で自身の新たな章の始まりを発表し、キャデラックのプロジェクトの規模と野心を垣間見せた。ルノーとウイリアムズでの輝かしい経歴を持つ、F1界のベテランである70歳のシモンズは、昨年にF1を離れた直後に、キャデラックのエグゼクティブエンジニアリングコンサルタントに任命された。シモンズは豊富な経験を活かして、キャデラックのF1プログラムを導くことになる。
「本日、キャデラックでの新しい役割に正式に就任する発表ができることをうれしく思う。我々は2026年のF1世界選手権に出場するチームを構築していく」と、シモンズは『LinkedIn』に書いた。
「これはエキサイティングな挑戦だ。2026年のプレシーズンテストが、(前回新しいパワーユニットが導入された)2014年のパターンに従うとすれば、マシンを走らせるまで400日も残っていない」
厳しいスケジュールではあるものの、ゼネラルモーターズの豊かなモータースポーツの伝統は、F1への取り組みにおける重要な資産だとシモンズは主張した。
「ゼネラルモーターズ(GM)には長いモータースポーツの伝統がある。私は少年のころ、シャパラル2Fがブランズハッチで開催された(1967年の)BOAC500で勝ったのを見たことを覚えている」
「シャパラルの立役者であるジム・ホールは、GMがあのプログラムに貢献したことを常に認めていた」
「最近では、彼らはシボレーとキャデラックのブランドを通じて、スポーツカーのレースでも競争力を発揮しているし、それに加えてインディカーのパワーユニットサプライヤーにもなっている」
「ル・マンからタラデガまで、スポーツカーからストックカーまで、彼らは勝ち方を知っている」
「それと同時に、モータースポーツの頂点として、彼らはF1に求められる革新性と卓越性、そして他のシリーズで享受してきた成功を再現すべくチームを構築するために必要とされることを、深く尊重している」
■“白紙”からの構築
キャデラックのF1事業は、シルバーストンの拠点で形づくられているところで、シモンズはゼロからのスタートに楽観的な見方を示した。
「F1マシンの製造は困難なことだが、十分に文書化された作業だ」とシモンズは認めた。
「タイムラインとゲートウェイは十分に確立されており、チームにはすでに長い間マシン設計と開発に携わってきた経験豊富な人材が多数揃っている」
「これと並行して、シルバーストンの拠点で我々の挑戦を支えるインフラを構築している」
「いわゆる『白紙の状態』から始めると、課題よりもはるかに多くのチャンスが生まる」
シモンズは、テクニカルディレクターのニック・チェスターや、COOのロブ・ホワイトなど、キャデラックの経験豊富な人材グループに加わっており、ホワイトとは、ベネトンおよびルノー時代からのエンストンでの歴史を共有している。
また、先月キャデラックは、マルシャおよびマノーでチーム代表を務めたグレアム・ロードンをチーム代表に任命した。キャデラックは、白紙の状態に経験豊富な人材、そしてGMの豊富なモータースポーツの実績を武器に、2026年のF1グリッドに加わるときには大きなインパクトを与える用意があるようだ。シモンズにとって、これはアメリカの強豪チームをモータースポーツの頂点に導くという、刺激的な挑戦の始まりだ。